海外移住、海外ビジネスを考える人 必見!日本人会の役割とその変遷

コロナ時代

パンデミックも収束に近づき、各国で国境の開放を進める動きがでてきました。
この2年間、海外在留邦人の数は減少し、令和3年で約134万人となり、令和元年の141万人から微減しています。(出所:外務省「海外在留邦人数調査統計」令和3年)
日本企業の海外進出の形態も変化し、日本人コミュニティも変化し、それに伴い日本人会の役割も転換期にあると感じられます。


海外移住、海外ビジネスを考える人 必見!日本人会の役割とその変遷

   著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon 
公開日:2022年4月22日

米国・中国を中心に

ここ数年の在留邦人数上位10か国はほぼ不動で、1位は米国の43万人、以下中国に11万人、オーストラリア9.5万人となっており、マレーシアは2.7万人で11位となっています。(令和3年調べ)(出所:外務省「国(地域)別在留邦人数推計上位50位推移」)
マレーシアには令和2年には3.1万人の在留邦人がいましたが、令和3年には12%の大幅減となっています。(出所:同上)
これは、マレーシアでのコロナの流行がちょうど年度末に重なり、厳格なロックダウンが行われる前と緩和時期に多くの邦人が帰国したためだと考えられています。
現在マレーシアの首都KL(クアラルンプール)には1.4万人が在留しています。

日本人会とは

日本人会は、長期在留する邦人のための交流会として、各国に設立されました。
会の目的は、親睦・交流・情報交換・共通の利益の擁護などで、その活動内容の範囲は様々。日本語の補習授業や、診療所の運営をしているところもあります。
私も会員であるマレーシアKLの日本人会は、1963年に「会員相互の親睦・互助と日馬の友好・親善に貢献する」という目的で設立され、現在(2021年12月末)会員数は、法人会員282社、個人会員1,364名(3,151名)、賛助会員264名(505名)、学生会員6名です。

日本人会の意義

設立当初は、駐在員やその家族を中心とする在留邦人が、一種の「保険」として日本人会を利用してきました。今ほどメディアが発達しておらず情報収集が困難で、不慣れな環境の中で生活に順応するにあたって障害が数多くありました。日本人会は困りごと解決の唯一の場で、邦人同士の重要な飲みニケーションの場を提供していました。
その後、インターネットなどの情報通信手段の発達と、それに伴うコミュニケーションツールの多様化や、交通手段の低価格化、現地社会との生活差の縮小などによって、日本人会のプレゼンスの低下が起こり始めたと思われます。

コミュニティの変容と会員の減少

かつては海外在留邦人社会の中心は大手日系大企業の駐在員とその家族でした。
その後、中小企業の駐在員、個人起業や現地採用者の増加、最近では母子留学など、在留邦人の性質や傾向に変化が見られることが,日本人会の会員数(特に個人会員)の減少の背景にあるものと考えられます。
最近は現地企業などで働き、日本人以外と結婚し家庭をつくる人が増えており、さらに日系企業の駐在員であっても「日本的経営」の変化、就労やライフスタイルをめぐる働く側の意識の変化等もあいまって、企業への帰属意識がかつてほど強いものでなくなってきています。
現地社会への溶け込み、コミュニケーションツールや仲間の多様化などもあり、日本人会とは異なる性質や機能を持ったコミュニティが誕生しています。

トランスナショナル化

人間の思考、交流、活動、イデオロギー、哲学等々がグローバリゼーションによって、広範囲で革命的に、急速に変化しています。特にインターネット中心の情報の越境の威力は凄まじく、今回のコロナによる「ビデオ会議」のような新しいツールも、日々、人的繋がりの「越境化」を加速させています。

帰属意識の変化

人々の帰属意識の対象は確実に変化していると思われます。
東日本大震災や今回のコロナのような大きな出来事があると、一旦は、身の回りや近しい範囲に帰属意識を強く感じるでしょう。
しかし、大きな流れからいえば、帰属意識にも多様化(とともに個人志向も)と越境化が進んでいくのではないかと思います。
その中で、日本人会や日本人コミュニティの役割は変化しつつも、今後も存続していくのだろうと思います。


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