マレーシア:クアラルンプールの渋滞激化
6月21日、クアラルンプール交通渋滞対策本部は、交通渋滞が問題となっている市内の中期的・長期的渋滞緩和策を発表しました。
KL市内の渋滞は、2021年8月に活動制限令(MCO)が緩和されて以降45%増加しており、経済活動の回復にも大きな影響を与えています。市民の不満も爆発しかけていて、この喫緊の課題への対策が求められていました。
今回の記事では、最近のクアラルンプールの渋滞状況と発表された渋滞緩和策、またKLの抱える交通事情について解説します。
マレーシア:クアラルンプールの渋滞激化
著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2022年7月23日
渋滞緩和策
マレーシアのクアラルンプール市役所(DBKL)は、交通渋滞緩和に向け、交通の流れの監視や研究を行う交通渋滞対策本部を設置したと、22日付のスター誌(マレーシアの新聞)が伝えました。 対策本部は警察と協力し、ラッシュアワーの主要道路の交通量の分散にも取り組む予定です。
発表された中期的対策としては、朝夕のラッシュ時の路肩の駐車を禁止し、主要道路の路上駐車についても段階的に禁止するとしています。
マレーシアは店舗などに独自の駐車場がないため、路上駐車や路肩駐車が一般的になっています。特に学校付近では、通園通学時には、1車線を残してすべて子供待ちの車で埋め尽くされ、危険なうえに大渋滞になっています。
また、ラッシュ時の路肩での露店販売が禁止されます。露店で買い物をする人のとめた車が交通の妨げになり、事故も多発しているためです。
現状では高速道路料金所ではタッチアンドゴー、スマートタグ、RFID(いずれも交通系ICカード)など、支払い方法別に専用レーンが設置されていますが、代わりに複数の支払い方法が利用可能な多目的レーンを設置し、さらにピーク時には時間帯により交通の方向を変更する制度の導入も考えられています。
長期的対策としては、公共交通の駅やバス停への接続性の改善です。現在運行している無料バスサービスの「ゴークアラルンプール」などの利用促進キャンペーンを行う、地下道、屋根付き歩道などの改装、バスレーン設置などの提案を行っています。
すでにクアラルンプールでは、大型商用車の朝夕の市内中心部への乗り入れ禁止を発表、適用していて、違反者は処罰の対象となっています。
KLの交通事情
マレーシアは車社会です。乗用車の総台数は、東南アジアではインドネシアに続いて2位、1,000人あたりの乗用車の数は東南アジアの中では群を抜いて多いです。そのため、渋滞は大きな社会課題となっており、特に朝と夕方の通勤時間帯のクアラルンプール中心地の渋滞が年々ひどくなっています。
首都クアラルンプールの交通渋滞は経済成長の阻害要因にもなっており、世界銀行の調査によると、2015年の時点で年間の損失額が200億リンギット(約6,140億円)に達したそうです。また、2014年の首都の渋滞コストが貨物の遅配のみで国内総生産(GDP)の1.0~1.8%に相当したと指摘しており、これに混雑中の燃料消費や大気汚染による経済的損失などを含めた同国の総合的な渋滞コストはGDPの1.1~2.2%にも達すると報告されています。
複合的な対策で
隣国シンガポールと違って公共交通機関の設置が遅かったマレーシアは、公共交通機関同士の接続が悪く渋滞の解消には繋がっていません。現在新線の建設を急ピッチで進めていますが、渋滞解消へは程遠い印象です。
ただ、配車サービスのGrabが社会のインフラとして完全に浸透しました。
将来的にはGrabと電車、バスなどあらゆるモビリティを上手く組み合わせることによって、より効率的な移動が実現されていくのではないかと期待しています。