マレーシア「新QR入国」試験運用

マレーシア

マレーシアは9月22日から、ジョホール州の陸路の国境(コーズウェイ、セカンドリンク)でQRコードによる入出国システムの試験運用を開始しました。専用アプリ「MyNIISe」で事前登録し、生成されたQRを提示すれば、パスポート情報の手入力が不要になります。

このニュースについて深掘りします。

(引用元:Singaporeans can use QR code to clear immigration at Johor land checkpoints from Sept 22 | The Straits Times
https://www.straitstimes.com/asia/se-asia/singaporeans-can-use-qr-code-to-clear-immigration-at-jb-checkpoints-from-sept-22

マレーシア「新QR入国」試験運用 

   著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2026年02月12日

背景と経緯

この実用試験は2026年2月28日まで実施され、その後はクアラルンプール国際空港(ターミナル1・2)、ペナン、クチン、コタキナバルなど主要空港へ段階的に拡大する予定です。

背景にあるのは、マレーシア内務省が現在進めている「国家統合移民システムNIISe(National Integrated Immigration System)」。老朽化した既存システムの刷新と国境管理の効率化を目的に開発されました。シンガポール側ではすでにMyICAアプリを通じたQR入出国が広く普及しており、マレーシアもこれに追随するかたちで導入を前倒しした形です。

今回の試験運用の中身

利用者はアプリで個人またはグループQRを生成できます。例えば家族旅行でひとりが代表登録すれば、同行者分もまとめて管理可能です。対象はマレーシア人に加え、シンガポール・日本を含む63カ国・地域です。

ただし、パスポートの携行は依然必須で、QRだけで国境を越えられるわけではありません。従来のレーンも残され、アプリに不慣れな高齢者や観光客への配慮が示されています。

経済・社会へのインパクト(マレーシア側)

「混雑緩和」
ジョホールの国境は1日30万人以上が往来します。入力や確認作業の省略はピーク時の渋滞解消に直結するでしょう。

「観光と消費の活性化」
週末にシンガポール人がジョホールバルへ流れ込む”越境消費”はすでにジョホール州にとって大きな経済要素になっています。QR入国が普及すれば、ショッピングモールや飲食店、ホテル業界がさらに潤う可能性があります。

「物流・ビジネスの効率化」
通勤者や商用車両の国境通過がスムーズになれば、シンガポール企業との往来や工業団地へのアクセス改善に寄与します。

シンガポール側の影響

シンガポールでは毎朝の越境通勤ラッシュが深刻な課題になっています。マレーシア側の手続き短縮は通勤者の負担軽減につながり、シンガポールの人材不足補完にも間接効果をもたらすでしょう。また、週末のジョホールバル観光が加速すれば、為替差益を活かした越境消費がさらに増えることになるでしょう。

リスクと課題

高齢者や短期旅行者はアプリ登録でつまずく可能性があり、現場サポートが不可欠でしょう。また、もしQRシステムがダウンすれば国境全体が混乱する恐れもあります。旅券提示への切り替え手順を明確化する必要があります。さらに、生体情報や行動履歴をどこまで活用するのか、データ管理の透明性の確保も必須です。越境者の信頼を得るには丁寧な説明が欠かせません。

目に見えた摩擦の解消

試験運用で得たデータや課題をもとに順次空港へ展開される予定で、クアラルンプール国際空港や地方空港でも導入されれば、トランジット観光や地方都市訪問がよりスムーズになるでしょう。

私自身、ジョホールバル—シンガポール間を何度も往復してきました。早朝5時に国境を越えようとすれば、5分の遅れが会議開始に影響するほどタイトな時間管理を迫られます。列の中で、係員が一人ひとりのパスポート情報を打ち込む様子を見ながら、「この作業が自動化されれば…」と何度思ったことでしょう。

今回のQR導入は、まさにその“目に見える摩擦”を取り除く試みです。

ただ、真の成功は単にシステムを導入することではなく、現場での周知徹底・利用者教育・障害時対応の柔軟さにかかっていると強く感じます。

QR入国は、マレーシアとシンガポールを結ぶ生活インフラの再設計といえます。短期的には混雑緩和と経済効果、長期的にはデータ活用による安全・効率的な国境管理が期待されます。

Malay Dragon

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マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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