シンガポールが見せる高齢化対策の鍵:シニア人材活用がもたらす成功事例

シンガポール

裕福な都市国家であるシンガポールは、急速に高齢化が進み、2030年には約90万人、人口の4人に1人が65歳以上になると予測されています。

また、2021年の出生率は1.12と日本の1.30よりも低く、日本よりも早いスピードで高齢化が進行しています。

以前の記事でシンガポールの少子高齢化については紹介しましたが、今回の記事では、急速に高齢化が進んでいるシンガポールのシニア人材の活用術について解説します。

シンガポールが見せる高齢化対策の鍵:シニア人材活用がもたらす成功事例

   著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon 
公開日:2023年6月23日

目立つシニアの姿

先日、国際食品展示会に行き、その様子についてはこの記事ですでに紹介しました。展示会での最大の気づきは、掃除や整備の人だけではなく、インフォメーションカウンターや展示会入場の受付、ホールの案内、また各ブースの説明員(出展企業の社員ではなく臨時の雇員)に至るまで、ほとんどがシニアだったことです。

以前私が出展した時、その後の展示会でもシニアの方は若干はいましたが、補助的な作業の方がほとんどでした。  

スーパーやマックのスタッフも

シンガポールで最も店舗数が多い地元のスーパー「NTUCフェアプライス」に入ると、多くのシニアの店員の姿に気がつきます。

NTUC300店舗で働いている約1万人の半数が50歳以上で、60歳以上のスタッフも2割を越えているそうです。 

マクドナルドでも、130店舗を超える国内の店舗で働く約9000人のスタッフうち、約35%が50歳以上だといいます。

シニア人材の活用がかなり進んでいることを実感できました。

日本が教訓

リー首相は、以前「日本では高齢者に対する福祉が社会の負担になっており、若者が不満を抱いている」と自身のフェイスブックで紹介し、「これは教訓だ。日本のような事態にならないようにしなければならない」と国民に語りかけました。

そして、元気な高齢者を「楽齢(アクティブ・エイジャー)」、60歳を「NEW40(新しい40歳)」と名付け、就労だけでなく社会への貢献も奨励しています。

「高齢者は負担ではなく財産になり得て、高齢化の波は『シルバー・ツナミ』などではなく『シルバーの恩恵』であるととらえるべき」を基本コンセプトとし高齢者の就労を進めました。65歳以上の就労率は2006年には14%だったのが、2016年には27%と倍増し、22%の日本を追い抜きました。

「Age Well(エイジウェル)」

シンガポールでは昨今、「Age Well:健康に歳を重ねるという生き方」を実現することが注目され、様々なプロジェクトやコミュニティ作りが進んでいます。

私の義理の姉が住むHDB(政府によって建てられた集合住宅)でも、1階の部分は骨組みの柱がむき出しになっています。そこにさまざまな高齢者向けの健康維持メニューや器具を設置したり、集会を開いたり、保育園を設置したりして、国民が目標を失わないよう細やかなサポートをしています。

寛容な社会

シンガポールは、さまざまな人種、宗教、文化、習慣、考え方でも受け入れようとする慣習や環境があり、元気なシニア世代に対しても非常に肯定的だと感じました。

日本でのシニア世代の活用には、人が良すぎるほど善良で寛容な日本社会を自信をもって蘇らせることが重要だと思います。

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