マレーシア 2028年にも高所得国入りか

世界銀行のトップエコノミストは先日、早ければ2028年にもマレーシアが高所得国入りする可能性があると発表しました。
2020年代の後半の高所得国入りが予測されていましたが、少し早まりそうです。
今回の記事では、マレーシアが高所得国になることの意味や影響などについて解説します。

マレーシア 2028年にも高所得国入りか
著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2025年1月30日
2024年の成長率も予測を上回る

世界銀行のマレーシアの主任エコノミストによると、世界銀行はマレーシアの2024年の成長率の予測を、半年前の予測の4.3%から4.9%に引き上げました。
成長率を上方修正した理由としては、マレーシア経済の好調な勢い、政治的安定の高まり、そして投資を促進する政策環境をあげていてこれらが継続されそうなこと、そして国民1人当たりGDP成長率がコロナ禍以前より12%も高く、ASEAN諸国の多くを上回っていることも取り上げ、成長見通しの上方修正が行われたと述べました。
リンギット高も影響
またエコノミストは、為替相場を1ドルが4.54リンギットと想定すると、マレーシアは2028年には高所得国入りを果たすと述べ、リンギットが現在の水準で推移すれば目標は1年早く達成される可能性があるとも加えています。
直接投資は好調も…
主席エコノミストは、マレーシアでは2024年の第2四半期の外国の直接投資額が、サービス部門を中心に昨年の同時期と比べて増加しているとも述べました。
しかし経済協力開発機構(OECD)の作成した指標によると、マレーシアは直接投資の規制が他のアジア諸国と比べるといまだに厳しいことを付け加えました。
最も規制が緩い製造業での規制はほぼゼロですが、流通、電力、金融サービスなどの上流セクター部門では依然として規制が厳しい現状を説明し、これらの上流セクターでの規制を緩和することで、下流セクターの生産性を高めることができると指摘しています。
多大な影響が予想される
政治的安定の向上や、投資を促進する政策環境が経済成長の大きな推進力となっていて、IT部門を中心に外国からの直接投資が活発化しています。
マレーシアが高所得国に移行することで、経済、社会、そして国際的な地位に多大な影響を与えることが予想されます。以下に具体的な影響を挙げます。
1、経済成長の持続と多角化
高所得国入りはマレーシアの経済にとって大きな転換点となるでしょう。これにより国内消費が拡大し、特に中間層の購買力が増加するため、経済成長はさらなる加速が期待されます。
高所得国となることで、製造業からより付加価値の高い技術産業やサービス産業への移行が加速し、インフラ整備や産業の多様化を促進して、経済の安定性を高め、外部ショックに対する耐性を強化するでしょう。
2、国際的競争力の向上
高所得国になることで、マレーシアは国際的な投資先としてさらに魅力的になります。
技術産業や金融サービス分野での国際的な競争力がさらに向上し、外国企業がマレーシアに拠点を置く動きが加速するでしょう。また、国内企業も国際市場での競争力を高め、より多くの輸出を促進できる環境が整います。
さらに教育水準の向上により、高度な人材が育成されてイノベーションの推進力が増していきます。アジアの技術拠点としての役割を強化し、シンガポールと並ぶ国際的なビジネスハブとなる可能性があります。
社会的課題への対応が必要
一方で、高所得国となることで新たな社会的課題も浮上してきます。
例えば、急速な都市化に伴う生活コストの上昇や、民族間や地域間での富の不均衡が拡大することが懸念されます。
これに対処するためには、政府が福祉政策や住宅政策を充実させ、社会的な公平性を向上させる必要があります。