日本人の海外移住トレンド変化|マレーシアからタイへのシフトとその背景
外務省の最新統計によると、マレーシア在住の日本人が1万人以上減少し、2万657人となりました。この顕著な減少傾向の背景には、円安の進行、コロナ禍の影響、そしてマレーシアの生活コスト上昇など、複合的な要因があります。日本人コミュニティの縮小は、現地でのビジネス環境にも大きな影響を与えています。
本コラムでは、この傾向がもたらす課題と機会、そして企業が取るべき新たな戦略について探ります。
円安とコロナ禍の影響:マレーシアにおける日本人コミュニティの変化と対策
著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2024年7月18日
世界的に減少傾向
外務省の調査統計によると、海外在住の日本人は2023年10月1日時点で129万3565人となり、前年から1.1%、1万4950人減少したことがわかりました。
この内訳は、長期滞在者が4.3%減の71万8838人で、永住者は逆に3.2%増えて57万4727人でした。
マレーシアは顕著な減少
マレーシアは在住者の数では世界で13位の2万657人でしたが、前回の2021年の調査の3万973人から1万人以上減っていることが明らかになりました。
私の身近なところでもコロナ禍でかなりの方が帰国しました。どちらかというとこの1年余りの間に、駐在の方やMM2H(長期滞在ビザ)の方の多くが本帰国しました。
当然、クアラルンプールにいる多くの日本人が所属する「日本人会」も会員数が減少気味で、活発に活動されていたクラブも休止するものが増えています。
海外滞在者数が減少の原因
日本国内の経済状況がこの数年で大きく変化しており、特に最近では猛烈な円安が進行しています。円安によって現地の通貨に対する日本円の価値が下がり、日本からの送金の価値が減少しているため、駐在者の生活が苦しくなっています。長期滞在の方も、貯金や資産の価値が響いて経済的な負担が増加していると推測されます。
新型コロナウイルスのパンデミックが世界全体に影響を及ぼし、各国の入国規制が厳しくなりました。加えて衛生のリスクや健康リスクを懸念して、多くの人が帰国を余儀なくされました。多くの国ではパンデミック後の経済回復や社会の安定がまだ完全には達成されておらず、日本人が帰国を選択する要因となっています。
マレーシア滞在者減少の理由
マレーシアではこの数年で生活コストが急上昇しています。
特にクアラルンプールなどの都市部では物価の上昇が顕著で、不動産の価格も高価格化していることもあわせ、移住先としての魅力が薄れている可能性があります。
また、コロナ禍でも顕著に現れた医療や教育などのインフラ面での不安も影響していると考えられます。
特に子どもを持つ家庭にとっては教育の質やレベル、医療サービスの充実度は何よりも重要で、これらの面での不安や不満が、日本へ帰国する動機になっています。
日本からのアクセスがより簡単で日本人コミュニティもある程度発展していて、物価の上昇はそれほどではない、タイへの移住が増えている可能性も考えられます。
生活環境やインフラが整っていて物価面での影響がそれほどではない国は、日本人にとって魅力的な移住先となっているようです。
日本の人口減も影響
さまざまな要因が複合的に作用して、マレーシア在住の日本人の数が減少していると考えられます。
人口減少というマクロ的な問題から、経済や社会・政治的な不安、さらには生活環境の変化に至るまでは、今後も同じような動向が続く可能性があり、日本人の移住先の選択に関してもさらなる変化が予想されます。