マレーシアとシンガポール、クアラルンプール=シンガポール間の高速鉄道(HSR)計画を撤回

シンガポール

マレーシアとシンガポールは、2021年1月1日、クアラルンプール=シンガポール間の高速鉄道(HSR)計画の撤回を発表した。HSRは、クアラルンプールとシンガポールの350キロを90分で結ぶことになる高速鉄道で、これまで鉄道では11時間かかっていた道のりが大幅に短縮される計画であった。

マレーシアとシンガポール、クアラルンプール=シンガポール間の高速鉄道(HSR)計画を撤回

著者:gram 福田 さやか 
公開日:2021年1月15日

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両国政府はHSR建設について2016年12月に合意していたが、2018年5月にマレーシアで政権交代が起こり、前政権下での多額の債務が発覚、建設計画の履行を2020年5月末まで延期していた。その後、マレーシアの申し出により、計画履行が2020年12月末まで再延期されていたものが、期限を迎えても再検討事項の合意に至らず、撤回されたものである。

都市国家であるシンガポールは言うに待たず、マレーシアもさほど人口は多くない。シンガポールの600万都市と広域クアラルンプールの800万都市が90分で接続されれば、両国にとって経済的恩恵が相当程度あっただろう。しかし、新型コロナ流行でロックダウンを繰り返し行っており、経済に相当の打撃が与えられているマレーシアでは、建設に資金を割くことが難しくなったようである。

双方が2013年に建設に合意した350kmの鉄道路線では、クアラルンプール中心部のバンダール・マレーシアからシンガポールのジュロン・イーストまで走る予定で、7つの駅ができる予定であった。工事計画にはイスカンダル・プテリ、ムアル、バツパハト、セレンバンなどの小都市の鉄道駅も含まれていたが、これらの都市で商業生活を再編成することを計画した都市開発計画があり、特に駅やその周辺に商業施設や住宅が建つような小さな都市では、中心市街地の活性化につながるとの期待があった。また、これらの都市の住民は、HSRによって自宅やクアラルンプールやシンガポールからの日帰り旅行が可能になるはずであった。
このように、都市計画そのものにも影響を与えた今回の決定だが、シンガポールでは新しい街の建設計画はストップしないようである。

シンガポール政府による終着駅の予定地であったジュロン地域の開発計画は、HSR プロジェクトの南側の終着点であるジュロン地域がもはや存在しないにもかかわらず、前に進む可能性が高いようである。2021年1月4日の議会で、シンガポールの Ong Ye Kung 運輸大臣は、HSR プロジェクトの終了は、ジュロン湖水地方の全体的な計画に影響を与えないと述べたと報道されている。同大臣は、シンガポール政府は早くも2008年にジュロン市を改造する計画を開始しており、マレーシアがHSRプロジェクトを提案する前から計画が練られていたと説明した。

シンガポールの投資が旺盛なのはよいことであるが、コロナの経済に与える影響は計り知れないと考えさせられた新年早々のニュースであった。

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福田 さやか

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