価格転嫁の限界、マレーシアの外食業界が直面する厳しい現実
マレーシアの飲食店が、物価高騰と人手不足への対策として営業時間の短縮を余儀なくされている実態が報じられました。売上減少に直面する中、家賃や原材料費などの固定費は調整しづらく、コストを価格に転嫁せざるを得ない厳しい状況です。一方で専門家は、深夜の過剰な外食を控えることで国民の健康改善や生産性向上につながる可能性も指摘しています。
観光地では例外もありますが、雇用法改正による外国人労働者規制の影響もあり、総じて営業時間の大幅な見直しを迫られているようです。この動きは、マレーシア外食業界の構造改革の深刻な課題を浮き彫りにしています。
外食業の構造改革、マレーシアの営業時間見直しが示す課題
著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2024年5月29日
売上の減少に直面
マレーシアのレストラン・ビストロオーナー協会の副会長・リム氏は、「多くの飲食店が売上の減少に直面している」と取材に答えています。
そして同氏は、一部のレストランや飲食店では、コスト管理のために営業時間を短縮することでこの課題に対応せざるを得ないのが現状である、と述べています。
支出の削減
売上が減少している理由としては、コロナ時のロックダウンやMCO(移動制限)以降、人々の行動様式が変化し、夜間の外出に消極的になったことがあげられます。
また、ウクライナ戦争などにより全体的に物価が上昇したことで、消費者の生活は圧迫されており、外食が贅沢になり、多くの人が外出などの支出を削減するようになっているからです。
そこで、店を深夜まで、あるいは24時間営業し続けるのは非経済的であると、多くの飲食業関係者は述べています。
労働時間規制の見直し
マレーシアでは雇用法が改正され、2023年1月1日より施行されています。
おもな改正点は、週の労働時間の上限が48時間から45時間に短縮されたことです。
改正前には、当局が要請した場合、店舗は外国人労働者の採用に関する情報を提供する必要がありました。改正後は、外国人労働者を採用する場合は当局の承認が必要となりました。
多くの飲食店ではスタッフのほとんどが外国人労働者で、ビザなしというケースも多かったため、労働者不足に直面しています。
コストを消費者に転嫁
飲食店の経営者の多くは、家賃や原材料などの固定費に関しては調整する余地がないため、まずは人員削減を検討せざるを得ないと述べています。
リム氏はさらに「原材料や光熱費の価格が上昇し続ける中で、労働力の減少や費用が高騰しているため、飲食店は、消費者にこれらのコストを転嫁する必要が生じている。最終的には、消費者が、値上げした価格を支払うことができなくなり、さらに売上が減少してしまう事態に陥る可能性がある」と危惧しています。
観光客の増加で24時間営業に
記事では、営業時間の短縮する飲食店が増加している一方で、コロナ禍が終息し観光客が増加していることで、観光地では営業時間を伸ばしたり、24時間営業に戻したりする飲食店も増えていると伝えています。
ただ、コストの増大や人手不足の影響は、観光地にある飲食店にとっても決して小さくない、と伝えています。
寿命を延ばすことに貢献する可能性
以前この記事でも紹介しましたが、マレーシアは肥満の人の割合が非常に高く、これが原因の疾病が社会の大きな課題になっています。
医学の専門家も、飲食店が営業時間を短縮することで国民の深夜食を減らすことができ、より健康的な食習慣が促進されマレーシアの肥満問題を解決する可能性がある、と述べています。
生産性が向上
過食につながり、健康を害する危険性の高い深夜食を減らすことで、適切な消化を可能にして睡眠の質の低下を最小限に抑えることができます。
専門家は、夜間や深夜に個人的な時間が増えることで、生活の充実が図られ、それが生産性の向上や、競争力の向上につながる可能性があるとも述べていて、レストランの早期閉店を支持しています。