マレーシアの教育事情 | 民族語学校に注目が集まる理由

マレーシア

マレーシアでは3月11日から公立学校の新学年が始まりました。

この記事でも紹介しましたが、マレーシアの新学期は例年は1月1日から始まります。

しかし、コロナ禍のロックダウンで学校も休校になった影響で、新学期の始まりがこの数年ずれていて、3月の新学期スタートとなっています。

今回の記事では、最近マレーシアでは民族語学校という公立の小学校に入学する生徒が増えているという話題を中心に、マレーシアの学校制度についてお伝えします。

マレーシアの教育事情 | 民族語学校に注目が集まる理由 

   著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2024年4月18日

異例の3月新学期

マレーシアではコロナ禍のスタート期に、全国的に厳しいロックダウン措置が長期間に渡って行われ、その期間は学校も休校を余儀なくされました。

すぐにオンラインでの授業が再開されましたが、このときのずれが現在も続いていて、例年通りの1月1日スタートに戻るのは2年後となっています。

ラマダンのスタートと重なる

2024年はイスラム教の最も重要な月である「ラマダン」のスタートが3月12日であったため、全国的に学校周辺では大変な渋滞が発生し、国民に注意も呼びかけられていました。

我が家があるコンドミニアムでも、通常は早朝6時頃にスクールバスのお迎えが来ていましたが、30分ほど早目に来ていました。

義務教育

2015年までは義務教育は公立小学校の6年間のみでしたが、その後は5年間の中等学校(日本の中学校3年間と高校の2年間に当たる)までが義務化されました。義務教育期間は11年間となり、小学校の就学率はほぼ100%です。

多民族国家のマレーシアでは、政府系の公立小学校はマレー系小学校、中国系小学校、インド系小学校の3種類があり、それぞれの民族母語で教えています。しかし、いずれの学校でもマレー語は必修となっています。 ​

中国系小学校入学生徒が増加

中国系小学校ではマレー系の生徒の増加が顕著となっていると、地元メディアは伝えています。

教育省の調査によると、中国系小学校では2010年には9.5%だったマレー系の生徒の割合が、2020年には15.3%まで上昇しています。過疎化が進む地方ではこの傾向が特に顕著になっています。

学校にインフラ格差

マレー系以外、特に中国系の民族語の公立学校への入学を希望する家庭が増えている理由は、学校のインフラの格差です。

民族語の公立学校は民族の結束力が強く、相互援助の考え方も強いため、コミュニティーの組織力が強い傾向にあります。

特に中国系はの場合はその傾向が強く、教育に非常に熱心で、後進のサポートにも力を入れます。そのため、卒業生や地域企業からの寄付金が多額に集まりやすいようです。資金力が豊富にあるため、最新のデジタル機器がそろっていたり、エアコンが完備されたホールなどの設備が整っています。

政府からの補助が少ない分、これらの寄付金などでマレー系の公立学校を上回る資金力を有し、教育設備の充実に力を注いでいるのです。

団結の基盤である

民族語学校に関しては以前から民族分断の種になるとの議論がありましたが、マレーシアの連邦裁判所は、2024年の2月、マレー系非政府組織による民族語学校の存続に関する異議の申し立てに対して、中国語、あるいはタミル語の学校の存在は合憲である、との判断を下しています。

これを受け、教育相や国家統一相も「民族学校は分裂の要因にはならず、むしろ団結の基盤になっている」との見解を表明し、政府も1996年に施行された教育法に従い、民族語学校の存続を支持することを表明しました。

多言語教育をもたらしている民族語学校は、多文化教育を可能にし、マレーシアの競争力の源泉であり続ける「多文化性」を守り続けていくことでしょう。

Malay Dragon

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マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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