ASEAN諸国でNo.1の海外送金|フィリピンOFWの驚くべき影響力
OFWとはOverseas Filipino Workerの略語で、海外フィリピン人労働者のことを指しています。フィリピンのOFWの総数は人口の約10%(1,130万人)にも達すると言われており、またフィリピン人の人口の約17%(1921万人)つまり10人に2人は海外での生活を希望しているというデータがあります。
そこで今回はこのOFWがフィリピン社会にもたらす影響力を実際に数字やデータに基づきご紹介していきます。
ASEAN諸国でNo.1の海外送金、フィリピンOFWとは
著者:フィリピンgramフェロー アルト
公開日:2023年 11月2日
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OFWの総送金流入額・GDP率
世界の総送金流入額は2022年度データによると1位インド・2位メキシコ・3位中国・4位フィリピンとASEAN諸国の中でも唯一TOP5入りをしております。総額380億米ドル(約5兆6,871億円)と昨年比+34億米ドル(5,089億円)と上位10ヶ国の中でも5番目に高い成長率を維持しています。IMF(INTERNATIONAL MONETARY FUND)によると、2022年度フィリピンGDP(国内総生産)は4356億米ドル(65兆1369億円)と推移されているため、フィリピンGDPの約8.7%が「OFWによる送金」によって成り立っていると算出できます。
フィリピンの人口規模は世界13位とそこまで高くないですが、国民の海外への出稼ぎ意識が高いことからこのような驚愕の数値データを叩き出しています。
またASEAN全体における直近の総送金流入額は(+3.8%)とフィリピンの総送金流入額(+3.4%)より高い水準にありますが、2番目に大きな送金資金を持つベトナムでは2022年度総送金流入額は総額130億米ドル(1兆9,466億円)と11位にとどまり、フィリピンとの差は驚異の250億(3兆7,436億円)となっております。
順位 | 国名 | 総額 |
4位 | フィリピン | 380億米ドル(約5兆6,871億円) |
11位 | ベトナム | 130億米ドル(1兆9,466億円) |
ASEANの総送金流入額において、フィリピンは2位以下を圧倒的に突き放す状態となっており、今後もこの数値の推移は他国に大きく差をつけると言われています。
(参照:Statista https://www.statista.com/chart/20166/top-10-remittance-receiving-countries/)
(参照:IMF https://www.imf.org/external/datamapper/profile/PHL)
OFWの出稼ぎ先
初期費用を削減できる中東へ出稼ぎするOFWは全体の50%に上ります。中でもサウジアラビアへの出稼ぎが最も多く、労働者数は2022年7月時点でも439,200人となっており、アラブ首長国連邦・クウェート・カタールも同数程度出稼ぎしていると言われています。初期費用を賄えるOFWはヨーロッパやオーストラリアなどで高賃金の職に従事しており、2022年調べでは167,400人が英国に在住、39,600人がオーストラリアに在住していると言われ、全体の8%~10%の推定とされています。
(参照:Great Ways https://greatwaysmanpower.com/ofw-news/ofw-news-and-updates/countries-with-most-of-ofws/)
OFWの将来性
マニラ首都圏(CNNフィリピン)-移民労働者省(DMW)は2023年のOFW派遣数が2022年に記録した120万人を超えると予測しており、コロナ後のOFWの需要は年々、数十万人単位で増加していくと推測されています。また新規雇用・再雇用の両方でOFWの数が増加しており、今後はサウジアラビアやクロアチアの医療・建設・ホテル・レストランの経営、またUAEやカナダなど他の国々での専門医療に対する需要や、ハンガリーやオマーンなどのようにフィリピンとの二国間労働協定に署名する意向を表明している国も増えるとして、更なるOFWの人材派遣に注目が集まります。
(参照:CNN Philippines http://www.cnnphilippines.com/news/2023/6/16/DMW-OFW-deployment-2023.html)
まとめ
OFWによる送金はフィリピン経済成長の重要な柱です。また技術移転や社会・文化交流などの国際社会への「競争力」や「機会の創出」を生み出す重要なファクトでもあります。
今後もその重要性は高まっていくと考えられ、政府や民間企業が連携してOFWが活躍できる環境を整備し、フィリピンの経済発展に更なる追い風を吹かすことでしょう。