シンガポール カジノのにぎわいが戻る
シンガポールには2つの統合型リゾート(IR)がありますが、そのひとつである「マリーナベイ・サンズ」を運営する米国のラスベガス・サンズが、2023年第4四半期(9~12月)の純売上高が10億6,100万ドル(約1,670億円)で、前年同期比で55.6%増加したことを発表しました。
コロナ禍からも順調に回復し、ふたたびシンガポール観光の目玉として、カジノは輝きを取り戻しています。
今回は、シンガポールのカジノ産業について解説します。
シンガポール カジノのにぎわいが戻る
著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon
公開日:2024年 9月27日
- シンガポールを拠点とするリゾートホテルグループ 日本初進出
- 月餅をお供えして神に感謝する「中秋節」 |中国
- シンガポール 「超熟練」家事労働者の賃金が増加
- 新鉄道開通で2300億円損失?シンガポール小売業界の危機と対策
新棟建設の計画
「マリーナベイ・サンズ」は、隣接する土地に新たな棟を建設する計画を発表し、シンガポール都市再開発庁(URA)もこのほど承認しました。
「マリーナベイ・サンズ」が新しく建設する棟は、客室数587室のホテルと小売りスペースなどが含まれています。工事の完成は2028年の4月です。
「マリーナベイ・サンズ」は、2023年第4四半期のホテルの客室稼働率が94.4%に達していて、カジノの売上高も7億4,100万米ドル(約1,166億円)、前年同期で84.3%の大幅増と好調でした。
これは中国や周辺国からの観光客数が回復したことで観光支出も拡大しているからと指摘されています。
独占保証
実はシンガポールのカジノの運営は、「マリーナベイ・サンズ」と「リゾート・ワールド・セントーサ」の2つのIRとの独占契約になっていて、その独占保証期間は2030年末まで延長されています。その保証期間延長の条件として、拡張工事が課されて、今回発表された新棟の建設が計画されています。
シンガポールのカジノが成功した要因
シンガポールは2005年にカジノの合法化を決定し、2つのIRが2010年にオープンしていますが、シンガポールのカジノ産業が大成功した要因や、その戦略について説明します。
① 戦略的立地
シンガポールはアジアや東西のハブとして、古くから重要な役割を果たしており、中国やインド、インドネシアなどの人口の多い大市場にも近接していて抜群の立地です。
② インフラ投資
チャンギ国際空港やMRT(高速交通システム)など、ワールドクラスのインフラが整っていて、観光客のアクセスが容易です。
③ 観光戦略
他国にあるような観光資源には恵まれていませんが、ショッピングモールやテーマパーク、「ユニバーサル・スタジオ」などのさまざまなエンターテインメント施設などがそろっていて、家族連れで楽しめるさまざまな観光シーンを提供しています。
また、F1シンガポール・グランプリや国際展示会や会議など国際的なイベントを定期的に開催し、参加する方だけではなく観光客も引き付けています。
④ 厳格な規制
街を美しく規律あるように維持するために、非常に厳しい規則やルールを課しています。
カジノに関しても、シンガポール国民には100シンガポールドルの入場料を課して、心配されたギャンブル依存症を防ぐための措置が取られています。
⑤ 高い経済への貢献度
2つのIRは2010年のオープン以来、年間で数十億ドルの収益を上げていて、コロナ前の2019年には、カジノ産業の総収益は約45億シンガポールドル(約5,230億円)に達しています。また、数千人規模の雇用も生み出し、観光や飲食、小売などの関連産業にも大きな波及効果をもたらしています。
バランスの取れた戦略
シンガポールのカジノ産業の大成功は、戦略的な立地に豊富な観光アトラクションを配して、厳格な規制に基づいた『バランスの取れた戦略』によるものです。観光とエンターテインメントの一大拠点としての地位を確立する上で、重要な役割を果たしています。