「デジタルツイン(Digital Twin)」先進国  シンガポール 

シンガポール

前回の記事で、シンガポールが世界デジタル競争力ランキングでトップになったことを紹介しました。

シンガポールのデジタルリテラシーの高さを伝えるために、今回はシンガポールの「デジタルツイン」構想について詳しく解説します。

「デジタルツイン(Digital Twin)」先進国  シンガポール  

   著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon 
公開日:2025年 4月11日

デジタルツイン(Digital Twin)」とは?

デジタルツインとは、デジタル空間に物理的な世界を再現し、現実のデータを基にして現実世界でのシミュレーションや予測をリアルタイムで可能にする技術です。

スマートシティの実現やインフラ管理などの分野で幅広く利用されていて、世界的に注目されています。

デジタルツインはデジタル空間におけるシミュレーションとは大きく異なり、デジタル空間上に現実世界と連動した環境を再現することで、現実のデータを使って即時に将来予測を行うことを可能にし、リアルタイム性がより高いものとなっています。

「バーチャル・シンガポール」

シンガポールは世界で初めて国全体をデジタルツイン化することに成功しました。

この取り組みは「バーチャル・シンガポール」として知られています。シンガポール全域の詳細な3Dモデルを構築することで包括的な都市管理を行い、都市計画や管理、さらには市民生活の向上に寄与しています。

シンガポールは、都市全体をデジタル空間に再現する「デジタルツイン」技術の先駆者として注目されています。

多目的に活用

「バーチャル・シンガポール」は、都市計画や交通管理、環境モニタリング、さらには防災対策など、幅広い分野での応用・活用が進められています。例えば、建物の高さや屋根の素材によって温度や日射量がどのように異なってくるかなど、詳細なデータを活用してエネルギー効率の最適化や環境負荷の低減に取り組んでいます。

高度なデータを統合することで変化や動向をリアルタイムで把握できる体制が整っており、現実世界において高い精度で再現しているのです。

シンガポールがデジタルツインを実現できた要因

シンガポールが世界の大国に先駆けて、この先進的な取り組みを実現した背景には、以下の要因があります。

①政府の強力なリーダーシップ:
シンガポール政府は2014年にはすでに「スマートネイション」構想を打ち出し、国家全体のデジタル化を推進してきています。 この明確なビジョンと政策が、デジタルツインの実現を強力に後押ししています。

②先進的な技術基盤:
シンガポールには先進的な技術を持った企業が集積しており、高度なインフラやデータ収集技術の整備により、精密な「デジタルツイン」の構築が可能となりました。

③官民の連携:
政府と民間企業、大学などの研究機関が密接に協力することで、技術開発や実験・整備を進めています。

これらいくつかの要因が相まって、シンガポールはデジタルツイン技術の分野で世界をリードする存在となっています。

そしてこの取り組みは、他国のスマートシティ構想におけるモデルケースとして注目されています。

デジタルツインの可能性

デジタルツインは、現実世界のデータを基にリアルタイムでの意思決定を支援します。

例えば、異常な交通パターンを早期発見することで、即座に対応策をとることができます。

また、環境負荷の低減やエネルギー効率の向上に貢献することで、建物や都市の設計段階から持続可能性の高い方法を提示することも可能にしています。

シンガポールは面積が小さく人口密度が高いため、データ収集とモデル構築が比較的容易で、しかも効率的に実施が可能です。また、都市国家としての課題解決への意欲も強いものがあります。

シンガポールの「デジタルツイン」は、都市管理や国際協力において重要な役割を果たす技術となる可能性を秘めています。

Malay Dragon

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マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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