シンガポール資本市場、静かな復活の兆し

近年、停滞気味だといわれてきたシンガポール株式市場に、再び活気が戻りつつあります。取引所の収益は好調で、相次ぐIPO(新規株式公開)の話題もあり、そして政府・規制当局の積極的な支援策も発表されています。
本稿では、最新の動向を整理しつつ、再燃の雰囲気が広がってきたシンガポール市場について解説してみたいと思います。
(引用元:Singapore Exchange posts record profit, sees strongest IPO pipeline in years | Reuters
https://www.reuters.com/world/asia-pacific/singapore-exchange-posts-record-profit-sees-strongest-ipo-pipeline-years-2025-08-08/?utm_source=chatgpt.com)
シンガポール資本市場、静かな復活の兆し
著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon
公開日:2025年 11月13日
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SGX最高益

シンガポール取引所(SGX)は、2000年以来となる過去最高の年間収益を記録しました。さらに30社以上がIPOを準備中と発表されており、今年は大型案件が相次ぐ見通しです。代表例としては、宿泊施設関連のCenturion Accommodation REITが15億シンガポールドル(約1,725億円)規模で上場を予定しており、またNTTデータセンターもデビューに成功しました。こうした案件は市場全体の注目度を一気に高める存在となっています。
政府の市場活性化プログラム
好調の背景には、金融管理庁(MAS)が打ち出した「Equity Market Development Programme(EQDP)市場活性化プログラム」があります。総額で50億シンガポールドル(約約5,750億円)の枠組みを設け、まずは11億シンガポールドルを資産運用会社に配分して、小型株への投資を促進するというものです。これまで流動性不足が課題とされてきたシンガポール市場にとって、投資の呼び水となる政策だと評価されています。
投資家心理の改善
この流れを受け、JPモルガンなど大手金融機関がシンガポール株を「オーバーウエート(強気)=より多く投資すべき=「有望」に格上げしています。高配当・割安性、そして政策的な後押しを評価しての判断です。私自身も以前シンガポールの中小株に関心を持ち、実際に情報を集めたことがあります。当時は流通量の少なさや取引コストに悩まされましたが、もしこうした制度改革が進めば、個人投資家にとっても参加しやすい環境になるでしょう。
期待と課題
シンガポールは、地政学リスクが高まる中で「安定した資本の受け皿」として注目されています。世界的に金利の高止まり(あるいは先行き不透明)で、リスク資産への慎重姿勢が出てきています。それでも政策支援+配当利回りの良さで、”安定的なリターンが得られる市場”としてシンガポール株が選択肢に戻ってきています。香港市場に不安を抱く投資家が流れてくる構図は、実際に私が現地で体感してきた潮流でもあります。一方で、実際の売買体験が改善されなければ市場全体の活気は長続きしないと考えられます。IPO案件が成功し、投資家が「参加してよかった」と思える実績を積み重ねられるかどうかが、真の復活への分かれ道でしょう。
「静かな復活」が意味するもの
今回の活性化は、2000年代初頭のような派手なブームではなく、「静かな復活」と表現するのがふさわしいでしょう。配当や安定的リターンを重視する投資家が、着実に戻りつつあります。個人投資家にとっては、派手さはなくとも実益のある市場環境が整っていくことが、むしろ歓迎すべき方向性ではないでしょうか。
確かな選択肢に
シンガポール資本市場は、最高益を記録したSGX、政府による巨額の活性化策、相次ぐIPO案件により、再び存在感を高めつつあります。これまでの課題だった流動性や投資体験の改善が進むなら、個人投資家にとっても魅力が増していくでしょう。
これからの数年、シンガポール市場はアジア資本の「静かな避難先」として、確かな選択肢になっていくとみられています。





















