シンガポールのモンスーン急増 経済・観光・交通に打撃

2025年3月19日から3日間続いた大雨により鉄砲水が発生し、多くの企業や屋外活動に混乱が生じました。
例年モンスーンの移行期である3月中旬から5月は最も暑い季節とされ、時々強い雷雨が発生しますが、今年は例年以上の大雨が降りさまざまな影響が出ています。
そこで今回の記事では、シンガポールのモンスーン気候について詳しく解説します。
シンガポールのモンスーン急増 経済・観光・交通に打撃
著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon
公開日:2025年 7月13日
3日間で1カ月分の降雨量

シンガポール西部のジュロン・ウェストでは3月19日、20日の20日間で318ミリという過去最高の降雨量を記録しました。東部でも降雨量は298.4ミリを記録し、シンガポールの3月の月平均降雨量である209.7ミリを上回ったと国立水道局が発表しました。
3月19日の正午頃の気温は23.6度まで下がりました。
国立水道局は「豪雨や洪水警報が発令される一方で熱中症の危険も高まっており、気候リスクに常に先手を打つことが求められている」と述べています。
高温多湿の熱帯モンスーン
シンガポールは赤道直下に位置し、年間を通じて高温多湿の熱帯モンスーン気候に属しています。主に北東モンスーンと南西モンスーンの影響を受け、降水量や天候に季節的な変化をもたらします。
①北東モンスーン(11月〜3月)
この期間、シンガポールは北東モンスーンの影響下にあり、特に11月から1月にかけて降水量が増加します。これは南シナ海から湿った空気が運ばれて大雨を引き起こすためで、午後から夜にかけて雷雨やスコールが頻繁に発生します。これらは経済や観光、交通に影響を及ぼすことがあります。
②南西モンスーン(6月〜9月)
6月から9月にかけては南西モンスーンの季節で、スマトラ島やマラッカ海峡で発生したモンスーンにより、雷雨を伴うスコールが時々見られます。特に午後に雷を伴うにわか雨が多くなります。
③モンスーンの合間の季節(3月中旬〜5月、10月〜11月)
これらの期間はモンスーンの移行期です。3月中旬から5月は最も暑い季節とされ、最高気温が32度以上になることが多いです。昼過ぎから夜にかけて時々強い雷雨が発生します。10月から11月も同様に昼過ぎから夜にかけて強い雷雨が見られ、湿度も高くなります。
2025年の状況と例年との違い
2025年の北東モンスーン期間中、シンガポールでは例年と比較して降水量が増加し、特に1月には平均的な降水量を大きく上回る日が続きました。この異常気象は、南シナ海の海面温度の上昇や、エルニーニョ現象などの世界的な気候変動が影響している可能性があります。1月の平均降水量が通常の250mmに対し、2025年は350mmを超える日も観測され、都市部での洪水や交通の混乱が発生しました。
市民生活への影響
2025年1月15日にはシンガポール全域で一日中続く大雨が観測され、一部地域では道路の冠水や地下鉄の運行停止が発生しました。観光名所であるマリーナベイサンズ周辺でも浸水が報告され、観光客の減少やイベントの中止が相次ぎました。
シンガポールのモンスーンは、このように経済・観光・交通・インフラ・市民生活など、多方面にわたって影響を及ぼします。
急がれる防災対策
市民生活にさまざまな影響を与えるシンガポールのモンスーンですが、2025年はエルニーニョの影響で降水量が多く、これまで以上に深刻な影響が懸念されています。
食料の大部分を輸入に頼っており、モンスーンによる洪水や悪天候がマレーシアなどの近隣国の農作物に打撃を与えると食品価格が高騰する可能性もあります。2021年にはマレーシアの農地が洪水で被害を受け、野菜価格が約30%上昇したことがあります
今後も気象状況を注視し、都市の防災対策を強化することが求められています。