新鉄道開通で2300億円損失?シンガポール小売業界の危機と対策
東南アジアで初となる特別経済区の誕生が目前に迫るシンガポールとマレーシア。2026年末の新鉄道開通により、両国間の移動時間はわずか15分に短縮される見込みです。DBS銀行の最新分析によれば、この変化により年間2300億円規模の市場シフトが起こる可能性があります。価格差3分の1という現実は、どのようなビジネスチャンスを生み出すのか?
この記事では、シンガポールとマレーシアの関係の今後に焦点を当ててあらためて解説します。
35%増の人流が生む破壊的イノベーション|新市場の全貌
著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon
公開日:2024年 10月11日
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消費者はマレーシアへ
シンガポールの金融の最大手であるDBS銀行が、シンガポールとマレーシアのジョホール州とを結ぶ鉄道(RTS)が開通することで、シンガポールの小売りや飲食などのサービス業界が大きな打撃を受ける見通しを明らかにしました。
シンガポールの小売業界に年間で約1,670億~2,338億円程度の損失額が予想され、これは2023年の小売業界全体の売り上げの3~4%程度の規模に当たるということです。
物価や為替相場の関係で、シンガポールと比較して価格が3分の1程度と安いマレーシアへ買い物へ行く消費者が増えることが見込まれるためです。
賢く消費は当たり前
このような消費者の賢い消費行動は実際のところは当たり前で、シンガポールとジョホール間では、以前から休日になると多くのシンガポールの車が海峡を渡ってジョホールバルに向かい、帰りにはトイレットペーパーなどの日用品を車のトランクに積んで帰る姿は日常的です。
ガソリンに関しても同様な行動があるため、こちらについてはマレーシア側では厳しく対応するようになっています。
交通量の激増
シンガポールとマレーシアは、幅が1キロ少しのジョホール海峡で隔てられていて、毎日40万人以上の人々が国境にかかる2つの橋を渡って行き来しています。交通量は世界でも陸上の国境としては最も多く、毎朝の通勤時間帯にはイミグレの手続きを含めて、3~4時間かかるのは当たり前なほどの大渋滞です。
2026年末に開通する予定の鉄道は全長4キロメートルで、両国間の移動は15分程度に短縮される予定です。シンガポール側のウッドランズの国境検問所を通ってマレーシアに入国する人が、現在よりも最大で35%増えることが見込まれています。
迫られる対応
マレーシアに越境して買い物をするシンガポールの人々が増えるのに伴い、ウッドランズにある「コーズウエー・ポイント」をはじめとする商業施設は客足を引き留めるため対応が迫られると、記事には書かれています。
また、鉄道の開通で利便性が著しく向上し、国境周辺の商業地域の不動産価値が上昇することも見込まれているため、その点でも早急な対策が必要となるでしょう。
多方面で多大な影響
シンガポールとジョホールバル間の鉄道の開通は、シンガポールの経済に多大な影響を与えることが予想されます。
さらに、現在は計画がストップしているシンガポール・クアラルンプール間の高速鉄道計画の再開に、シンガポールの新しいローレンス・ウォン首相は否定的ではないとされています。これが完成すれば貿易や観光収入は5〜10%の増加が見込まれ、ビジネス環境の改善や労働市場の流動性向上など、多岐にわたる経済効果が期待されています。
両国はパートナーシップをさらに強化し、次の段階に加速させることで、真の経済的利益が得られることは疑う余地もないでしょう。