シンガポール観光収入 2024年 過去最高を記録 

シンガポール

シンガポール政府観光局(STB)のオウ最高経営責任者(CEO)は、2024年のシンガポールの観光収入が好調な業績を上げ、新記録を樹立したと発表しました。
外国人訪問者数は2023年と比較して21%増の1,650万人となり、堅調な成長を示しました。
今回は、観光立国でもあるシンガポールの1面について解説します。

シンガポール観光収入 2024年 過去最高を記録   

   著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon 
公開日:2025年 7月2日

2024年の観光実績

2024年(1月~9月)の観光収入は224億シンガポールドル(約2兆5,465億円)に達し、2023年の同時期と比較して10%増えています。
すべてのカテゴリーで前年より増加しており、観光、娯楽、ゲームが25%増、宿泊が17%増です。その他、食品や飲料、ショッピング、ビジネスにおいても堅調に増加しています。

中国がトップ

訪問者数のトップは中国で308万人、次いでインドネシアの249万人、インドの120万人がトップ3で、日本、台湾、米国、英国などの短・中・長距離からの訪問者も増えています。
中国からの訪問者がトップであったのは、2024年2月から開始された中国との30日間の相互ビザ免除措置や、航空路線の拡充が要因として挙げられます。

設備の充実も

シンガポールでは新規ホテルの開業も相次いでいます。オーチャード地区の「ザ・スタンダード・シンガポール」や「メルキュール・アイコン・シンガポール・シティセンター」などがオープンしており、合計1,421室が追加されました。

2025年も好調維持の予測

オウ氏は、2024年の観光部門の好調な理由は「1年間、関連業界が商品や体験を刷新し、新たなコラボレーションに乗り出した努力の成果だ」と語りました。

2025年の見通しはさらに強気です。年間1,700万~1,850万人が海外から訪れ、観光収入は290億~305億ドルに達し、コロナ禍前の2019年の最高記録に近づくと予想されています。

シンガポールにおける観光業の位置づけ

シンガポールにとって観光業は、単なる収益源ではなく、国家戦略の一環として極めて重要な役割を担っています。観光は経済の多様化、国際的なブランド構築、雇用創出などに貢献しており、政府の長期的な成長戦略に組み込まれています。

GDPへの貢献

シンガポールの観光業は経済の主要な柱のひとつであり、2023年時点でGDPの約4〜5%を占めています。シンガポールは製造業や金融業も強いですが、観光は国の多角的な成長に貢献しています。

雇用を支える

観光業はシンガポール国内で約6〜7%の雇用を支えており、宿泊、飲食、エンターテインメント、小売業など幅広い分野に影響を与えています。特に、MICE(会議・展示会・イベント)関連の雇用は高賃金の職種も多く、シンガポール人のスキル向上にも寄与しています。

ブランディングとしての観光

政府は「グローバル・シティ(Global City)」としてのブランドを確立し、国際社会でのプレゼンスを強化するために観光を効果的に活用しています。
また、他国と比べて自然資源や歴史的観光地などの観光資源も少ない中、人工的な観光インフラを開発し、観光資源の限界を補う戦略をとって独自の魅力を作り出すことに成功しています。

国際競争力を高める役割

シンガポールにとって観光業は、単なる経済活動ではなく、国家ブランドを強化し、国際競争力を高めるための戦略的な柱です。
観光を通じて外貨を獲得し、世界都市としての地位を維持すると同時に、文化発信やMICE産業の発展を支える重要な役割を果たしています。
今後も、デジタル技術や持続可能性を取り入れた観光政策を強力に推進し、アジアのみならず世界トップクラスの観光都市としての地位を確立していくと予測されています。

Malay Dragon

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マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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