ジョホールバルとシンガポールの関係

マレーシア

マレーシアのジョホール州はマレー半島の最南端に位置し、州都のジョホールバル(略してJB)は人口約50万人。クアラルンプール、ペナンに次いでマレーシアで3番目に大きな都市です。

ジョホール海峡を挟んで対岸に向かい合うシンガポールとは2つの橋で結ばれており、通勤通学者や、荷物を載せたトラックがたくさん行き来し、シンガポール人の生活を支えています。

今回は、あらためてジョホールバルとシンガポールの関係性について解説します。

ジョホールバルとシンガポールの関係  

   著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2023年8月18日

19世紀から盛んに交易

19世紀当時は、錫やゴム、コショウなどの商品が、フェリーでジョホール海峡を越え、積み替えられていました。海峡を越える物資と旅客の増加に合わせてフェリーの需要が高まります。そしてジョホール海峡を渡る瓦礫の土手道の建設提案がなされ、1924 年、現在も使われている陸橋であるコーズウェイが正式に開通しました。

コロナ禍以前は、毎日約41万5,000人もの人々が2つある国境の橋を渡って両国間を往来していました。ジョホールバルとシンガポールとは地理的にも経済的にも非常に密接な関係にあります。

シンガポールの後背地

毎日 40 万人以上のマレーシア人がジョホールバルからシンガポールに入国し、シンガポールの労働力に貢献しています。また、ジョホールバルはシンガポール人にとっても人気の地であり、週末になると日帰り旅行でたくさんの人が訪れます。

連休があると大変です。先日のハリラヤ休日の際には、マレーシア側のイミグレーションでの並び時間が6時間と、コロナ前と同じような混雑ぶりが報道されていました。

ジョホールバル・シンガポール間の快速通勤鉄道

ジョホールバルとシンガポールとを結ぶ快速鉄道(RTS)リンクが、 2026 年末までに完成する予定です。この4kmの鉄道シャトルサービスが運行されると、乗客は5分で移動できるようになります。毎時最大10,000 人の乗客を各方向に輸送でき、現在毎日30万人以上が利用しているコーズウェイでの検問の迅速化と移動時間の短縮が実現されることになります。

レギュラーガソリンの販売・購入禁止

現在ジョホールバルのシンガポールとの国境近くのガソリンスタンドでは、シンガポール人がガソリンを購入しようとしてマレーシア人スタッフと口論に発展し、警察官が急行する事態がしばしば起きています。

シンガポールドルの急騰とマレーシアリンギットの急落が影響し、1ドルが過去最高の3.45リンギット(6月29日現在)となり、高給のシンガポール人がジョホールバルに訪れて安く給油できてしまうのです。

現在マレーシア国内では、外国登録車両がレギュラーガソリンを購入することは法律で禁じられています。国境から50キロ以内での購入も禁止で、ハイオクガソリンの購入が求められています。外国登録車両がレギュラーガソリンを給油した場合、ガソリンスタンドのオーナーには最高で100万リンギット(約3,076万円)の罰金刑と、最高3年の禁固刑が科されます。

大切な互恵関係

シンガポールは、年末のモンスーンの時期に洪水に悩まされているジョホール州の住民の洪水回避の点で協力関係にあります。

また、野菜や果物、豚肉や鶏肉など食料の90パーセント以上を、ジョホール州を含む170以上の国と地域から調達しており、ジョホールバルとシンガポールは非常に強固な互恵関係を結んでいます。

今後5年以内に1兆ドルを超えると予測

国境を越えたQR決済などのスキームも検討されており、ジョホールバルとシンガポールは、間もなく国境を越えた経済特区によってさらに緊密にっていくでしょう。

この地域のGDPは、今後5年以内に1兆ドル(約144兆円)を超えると予測されていて、これはASEAN全体の4分の1を超える規模となります。

2024 年に完成予定のRTS が非常に楽しみですし、その完成がもたらすプラスの効果は、ジョホールバルとシンガポールの地域間のみならず、マレーシアとシンガポールの二国間、さらにはASEAN加盟国にも大きな影響をもたらすでしょう。

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