シンガポールに移住する富裕層激減

国際投資移住アドバイザリー会社のヘンリー・アンド・パートナーズの調査によると、今年シンガポールに移住する億万長者の数は1,600人になると予想されています。これは2024年の3,500人と比べて半減しています。
超富裕層の移住者が増えていたシンガポールですが、ここにきて少し変調が見えてきたようです。
今回の記事では、その辺の事情を深掘りします。
(引用:ブイプレ|VPRESS・ベトナム情報版 https://www.vpress.asia/article/685e8f127cd94e726e8da9e3/ )
シンガポールに移住する富裕層激減
著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon
公開日:2025年 9月19日
魅力を失ったのか?

今回のレポートでは、2025年におよそ14万2000人の富裕層が世界各地に移住すると予測されています。この数字は過去最高であり、富裕層の間で新たな生活拠点や資産保全先を模索する動きが加速していることが分かります。
従来、シンガポール、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドなどは移住先として圧倒的な人気を誇ってきました。しかし、最近では「安全性」「自由」「税制の優遇」だけでは選ばれにくくなり、魅力の再定義が求められているようです。
バンコクが急浮上
一方で、タイ・バンコクの存在感が急上昇しています。報告書によれば、2025年には450人もの富裕層がバンコクに移住すると見込まれており、シンガポールの直接的なライバルとなりつつあります。
その背景には、インターナショナルスクールの充実や金融・医療サービスの成長、高級不動産市場の活性化などがあります。特に中国、韓国、ベトナムといった近隣国の富裕層にとって、バンコクは”東南アジアの新たな安全地帯”として魅力的に映っているのです。
富裕層流入の減少理由──その背景を探る
シンガポールへの富裕層の流入減少は、世界的なトレンドやアジア域内の勢力図の変化、そして国内の制度見直しという三重の要因によって引き起こされていると言えます。
a. グローバルトレンドの変化
2025年は過去最大の富裕層の海外移住が予測されています。これはコロナ禍を経て人々の価値観が大きく揺らぎ、「安全性」「税制」「政治の安定性」「自由な生活」などを求めて、富裕層がより積極的に新たな拠点を探し始めた結果と見られています。
特に国をまたぐ「資産保全・運用のための移住」が加速しており、国境を越えた“資産の逃避先”としての魅力をいかに発信できるかが各国の焦点となっています。
b. 地域内競争の激化
もうひとつの大きな要因は、東南アジアや中東諸国を中心とした移住先としての“新興勢力”の台頭です。たとえば、タイのバンコクでは、国際的な学校の充実、高級不動産の整備、さらには外国人富裕層向けの金融・医療サービスの拡充により、多くの流入が見込まれています。
シンガポール以外の選択肢が広がったことで、移住先としての競争がよりシビアになっているのです。
シンガポールの制度変更と生活コストの高騰
さらにシンガポール国内の政策変更も、今回の減少に大きく影響しています。
これまで最低S$250万(約2.7億円)だった投資要件が、2024年からS$1,000万(約11億円)に大幅引き上げられたことで、参入のハードルが一気に高まりました。
不動産価格の高騰や生活費の上昇も、移住先としての魅力をやや減じている要因となっています。現地の高級コンドミニアムや学費、医療費などが上がり続けており、「コストパフォーマンス」の観点から他国へ目を向ける富裕層が増えているのです。
減少の中にあるチャンス
とはいえ、今回の減少は一概に悲観すべきものではありません。1,600人という流入数は、依然として世界トップクラスであり、シンガポールが持つ国際的な信用や制度の安定性は揺らいでいません。
むしろこの局面は、国のあり方を見直す好機とも言えるでしょう。これまで評価軸とされてきた「税制」「安全性」「教育環境」に加え、これからは「デジタル政策」や「文化的魅力」「都市の持続可能性」など、多様な視点からの魅力づけが必要になってくるでしょう。