海外マーケティング 匠への道 vol.1

ビジネスコラム

コンサルティングファームや国内マーケティング会社を経た海外マーケティングについて経験が浅い著者が海外ビジネスの匠を目指し、日々学ぶ中で得た知識やノウハウなどをこれから海外ビジネスを目指す読者と共有するための海外ビジネスの入門的コラム。

海外マーケティング 匠への道 vol.1

著者:gramマネージャー 坂井 聡佑 
公開日:2020年07月1日

私は海外マーケティングについてまだまだ経験が浅く、十分に知見があるとは言えません。しかし海外マーケティング、特に海外進出の際の事前リサーチが非常に重要であるということは実際に体感しております。本コラムでは海外マーケティングを勉強する身である私が海外ビジネスの匠を目指し日々学んだことを中心に、これから海外ビジネスを始めようと考えている方を読者に想定して執筆いたします。

海外進出における事前リサーチの重要性

私が「海外進出に事前リサーチはマスト」と考えるようになった原体験は、自らの幼少時代にあります。いまから20年ほど前に父が経営する会社(製造業)が安価な労働力を求めて中国へ進出しました。当時中国は「世界の工場」と呼ばれ企業の海外進出の定番でした。結果的にいうと、その中国進出は”失敗”に終わりました。
実際に海外進出してから、5年経たずして中国工場を閉めることとなったのです。
当時の中国進出失敗の原因を父に聞くところによると、「海外ビジネスに対する読みの甘さ」があったといいます。中でも「日本と同じ感覚でビジネスを行うことはできない」という言葉が印象に残っております。具体的にはどういうことか以降触れていきます。

新興国ビジネス特有の不確実性

当時父の会社の中国事業で上手くいっていなかったポイントは2つ。「真面目で優秀な労働者の確保」と「適切な原料調達先の選定」です。
まず「労働者の確保」に関して、忘れてはならない前提は日本の労働者の水準は世界屈指の高さであるということです。国民性は真面目であり教育水準も高いため、勤務態度が規範的であり、作業やアウトプットの質も高い。これが当たり前となってしまうと海外ビジネス(特に新興国)においては面を食らうことが多いです。(現在では経済大国となった中国でも依然として沿岸部と内陸部間の労働者の質に格差が残っているとされる)
「原料調達先の選定」に関しても日本と異なる特有の難しさがあるといいます。現地企業を自社で調べきることは困難であり、企業選定に関して現地人に相談した際に、彼らの利害関係が絡んできてしまうケースもあります。結果として安価で良質な原材料を供給してくれる企業を選定することは想定以上に難しいです。
極めつけには2008年の北京オリンピック会場として、工場のあったエリアが中国政府によって買い上げられることが決定打となり、父の会社の中国事業は撤退となりました。いずれも日本の感覚でビジネスを行うと足元をすくわれることを示しています。

事前リサーチの意義

事前リサーチは不確実性を除去することに意義があると考えます。先ほど挙げた中国進出失敗の例も事前リサーチによって幾分か不確実性は除去できたのではないかと思います。
事前リサーチで特に大事なのがいかに ”生きた情報” を早く取得できるか。
インターネット網が発達し、世界各国の情報がウェブ経由で取得できるようになり、手軽に多種多様の情報を手に入れることができるようになりました。しかし特に変化の激しい新興国についてはウェブで拾った情報が実態と乖離しているケースも多いのが事実です。海外ビジネスを行う上では信頼のできる情報源から生きた情報を取得し、その客観的な視点を持ちながら意思決定を行っていくことが重要ではないかと考えます。不確実性を少しでも減らすことが海外進出の成功につながります。

今後、私のコラムでは海外マーケティング、特に事前リサーチについて掘り下げて学んでいき、海外ビジネスの巧へと向かっていきたい。

坂井 聡佑

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gram 部長 1991年愛知県生まれ。一橋大学卒業後、2015年4月、株式会社クロス・マーケティングに入社。主に大手自動車メーカーや情報システム会社を中心...

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