ブータンの伝統的なお祭りツェチュってなに?
ブータンはヒマラヤ山脈東に位置する仏教王国である。世界で唯一、チベット仏教を国教としている。信仰心が強く、祈る時には「五体投地」と言われる両手・両膝・額(五体)を地面に投げ伏し祈る、最も丁寧な礼拝方法で行う。ブータンにはツェチュという祭りがあり、ブータンにチベット仏教を伝えた聖者グル・リンポチェ(偉大なる師の意味)の偉業を讃える祭りである。地域ごとに分かれて開催され、今回は古都プナカで行われたツェチュの様子をお伝えしたい。
ブータンの伝統的なお祭りツェチュってなに?
著者:ブータンgramフェロー よう
公開日:2023年4月10日
ツェチュってなに?
グル・リンポチェはチベット仏教のニンマ派の開祖であり、チベットで最も古い僧院、サムイェ僧院を完成させたことでも有名である。ブッダが入滅する際に秘密の教え(密教)を確立する者としてその誕生を予言したので「第二の仏」と呼ばれることもある。グル・リンポチェは仏教布教の妨害となっていた土着の神々を、強力な霊力で調伏し、仏教を保護する護法尊として益することを誓わせ、チベットに密教を広く伝えた。それらの功績を称え、チベット暦の毎月10日は「ツェチュ」と呼ばれグル・リンポチェを称える供養法要を行う日とされている。
ツェチュは地域によって1日〜数日間と開催日数は異なり、開催日も地域ごとに異なる。内容は基本的にグル・リンポチェを称えるものになっている。仮面をつけた僧侶が躍動感あふれる踊りと音楽でグル・リンポチェの生涯と教えを再現する「チャム」が最大の見どころである。黒帽の舞「シャナ」、太鼓のバチで叩いてもらうことでご利益があるとされる「ギン・タン・ツォリン」、死後の閻魔による裁き「ラクシャ・マンチャム」などの舞が、プログラムとして組まれて披露される。チベット仏教の教えを一般民衆へわかりやすく伝える、かつ法要の意味が込められた神聖なものとなっている。外国人も見ることができ、ツェチュを見るためのツアーも組まれている。ただし、ツェチュが行われるゾン(僧院)に入るには外国人は見学料を支払わなくてはいけない。値段は僧院ごとに異なる(500〜1000Nu /人)。
プナカツェチュ
プナカは首都ティンプーから車で2時間ほどのところに位置する古都である。2023年は3月1〜3日にツェチュが行われた。コロナの影響で中止されていたため、3年ぶりの開催であった。1637年にブータン建国の父であるシャブドゥン・ガワン・ナムゲルによって建造されたプナカゾンで行われる。
(画像出典元:ブータン写真館より https://tabisite.com/gallery_as/butan/pnk.shtml)
プナカは首都ティンプーよりも低地に位置しているので暖かく、避寒地としても知られる。ティンプーのタシチョゾンの高僧も冬の間プナカゾンに滞在する。プナカゾン内部には3つの中庭があり3つ目の中庭の先にある講堂の右側のお堂には、シャブドゥン・ガワン・ナムゲルのご遺体が安置されている。こちらの施設は外国人見学不可となっている。
ツェチュの期間は開催地域は祝日となる。ゾンの中に大勢の人が集まるのでかなり混雑しており、座って踊りを見るためには朝早くから行き、場所取りをする必要がある。僧院の中に入るにはブータン人はキラ・ゴという民族衣装に、普段は使用しないスカーフ(男性はカムニ、女性はラチュ)の着用が義務付けられている。ツェチュの日は国民にとっても特別な日で、特に女性は普段とは違うカラフルで綺麗な刺繍の特別なキラを身につける。ものによっては10万円以上するキラもあるそうだ。子供たちも高価なゴやキラを身につけていてどこか大人びて見える。
写真のようにゾンの真ん中にスペースがあり、さまざまな演目が披露される。人々は持参した食べ物を食べながら家族で団欒しながら鑑賞している。
見られたらラッキー!トンドルご開帳
(画像出典元:ドラゴンツアーズHP https://dragontours.jp/about_festival.html)
見るだけで功徳が積めるといわれる「トンドル(大仏画)」がある。トンドルは巨大な大仏画であり、祭りでのトンドルはグル・リンポチェの再来を表す。各地のゾンに大切に保管され、お祭りの時のみ開帳される希少なものである。トンドルは夜明けと共に開帳され数時間のみしか見ることができない。場所によっては数年に一度しか開帳しない場合もあり、見ることができればかなりラッキーと言える。ちなみに今年のプナカツェチュでは残念ながら開帳はなく、見ることができなかった。ツェチュを見に行く際にはぜひトンドルのご開帳にも注目してほしい。