中国で拡大するベビー用品市場と人気ブランド3選
中国政府は一人っ子政策の廃止を行い、三人っ子政策を打ち出すなどで少子化対策を行っているが、2021年、過去最少の出生数を記録した。少子化に歯止めがかからない中、ベビー用品市場は拡大し続けている。当記事では中国におけるベビー用品の現状と、筆者が中国人の子育て世帯から聞いたリアルな声をまとめ、ベビー用品人気ブランド3つを紹介する。
中国で拡大するベビー用品市場と人気ブランド3選
著者:上海gramフェロー 米久 熊代
公開日:2022年7月15日
なぜ少子化に?中国人のリアルな声
冒頭でも伝えたが、出生数が過去最少となった2021年、もう一つ中国では過去最低を記録したものがある。それは婚姻件数だ。
中国民政省は8月21日までに、2021年の婚姻件数が763万6千組だったと発表した。中国メディアによると、件数の公表が始まった1986年以来最低水準だそうだ。出生数に影響するのは必至で、人口問題の専門家は、今年にも公式統計上の人口が減少に転じる可能性があると指摘した。婚姻件数減少の原因には、新型コロナ流行のほか、出産する年齢層の女性の減少、晩婚化、若者の出産意欲の低下などが指摘されている。
(引用:共同通信 https://nordot.app/878571139208511488?c=39546741839462401)
3歳の子どもを育てる上海市在住の友人(30代女性)は、夫と70代の実両親と同居している。両親はいるが高齢なこと、また夫婦共働きのため、阿姨(アーイー)という子どもの世話と家事をしてくれるお手伝いさんを雇っている。ロックダウンのときは阿姨に住み込みをしてもらい生活していた。「本当はもう1人子どもがほしい。でも子育てと仕事をするエナジーがまったく残っていないし、子どもはまだ小さいからこれから教育にどんどんお金が必要になってくる。親の介護についても心配で、日本と比べ社会保障制度の整備が追いついていないから将来の不安が大きい。だから私はこの子がいるだけで十分幸せ。」と語ってくれた。
少子化が止まらないリアルな背景の一部を垣間見た。しかし、彼女のいうとおり1人のわが子をとても大事に育てる彼女は幸せそうであった。彼女や周りの子育て世帯の友人は、愛するわが子のためならお金を惜しまない消費意欲の高い層に当てはまる。
高くとも高品質と安全性を求める
中国人が購入の決め手となる条件といえば「口コミ」が一番大きいという記事を目にしたことがあるが、子育て世帯は特にそれに当てはまるだろう。1歳の男の子を育てる中国人ママは「子どもの口に直接入れるものは、何種類もある商品の口コミをすべて確認してから一番良いものを購入するようにしている」と教えてくれた。チーズ1つをとっても5個入り50元(約1,000円)もする商品を「オーガニック食品で、口コミが一番良かったから」と子どもに食べさせていた。育児用の粉ミルクは安全性を考え、国内製品ではなく絶対に輸入品を購入するとも教えてくれた。
中国では粉ミルクを飲んだ赤ちゃんが死亡する事件や、ボディークリームを使用した乳幼児の顔や体が腫れあがり、中国製のおもちゃで遊んでいた子どもたち約40人が呼吸不全などで集団入院するなど、信じられない事故が発生している。これらは氷山の一角であって事故に繋がる一歩手前のヒヤリとすることはごまんとあるはずだ。
筆者もその経験がある1人で、中国ブランドのおもちゃを数個子どもに買い与えたが、ネジなどの小さい部品がすぐに取れてしまい子どもが誤飲をするところだった。また、中国の某有名スーパーで購入した赤ちゃん用の素麺を茹でると、着色料が溶けだし透明だったはずの鍋のお湯が青色になった。
国産ブランドを信用できず輸入品を購入する人が多いのも事実だが、逆にいえば国産ブランドでも高価なものでも、高品質で安全性の高い製品ならば消費者からの需要は高い。
中国で拡大するベビー・マタニティ市場
統計データによると、中国のベビー・マタニティ用品市場の規模は2010年の1兆元(約17兆円)から2020年の4.09兆元(約70兆円)までに拡大、年平均増加率は15.06%に達した。中国大手ネット調査会社であるiResearch社は、2024年までに中国ママ・マタニティ市場は7兆元(約119兆円)を超えると予測している。
(引用:ネットショップ担当者フォーラム https://netshop.impress.co.jp/node/9844)
ベビー・マタニティ産業の発展と消費者のアップグレードにより、商品の種類は徐々に豊かになり、食品、消耗品、衣類、マタニティ用品などのカテゴリーが揃っている。中でもベビーフードが37%と最大のシェアを占め、次いでベビー服が30%を占めている。 マタニティ用品は20%、消耗品は13%を占める。
(引用:Tech时代 https://www.techshidai.com/article-109639.html)
親が消費意欲の高い層であることが、少子化にも関わらず市場が拡大を続けることのできる大きな理由の1つだろう。
次に、中国人から聞いた中国で有名なベビー用品ブランド3つを紹介する。
babycare
2014年に市場に参入した新興ブランド「babycare」。最近の子育て世帯なら誰もが一度はbabycareの商品にお世話になったことがあるのではないだろうか。おむつやお尻拭きなどの消耗品から、ストライダーなどのおもちゃ、衣類など、様々な子ども向け商品を取り扱っている。中国人の友人からすすめてもらい、わが家にもbabycareの商品がいくつもある。高品質で子どもにも安心して使うことができ、デザインも今の流行りをよく分析している。市場への参入は2014年と最近だが、人気の理由に納得のいくブランドだ。
中国最大のECセール「双11(ダブルイレブン)」では、2018年から3年連続で育児用品部門の売上高第1位となっており、昨年は全販売チャネルでの合計売上高が9億元(約145億円)を突破した。すでに3000万世帯以上がBabycareを利用し、登録会員数は1000万人を超えている。
(引用:36Kr Japan https://36kr.jp/118025/)
好孩子(Goodbaby)
1989年に創業した中国大手のベビー用品ブランド「好孩子」。百度によると好孩子の国内での認知度は95.7%となっており、幅広い世代から知られている超有名ブランドだ。安全で使いやすく、質の高い製品を提供することをスローガンに掲げている。好孩子といえばベビーカーやチャイルドシート、乗りもの系のおもちゃが有名だ。折りたたんだ状態が世界最小コンパクトベビーカーとしてギネスに認定された商品がある。
また、今でこそ「科学的な育児」が取り上げられ、中国の最近の親世代で人気を集めているが、百度によると2000年、好孩子は科学的な育児知識を普及させるため、無料で中国初の科学的育児サイトを開設した。乳幼児の発達のあらゆる側面から、子どもの生理、心理、育児、教育について無料で指導を行うなど、子育て世帯の認知度を着実に広めてきた。
方广(FangGuang)
食品安全に関わる政府指導者や専門家などが出席する食品安全サミットで、数々の賞を受賞したベビーフードブランド「方广」。ベビーフードの新たなトレンド「オーガニック製品」を戦略として取り入れているのが特徴だ。2018年から5億元を投資して有機農園を設立し自社製品の原料として使用するなど安全性と環境保護にも重きを置いている。中国人ママからすすめられたオーガニックベビー麺は、ただ無添加なだけではない。豚レバーやサーモンなどのタンパク質と、ほうれん草やトマト、人参など野菜の栄養素が入っている。野菜やレバーの臭みはほとんどしないためとても食べやすい味だ。野菜嫌いな子どもの栄養面を心配する親は多いが、まさにそんなニーズを満たしてくれる商品だ。
また、子ども向けの無添加おやつも人気だ。 子どもの胃袋は小さいため、一度に食べられる量はそれほど多くない。1日3回の食事の合間に1~2回のおやつ(間食)をとり、必要なエネルギーや栄養素を満たす必要がある。子ども向けスナック菓子市場は2018年から2023年にかけて年平均10%~15%の安定した成長が見込まれており、無視できない期待できる市場だと現地メディアは報じた。
まとめ
ベビー用品市場は「高品質・安全性」が特に重視されてきた。更に最近の親世代にはbabycareなどの洗練されたデザインが、他社ブランドと差をつけることのできる非常に重要な要素となってきている。子どもへのストレスやトラブルを考え、わが子に与えるものはあまりころころ変更しないほうが望ましいと多くの親は考える。子どもの年齢が小さければ小さいほど神経質になるものだ。そのためトレンドの流れが激しい市場だが、親からの信頼を勝ち取ることさえできればリピーターに比較的繋がりやすいともいえるだろう。