コーヒーブームの中国市場 カフェチェーンと新規参入の競争激化

中国

中国上海市は、ニューヨーク、ロンドン、東京を抜き世界一コーヒーショップが多い都市だ。中国全体のコーヒーショップの数は2020年末時点で10万8000店。上海市には6913店存在する。町中でコーヒーショップがひしめき合い、ライバル店が隣同士で営業する様子は上海市では見慣れた光景だ。当記事では中国の有名コーヒーチェーン店と世界と比較した消費量、市場規模について紹介する。

コーヒーブームの中国市場 カフェチェーンと新規参入の競争激化

   著者:上海gramフェロー 米久 熊代
公開日:2022年6月8日

世界一カフェが多い都市上海の今と人気コーヒーチェーン

近年、中国のコーヒー市場規模は拡大の一途をたどっている。上海、北京、深圳、広州の一級都市に住む中国人の生活に、コーヒーは特に浸透している。世界最多のコーヒーショップを有する上海市では、コーヒーを片手に町を歩く人が多く、オフィスのデスクの上にはお茶よりもコーヒーが置いてある割合がどの層においても高い印象だ。

上海市のモールに設置されたコーヒー自動販売機

都市部ではコーヒーの自動販売機をよく見かける。QRコードを読み込んでオンライン注文、支払い後に表示されるQRコードを機械に読み込ませると注文したコーヒーを作ってくれるシステムだ。

上海市は6月1日にロックダウンが終了し、リベンジ消費が期待されていたが、再び封鎖になった小区もあるので、筆者の周りの中国人の多くは不要不急の外出を控えている。また、新型コロナ感染拡大防止策として店内での飲食は禁止、週3日の在宅ワークなど何かしら制限を設けている会社も多い。6月12日に上海市では梅雨入りしたのもあり、外出する人はさらに減ると予想される。今後もコーヒーのデリバリー需要は高いままだろう。

写真右:ココナッツラテ「椰云拿铁」はLuckin Coffee(瑞幸咖啡、ラッキンコーヒー)と椰树のコラボ商品で今年大ヒットした。

中国国内のスターバックス店舗数を超えたことで話題となったLuckin Coffeeも、コーヒーの自動販売機を銀行やオフィスなどの建物に設置している。Luckin Coffeeの店舗はアプリ注文のみを受けつける。価格はスタバのおよそ半額とコストパフォーマンスが高く、クーポンを使うことで一時期はコーヒーが1杯2元(40円)で飲めたことも。Luckin Coffeeは2020年4月、粉飾決算による米上場廃止通告をされるなどトラブルが続いたが、現在は中国最大のコーヒーチェーン「中国版スタバ」に成長。赤字が続いていたが巧みな経営手腕で、初の営業利益黒字を達成したことを発表した。

Manner Coffee(マナーコーヒー)

コーヒー豆と焙煎方法にこだわり、高い品質管理を求められるスペシャリティコーヒーが、なんと1杯15元(約300円)と低価格で飲むことができる。マイカップを持参するとさらに5元(約100円)割引き。Manner Coffeeはスターバックスのように寛げる空間をウリにはしていない。小規模テラス席がある店舗もあるが、テイクアウトを基本とした販売方法でシンプルなデザインが特徴だ。賃料と内装コストを最小限にし、無駄なコストをカットしているからこそ、高品質のコーヒーを低価格で販売することが可能なのだ。

ちなみに、2015年に1号店をオープンしたManner Coffeeは、現在380店舗にまで拡大。2017年に1号店を開店したLuckin Coffeeは6000店舗を超えた。一方、2016年に中国進出したコメダ珈琲は現在上海市に7店舗、2018年中国進出のドトールコーヒーは上海市に1店舗だけに留まっている。(筆者調べ)

コーヒー市場規模拡大 大手企業が次々と参入

2020年末時点で、中国にあるカフェは10万8000店。上海には6913店のカフェがあり、米国ニューヨークの1591店、英国ロンドンの3533店、東京の3826店を大きく上回る。

デロイトが今年発表した「中国挽き立てコーヒー産業白書」によると、中国の大都市圏でコーヒーを飲む習慣が定着した人の割合は、お茶のそれと同程度の67%に達し、年間のコーヒー消費量は300杯。成熟したコーヒー市場の水準に近づいている。人々の好みもラテやカプチーノなどのミルクコーヒーからブラックへシフトし、コーヒー豆の種類や味わいへの関心が高まっている。

世界のコーヒー消費量の平均増加率は2%にとどまるのに対し、中国では毎年15%以上増加。中国のコーヒー市場は2025年に1兆元(約17兆9232億円)を超えると予想されている。

成長性の高い中国のコーヒー市場に、近年はブルーボトルコーヒーやティム・ホートンズなど海外コーヒーブランドが進出。また、コーヒーとは無縁に思える企業の参入も続いている。郵便事業を行う中国郵政が郵便局カフェをオープンし、石油大手の中国石油化工集団(シノペック)は、ガソリンスタンドに併設されたコンビニでコーヒーを販売。老舗漢方薬の同仁堂は、漢方入りコーヒーなどの身体によいメニューをカフェで販売。健康志向の中国で健康コーヒーは人気を博した。

今年、Z世代の国潮圏から絶大な支持を得ている、中国大手スポーツ用品ブランド李寧体育は「寧珈琲NING COFFEE」の商標申請をした。また、大手通信機器メーカーのHUAWEI(ファーウェイ)も市場へ参入。商用名を『一杯咖啡吸收宇宙能量(1杯のコーヒーが宇宙エネルギーを吸収する)』として登録手続きを行い、市場参入の意向を示した。

まとめ

各業界で主導的地位にあり先駆者として存在する企業が、コーヒーという異業種へ参入。その注目度の高さから今後も中国コーヒー市場に希望が持てる一方、世界で最も急速にコーヒー市場が拡大する中国国内の競争が激化している。また、大手カフェチェーンのスターバックスやティム・ホートンズ、Luckin Coffeeは値上げを実施した。人件費や賃料、原料価格の高騰など営業コスト増大が原因だと予測される。特にスターバックスの値上げは中国のSNSでトレンド入りするほど話題になり、中国人のコーヒーに対する需要と関心の高さが伺えた。

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