中国で若者に人気のゲームとeスポーツ事情|高齢者施設でも需要高まる

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近年の中国ではeスポーツへの関心が高まっている。上海や北京、深センなど都市部を中心にイベントが開催され、コンテンツが誕生し、中国は世界最大のeスポーツ市場だと言われている。ゲームの規制やインターネット依存症の懸念が強まる中、2023年の中国におけるゲーム市場の売上高は増加し、ユーザー数は過去最高を記録した。また、中国政府はeスポーツに対する支援や発展を推進している。本記事では、現在の中国のゲームとeスポーツ事情と注目が高まった背景、市場規模について紹介する。

中国で若者に人気のゲームとeスポーツ事情|高齢者施設でも需要高まる

   著者:上海gramフェロー 米久 熊代
公開日:2024年7月29日

中国のオンラインゲームとeスポーツ事情

出典:小紅本

中国では未成年(18歳未満)に対するゲーム利用に厳しい制限を設けている。ゲーム利用時間の制限(週3時間※金土日と法定休日の20時〜21時の間の1時間のみ)や、課金の制限、ゲームへの実名登録など強化されている。増加しているゲーム依存症など、未成年者の心と身体の健康のための規制だと中国政府はしているが、拡大し続けるデジタル産業に関わるITやネット企業を制限・指導する狙いもあるとされ、新作ゲーム審査の凍結など企業への圧力は無視できない。

ゲームやインターネットは悪影響を与えるリスクが高いと警鐘を鳴らす中国だが、eスポーツに関しては積極的に支援を行っている。中国政府はeスポーツ選手を正式な職業と認めるなど、eスポーツ産業の発展を推進。そもそも、「ゲーム」を勝利を掴むために頭脳を使う「スポーツ」としてカテゴライズしているのだ。中国では高等教育と職業訓練のカリキュラムにeスポーツを取り入れ、一部の大学ではeスポーツの関連学科を設置する動きが進んでいる。

eスポーツ産業に力を入れている上海市は、「2023世界eスポーツ都市評価報告」でロサンゼルスを抜き首位を獲得した。

中国でeスポーツに対する注目度は高く、特に若者を中心にユーザーが広がっている。

昨年の9月に開催されたアジア競技大会では、eスポーツが初の正式な種目として採用された。観戦チケットは他競技のチケットに比べて高額にも関わらず、チケットを求める人が予想を上回ったため抽選方式での販売となった。30ヶ国以上が参加し国民が注目する今大会で、中国のチームは7タイトルの内4種目で金メダルを獲得し、国内におけるeスポーツへの関心がさらに高まったのだ。

売上高は一時減少するも回復の見通し

写真:上海市にあるゲーム機売場

未成年を対象としたゲームの規制が強化されたこと、中国当局による企業への圧力、ゲームに課金する経済力や意欲の低下などの要因により、中国のゲーム市場の売上高は2022年に減少。また、eスポーツ大会に関しても、新型コロナウィルスの影響による試合の開催中止や延期が響き、2022年の売上高は大きく下がった。しかし、昨年度末に発表された中国ゲーム産業報告書によると、2023年は停滞期を脱出したという。

2023年の中国のゲーム市場の売上高は前年比14.0%増の3,029億6,400万元(約6兆円593億円、1元=約20円)で、3年ぶりの増収となり、初めて3,000 億元の大台を突破する見通しだ。ユーザー数は0.6%増の6億6,800万人で、過去最高を記録した。

(引用元:JETRO https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/12/39daaf9f143d64a3.html

中国の国内ゲーム市場の売上高が過去最高を記録した理由として、新型コロナウィルスのパンデミックによるさまざまな影響が消えたことで消費者の購買意欲向上や新製品が発売されたことなどが挙げられている。

また、eスポーツ市場の売上高は、前年比12.85%増の1329,45億元で、中国のeスポーツの競技人口は、4億8700万人規模に達した。

(参考元:36Kr https://36kr.com/p/2561572907949440

(参考元:AFP BB News https://www.afpbb.com/articles/-/3482387

2021年の過去最高記録である1401,81億元には届かなかったが、新興スポーツとしての認知度やユーザー数が安定してきたことや新製品の発売などによる影響で、今後も成長が期待できる。

今注目のeスポーツ×高齢者施設

出典:YouTube https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=p6GYVFX6wVs

eスポーツといえば若者の間で需要があると思われがちだが、最近は高齢者も夢中になる人が増えている。

Z世代が施設所長を務める河南省の老人ホームでは、若者のトレンドであるeスポーツを高齢者の心の健康促進のため導入している。また、eスポーツをプレイしている場面を撮影し、ライブ配信するなどして収益を獲得することで、入居者は無料で施設へ入居することができるという。このようにeスポーツはシニア産業にも広がりを見せている。

まとめ

写真:上海市のゲームセンターにて。ウルトラマンやポケモンゲームを楽しむ親子

中国におけるゲームとeスポーツ市場は勢いを取り戻している一方、中国当局によるゲームへの厳しい規制は変わっていない。いつ何が起こるか分からない先行き不透明な問題を抱えるマーケットではあるが、若年層から高齢者までユーザー層は幅広く、さまざまな分野で成長する可能性を秘めていることは間違いないだろう。

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