喫煙に対する規制の強化|スペイン

スペイン

スペインでは過去数十年にわたり喫煙率が減少してきた。これは禁煙キャンペーンや、公共の場所での喫煙規制の強化によるものだ。しかし若年層(18-24歳)の喫煙率は依然として高く、保健省は未成年のタバコの消費を減らすことも目的とした禁煙スペースの拡大、増税、禁煙計画の多角化などの国家戦略としての新しい「喫煙の予防と管理のための総合計画(PIT)2024-2027」の草案を今年4月に完成させた。

この計画案が法制化すれば、スペインでの喫煙にはこれまでよりはるかに厳しい規制が敷かれることとなる。

喫煙に対する規制の強化|スペイン

   著者:スペインgramフェロー 北田ミヤ
公開日:2024年7月30日

喫煙に対する規制の強化|スペイン

昨今、スペインでの喫煙率は減少傾向にある。とはいえ今でも喫煙は蔓延していて、その中で喫煙を取り巻くルールは長年にわたって進化してきた。2006年に施行された「反タバコ法」により、公共の場所や屋内施設での喫煙が禁止され、駅、空港、職場、一部の飲食店、クラブなどでの喫煙は罰金の対象となっている。また、同年にはタバコの購入が16歳以上から18歳以上に引き上げられた。

その後2011年にバーやレストランでの屋内での喫煙も禁止され、指定された屋外喫煙エリア(利用可能な場合)でのみ喫煙することができる。

政府の建物、病院、学校は一般的に禁煙、公共バス、電車、路面電車でも喫煙は固く禁じられていて、違反者には、違反の重大さと場所に応じて30ユーロから600ユーロの罰金が科せられる可能性がある。

ルールの厳格化とは裏腹に若者の間で電子タバコの使用が2015年から2022年の間に倍増しており、社会問題となっている。毎日460人のティーンエイジャーがたばこ習慣をスタートしているというデータもあるほどで、電子タバコは若者が紙たばこを始める原因にもなっているという見方もある。

近年、たばこの価格が上昇しているものの、スペインでは他のヨーロッパ諸国よりもかなり安く購入できることも問題視されている。例えばフランスではタバコのパックは平均約11€だが、スペインでは約5€となっている。

スペイン心臓病学会(SEC)とスペイン心臓財団(FEC)のデータによると、スペインでは年間約54,000人がタバコが原因で死亡しており、そのうち27.5%(絶対数で14,000人以上)が糖尿病などの心血管疾患によるものだという。

喫煙者数削減へのロードマップ

禁煙場所の拡大、たばこ税の急激な引き上げ、電子タバコを従来の喫煙者と同じ立場に置くことは、スペインの新しい禁煙計画「喫煙の予防と管理のための総合計画(PIT)2024-2027」に含まれる主要な抑止力措置の一部だ。

スペイン保健省が今年4月に承認したこの文書は、議会で正式に承認される新しい立法案に含まれると、Euractiv(EU関連のニュースを専門とするメディアプラットフォーム)のパートナーであるEFE(Agencia EFE=スペインを拠点とする通信社)が報じた。

2040年までに「たばこの無い世代」を実現するというEU全体のコミットメントを考慮すると、この条文は、喫煙者数の削減、公衆衛生の保護、新規のたばこ消費者の防止を目的としたスペインの法改正の指針となる最新のロードマップといえる。

その中には、禁煙の奨励と禁煙支援の促進、公共・私的空間におけるたばこ関連製品の環境曝露への低減、たばこ規制における応用研究とモニタリングの促進、および反たばこ同盟の調整と設立の促進が含まれる。

写真:街中のいたるところにタバコ屋があるスペイン

今後敷かれる厳しい規制

消費の減少を促す具体的措置として、たばこ税の増税がある。今年財務省は、たばこ税から過去最高の89億7000万ユーロを徴収した。現在スペインで最も一般的に販売されているタバコのパックは約4.80€で、そのうち78.4%(3.76€)が税金である。2005年以来、スペインのたばこ税は122%も上昇しているが、今後更なる増税が予定されている。

もうひとつの「抑止力」となる計画は、将来、たばこのパッケージをニュートラルなものにすることである。箱の色を見栄えの悪い色で統一し、ブランド名はArial書体、健康上の警告である、例えば「喫煙は人を殺す」のような文言は大きなフォントで表示することができる。

更に目標のひとつである、24歳までの若者の毎日の喫煙を20%未満に減らすことを念頭に、計画では、たばこおよび関連製品に風味を与える(EUの合意に沿ったもの)添加物を禁止、気化器や電子たばこなどのたばこ関連製品の規制を従来規制に合わせ、禁煙エリアも屋外を含め拡大することが想定されている。

写真:タバコ屋ではバスのチケットやちょっとした雑貨なども購入できる

まとめ

新計画の条文には、禁煙がどの地域に拡大されるかは明記されておらず、保健省は新たな禁煙計画が各自治区のガイドラインとなることを強調している。

政府は車内や自宅などの私的な空間でも、特に未成年者がいる場合の喫煙を禁止したいと考えているが、この措置はいくつかの自治区からの抵抗もあり、当面保留にされている。

時に矛盾する健康と個人の自由に対する権利の保証について、明確化が求められているといえる。

筆者の個人的な印象では、男女問わず歩きたばこやテラス席でたばこを吸っている人は非常に多いと感じるし、スペインは世界でも有数の観光大国であり、レジャーと観光部門が国内総生産の13%を占めていることを念頭に置くと、近い将来、バーやレストランのテラスでの喫煙が禁止されるかどうかは今後物議を醸すことになりそうだ。

北田ミヤ

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スペイン在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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