中国で勢いが止まらないペット市場!日本ブランドの課題と企業の参入事例

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中国のGDPを占める割合の高い不動産のバブル崩壊が起こり、現在の中国は不景気なニュースが続いている。市民の消費行動が慎重になっている中、中国のペット業界は年々市場を拡大させている。中国ECサイトの京東によると、2022年の中国のペット市場規模は約3,117億元(約6兆2,340億円)、2023年は3,924億元に達する見込みだ。本記事では中国でペット人気が高まる背景や、日中問題から見えてくる日本の課題と日本企業の参入事例を紹介する。

中国で勢いが止まらないペット市場!日本ブランドの課題と企業の参入事例

   著者:上海gramフェロー 米久 熊代
公開日:2024年3月18日

中国でペット人気が高まる背景

中国上海市にあるペットショップ。平日で外は大雨だったが、店内には多くの客がペットを見に訪れていた。

上海の街を歩けば、小綺麗なブランドの服を着たペットと散歩をする飼い主や、ペットと一緒にカフェで過ごす光景を以前よりも見る機会が増えたように感じる。

 中国でペット市場が年々拡大している背景としてまず言えるのは、単身世帯が増加していることが大きな理由のひとつだ。単身世帯は高齢者の一人暮らし、または若者の一人暮らしの2パターンに分かれている。家族との死別や同居家族が離れるなどで、高齢者の単身世帯が増えた。就職を機に親元を離れたり、結婚を望まないなど価値感の変化により若者の単身世帯が増加し、その数は現在2億人を超える。そして、孤独な心の拠り所としてペットを飼う人が増えている。特にペット市場を牽引しているZ世代は、収入よりも自分の時間を大切にする傾向にあり、家族のようなペットと過ごす時間を大切にする。

 また、最近「対人恐怖症経済」という言葉を中国SNSの投稿で見かけた。対人関係に疲れて嫌悪感や恐怖を抱き、社交的な場での消費を避ける若者が増加しているという内容だった。中国青年報によると、「対人恐怖症」と回答した若者は4割に上るという。こうした人々の心境の変化に寄り添えるペット産業は、まさに今の時代に最適と言えるだろう。

中国青年報はこのほど、中国社会科学院や出会い系アプリ・探探と共同で調査研究を実施し、今の若者の対人関係の状況を分析した。同調査研究では、探探の18歳から35歳までのユーザーを対象にアンケートを実施し、4000人から有効回答を得た。回答者の40.2%が、自分はさまざまな程度の「対人恐怖症」と答え、52.7%が「対人スキルに欠けている」、55.6%が「自分に対する自信不足」と答えた。

(引用元:人民网 http://j.people.com.cn/n3/2020/1222/c94475-9801736.html

陰りが見える日本国内のペット市場

日本は新型コロナウイルス感染症の流行を背景としたペットブームが巻き起こったものの、現在は落ち着きを見せている。

一般社団法人ペットフード協会による「2023年全国犬猫飼育実態調査」では、最新の飼育頭数は犬が684.4万頭、猫は906.9万頭と発表した。猫の飼育頭数は増加しているが、新規飼育頭数は減少。犬の飼育頭数は年々減少が続いている。東京商工リサーチによると、アフターコロナの今後はペット離れが進む可能性があるという。

今後は経済活動の再開や出社勤務の広がりで飼い主がペットと過ごす時間は減少し、ペットの世話を負担に感じたり、ペットを手放すことを検討する飼い主の増加も懸念される。環境省自然環境局の資料によると、ペットの「販売」業者数は、2019年の2万1,069業者から2021年は2万2,258業者に増えたが、2022年は2万2,165業者と減少に転じた。

(引用元:東京商工リサーチ https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1197673_1527.html

「安全」がキーワードとなる中国ペット市場で日本産を避ける動き

中国上海市にあるペットショップのペットフードコーナー。日本産はなし、国産または海外輸入品の商品が並ぶ。

ペットフードはもちろん、ケア用品や掃除用品など全てのペット向け商品に対し、消費者は安心安全を求めている。安心安全が強みの日本ブランドのペットフードは中国でも需要がある。しかし、2023年8月、東京電力福島第一原発の処理水海洋放出の影響で、日本産の商品は本当に安全なのか疑問を問う消費者が増加した。

 水や食品とは全く関係のない商品を取り扱っている日本メーカーにも迷惑電話が入るなど、一時期は日本に対する批判が酷かった。タクシーに乗車すると運転手にまず、韓国人か日本人か聞かれ、身の安全のため韓国人のふりをする友人もいた。筆者は「日本人だとわかっていたらタクシーに乗せなかった」と運転手から言われたこともある。もちろんこういった批判をする人は少数であって、筆者の周りの中国人のほとんどは友好的だ。

  現在、批判の波は落ち着いたが、日本産を避けている中国の消費者が一定層いるのも事実。家族化が進む中国のペット市場も例外ではない。更に最近では、福島第一原発の汚染水浄化装置から放射性物質を含む水が漏れた問題で中国政府から日本は批判を受けている。市民の汚染水に対する関心は薄れつつあるが、日中の歴史などの問題は深い。他の事案と連動してまたいつ強い反発が起きるかわからないため、中国でビジネスをする以上今後も注視すべきことのひとつだろう。

日本企業参入事例 家族型ペットロボットLOVOT(らぼっと)

出典:LOVOT公式Wechatアカウント

中国のペット市場が拡大している中、日本のロボットベンチャー企業GROOVE X 株式会社は、家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」の初の海外進出の場として中国上海市を選んだ。

 LOVOT(らぼっと)の由来はLOVE(愛)とROBOT(ロボット)を組み合わせている。抱き上げるとほんのり温かく、柔らかさを感じることができる。10億通り以上の生きた瞳も特徴で、自然なアイコンタクトが可能。また、全身の50個以上のセンサーと複数のコンピューターなどのハイテク技術を搭載し、反応時間0.2秒以内の極めて自然な対話ができるという。ロボットなのにまるで生き物のようなふるまいと生命感があるのがLOVOT(らぼっと)だ。本体価格69,800元(約140万円)〜78,800元(約158万円)と高額で富裕層をターゲットに販売している。

GROOVE Xは、トヨタ自動車やソフトバンクグループでエンジニアだった林要氏が2015年11月に創業。日本ではLOVOTを19年に発売した。価格は49万8800円(税込み)からとなり、月額1万円以上のサービス利用料金も必要となる。日本と同様に高額だが、「店舗のオープンでLOVOTを知り、その場で購入を即決した顧客もいた」と、GROOVE X中国法人の楊楽陽総経理は話しており、上々のスタートを切ったと言えそうだ。

(引用元:日経ビジネス https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00485/021300062/

不景気の中国で拡大するペット市場

ANNニュースによると、中国本土の証券取引所では春節の休みを終え19日から取引を再開し、主要な指標である上海総合指数は1.5%近く上昇して取引を終えた。中国市場の主要銘柄の株価は1月下旬から急落したが中国の北栄メディアは政策による刺激で辰年の株価は上向くだろうといった記事を春節期間中に発表していたとのこと。

しかし、日本のバブル崩壊の初動と類似しているとの指摘もある現在の中国。不景気で不安定なニュースが相次ぐ中、ペット市場の動向は必ず抑えておきたい中国市場の一つだ。

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