中国の菓子市場規模1.5兆元を予測 人気メーカーと今後のトレンドとは
「民以食为天(民は食をもって天となす)」という言葉があるほど、中国の長い歴史の中で「食」は基本的で最も重要なことと考えられている。町は様々な飲食店で溢れ返り人々の活気に満ちている。そして近年、子どもからお年寄りまで消費者層の幅が広いお菓子市場が成長している。健康志向の強い中国人にヘルシーおやつが人気だという。当記事では、中国で拡大しているお菓子市場と人気のお菓子ブランドについて紹介する。
中国の菓子市場規模1.5兆元(約30兆円)を予測 人気メーカーと今後のトレンドとは
著者:上海gramフェロー 米久 熊代
公開日:2022年9月26日
アジア初上陸は上海へ 有名チョコレートブランド
中国のデパートやスーパー、ローカル菓子店などにある量り売りのおやつコーナーはお馴染みの風景だ。チョコやクッキーなどの他に、中国人が愛するひまわりの種などのナッツ類、美容と健康に良いとされるナツメなどのドライフルーツ、肉松という中国人に人気で定番の甘いおやつが量り売りされている。老若男女問わず購入しており、中国人の生活におやつは欠かせないものだということが伺える。年々成長する中国のお菓子市場に、国内ブランドだけでなく海外ブランドも期待の目を向けているのだ。
カラフルで「m」の文字が印象に残る、アメリカ発チョコレートブランドM&M’sのテーマパークは世界に5店舗しかないが、その内の1店舗が中国上海市に存在する(筆者調べ)。他4店舗はアメリカのラスベガス、ニューヨーク、フロリダ、そしてイギリスのロンドンにある。M&M’sのテーマパークは2014年、アジア発となる上海へ上陸した。新型コロナウィルスが落ち着かない時期も含めオープンから8年経過した現在も、週末には家族連れや若者で混雑している。2フロアある店内は見ているだけでわくわくするたくさんの種類のチョコの計り売りや、衣類や食器、ぬいぐるみなどのグッズコーナーもあって、子どもから大人まで楽しむことができる。
中国の子どもとZ世代から人気のおやつメーカー
子どものおやつは無添加のものの人気が高まっている。その中でも飲むヨーグルトや果物ピューレは中国人ママからよくおすすめされる商品だ。低糖で塩分が少ないため小さい子どもの体にも負担をかけないし、高タンパク質、栄養価の高いりんごなどの果物が使用されているものは子どもの成長を補助してくれるおやつとなっている。飲むヨーグルトや果物ピューレは、子どもの月齢が低いうちから与えることができ、子どもが成長して味覚が変わっても美味しく飲み続けられるのでリピート購入する親が多い。輸入製品だと「good gout」「小皮酸奶」「艾拉厨房」、国内ブランドだと「方广」「簡愛」が無添加・高品質で、安心して子どもに与えることができると中国人ママの間では有名だ。
健康志向の強いZ世代には、低カロリー・低脂肪・高タンパク、ヘルシーで小腹を満たしてくれるナッツやドライフルーツ、ビーフジャーキー・ポークなどの干し肉などが人気だ。「三只松鼠」「良品铺子」「百草味」「来伊份」「盐津铺子」は特に人気のある菓子ブランドだ。また、近年はスパイシーなおやつの需要比率が高まっているという。中国の菓子老舗ブランド「卫龙」が販売する「辣条(ラーティオ)」というおやつは、不思議な食感とスパイスがたっぷり付いた甘辛い味が病みつきになってしまうと大ヒット。他ブランドも辣条を販売しているが、中国人の友人曰く「卫龙」が最も有名なメーカーだという。辣条は低脂肪スナックとしても中国のSNSで度々紹介されている。見た目の美しさも気にするZ世代や、996勤務で深夜の時間に小腹を満たしたい若者にとって比較的罪悪感なく食べられる定番おやつになっている。しかし、河南省では辣条が食品添加物規制品に認定されていて、「健康」という意味では疑問が残る(筆者意見)。
中国のスナック菓子市場 高級路線から舵を切るか
中国経済の急速な発展に伴い、一人当たりの可処分所得が増加している。現在、お菓子は人々の日常的な消費財のひとつとなっており、消費者のお菓子の種類と品質に対する要求も高まっている。中国のお菓子市場規模が2022年には1兆5000億元を超えると予測。国内のスナック菓子の販売チャネルは、オフラインチャネルが依然として主流となっている。中でも、スナック菓子店やスーパーマーケット、コンビニエンスストアなどの販売チャネルが全体の83%を占め、オンラインチャネルは13%にとどまっている。(引用:中国食品网 http://www.cnfoodnet.com/index.php?c=show&id=5974)
消費者は以前よりも品質の良いものを求める傾向にあり、直近2年間で高級スナック菓子の市場は上昇傾向がみられる。「2020 Tmallスナック菓子市場分析報告書(※)」によると2020年高級スナック菓子売上高は前年比46%増、平均月間売上は1億元(17億円)に達している。こうした流れを受け、スナック菓子業界では高価格・高性能・高品質志向を求めるハイエンド化がトレンドとなっている。
(引用:FoodClip https://foodclip.cookpad.com/11415/)
高度経済成長期に生まれ、たくさんのものに囲まれ豊かな時代に育ったZ世代は、高単価でも本当に良いもので自分の価値観にあった商品を購入する傾向にある。化粧品やヘアケアなど、様々な業界でプレミアム商品の需要が高くなり高級路線をいく中国市場だが、近頃のおやつに関しては「お得」な商品も注目を浴びている。安価で手に入る「切り落としおやつ」に人気が集まっているという。
切り落とし食品は実際どれほど人気があるのか。データを見ると、今年第1四半期(1-3月)だけで、ECプラットフォームの中では売り上げが前年同期比1749.23%増の2000万元(約4億円)に達したところがあり、10万元(約200万円)を超えた企業はざらにある。
(引用:人民網 http://j.people.com.cn/n3/2022/0728/c94476-10128565.html)
中国では食べきれない量の料理を提供して客をもてなす文化があるが、食品ロスが深刻な問題であった。中国政府は大量の食べ残しや大食い動画の配信など、食品ロスに繋がる行動に対し規制をかけている。国を挙げて食品ロス対策に取り組んでいることは、切り落としおやつに追い風となっていると予測する。
オムニチャンネル・健康志向・食品ロスがキーワードとなるか
中国の菓子市場はまだオフラインが主流だが、筆者が住むマンションや友人の小区でもWechatのミニプログラムを利用した地域団体購入の案内がグループチャットを通して頻繁にある。他にもSNSやECサイトなど購入する時間に縛られることのないメディアを利用して購入できるオムニチャンネルの統合段階が進んでいると現地メディアは伝えた。
また、中国ではヘルシーで地球にやさしいことが若年層から好感を得るなどして、植物性ミルク市場も拡大している。今後も健康志向ブームの熱は続くと予測され、お菓子業界でもヘルシーな商品に人気が集まるだろう。高級路線から舵を切り、お得で無駄の出ない切り落としおやつが今後のトレンドとなるのか?中国の巨大市場を今後も注視したい。