シンガポール インフレ率は上昇傾向が継続
シンガポールの消費者物価指数は、8月に3.4%上昇し、年頭に比べるとやや鈍化したものの引き続き上昇傾向にあることが、9月25日に速報で発表されました。
シンガポール金融庁と貿易産業省は、この数カ月の結果を受けて、年間インフレ率の予測を4.5〜5.5%に下方修正しました。
今回の記事は、日本同様に、食料品など生活に直結している部門での物価の上昇が続いているシンガポールの現状について解説します。
シンガポール インフレ率は上昇傾向が継続
著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon
公開日:2023年 11月10日
インフレとの厳しい闘い
シンガポール中央銀行は、インフレ問題は当面の間は継続すると見ており、短期的には経済成長も鈍化する見通しで、経済がすでに景気後退に陥っているという厳しい経済評価を発表しています。
また、シンガポール金融庁も、2023年の総合的なインフレ予測を下方修正したにもかかわらず、消費者物価の上昇との戦いの勝利には程遠いと強調しています。
貿易都市国家の宿命
世界各国の貿易依存度を比較した統計によると、2021年のランキングでシンガポールは2位、依存率は230.94%となっています。ちなみに1位は香港で363.59%、3位はベトナムの230.01%となっています。
また、国土が東京都の同程度の面積と小さいことから食料自給率は非常に低く、食糧のおよそ90%を輸入に依存しています。
以前この記事でも紹介致しましたが、隣国マレーシアからの鶏肉の輸入がコロナにより途絶えた時は大変な騒ぎになり、価格も一気に上がりました。
国土も小さく、食料をはじめさまざまな生活必需品(なんと飲料水までも!)を輸入に頼っているシンガポールにとっては、国外からの輸入価格の変動は、まさに死命を決していると言っても過言ではありません。
国民食のチキンライスも…
マレーシアからの鶏肉の輸入が途絶えた時、シンガポールの国民食でソウルフードである「チキンライス」の危機について紹介しました。
先日、Bloombergで、シンガポールで年金暮らしをしている老父の話が紹介されていました。
彼は、少しでも安い食事を求めて昼休みに屋台街に向かうのが習慣でしたが、現在は以前よりもより真剣に安い食事を探さなければならなくなった、と話しています。
それは、数年前には3シンガポールドル(約330円)程度で食べられたチキンライスが、今では最低でも4シンガポールドル(約440円)以上するからです。
今また「チキンライス」に危機が訪れようとしています。
屋台料理にもインフレの波が
あらゆる料理を低価格で提供して国民の食を支えているホーカー料理が、この2年間で約12%も値上がりしています。
シンガポールは、世界の都市と比べても生活費が非常に高い都市ですが、政府の管理により、ホーカーの料理の価格と、MRTやバスといった公共交通機関の価格は比較的安く抑えられています。
住宅についても、HDBと呼ばれる国が管理する集合住宅は年金を利用して購入が可能なため、年金でも何とか生活できており、国民生活の「セーフティーネット」と呼ばれていましたが、今、危機にさらされているのです。
厳しいやりくりが続く
物価上昇の影響を抑えるため、政府は約1,500億円の支援策を実施しています。
しかし、2024年の1月にはすでに物品サービス税 (GST) が9%に引き上げられることが決まっており、それにより、物価高の影響がさらに厳しくなり、経済の成長も鈍化することが予測されています。
国民にとっては、いましばらくは相当に厳しい家計のやりくりが続きそうです。