イタリア人の心を癒す注目のマリモ
マリモといえば阿寒湖の天然記念物として日本人にはおなじみだ。そのマリモがイタリア人を魅了している。実際にインテリアショップなどでも大量陳列して販売されるほど、イタリアでマリモ熱が高まっている。
イタリア人の心を癒す注目のマリモ
著者:イタリアgram fellow 伊田里アネ
公開日:2023年6月28日
テラリウムが生み出す緑の小宇宙
パンデミック期は誰しもが自宅待機を余儀なくされ、ストレスフルな生活を送ったことだろう。イタリアはそのコロナの最初の犠牲国だったのではなかろうか。渦中は外出の禁止制限はとても厳しく、買い物は家族の1人しかいけない、車も2-3名までの乗車など、細かい規制だらけだった。そのストレスフルな生活の中で注目されたのが、手に取れる自然だ。
そこで注目されているのがガラス瓶に入った緑の球体が印象的なマリモだ。
イタリアでは「MARIMO」として販売されている。
このようにガラス瓶に入った観葉植物としても、テラリウムとしても人気がある。
このテラリウムは、まさに手に取れる自然の小宇宙を象徴するとも言われる。
マリモだけでない、日本発信のグリーンな癒し
盆栽は「BONSAI」として海外の人にも親しまれる、日本が生み出した植栽アートだと言えよう。そのスタイルは各国の表現があるとしても、根強いファンが多い。イタリアでもれなく盆栽は、植物や花の展示会やイベントでは必須コーナーになっている。そしてイタリア各州にある盆栽サークルが賑わっていることからもわかるよう、イタリアの盆栽ファンは日本のそれと同じくらいに支持層が厚い。
日本発である苔玉も「KOKEDAMA」として人気を集めている。
Z世代がテラリウムに魅了される理由
ステファノ・マンクーゾ著「植物は”知性”をもっている」(NHK出版発行)は、日本語にも翻訳されて話題になるほど人気が高い著書である。
地球上の95%は植物で残り5%が動物と考え、人類が誕生する前から植物が存在していたという考え方がイタリア人にあるとすれば、自然という植物と共存していることがわかる。
イタリアではガーデニングなどの緑に関する趣味を持つ人口が増えており、2019年から2020年においては1600万人から1900万人にも増加し、2021年は1700万人の増加が見込まれていた。2023年の現在も、あらゆるシーンにおいて人が自然を愛でる環境を身近なものとして、安定して増加していくと見られている。
なにもガーデニングに庭が必須なわけではない。バルコニーもいらない。
テーブルにテラリウムがあれば、もうすでに自分のガーデニングなのだ。
そして盆栽、苔玉、マリモ。これらは高齢者や定年後の楽しみというようなものでもない。
最新の技術やアイデアとともに、気軽に手に取って展開できるガーデニングのようなテラリウムは、アンチストレス対策としても人気が高く、その支持層はZ世代からミレニアム世代(18歳から35歳)であるという。少なくともアメリカでは30%の支持層がこの世代であるというから、結構分厚い。
この支持層であるZ世代からミレニアム世代は「ナルシストなエコロジスト」と例えられるともいう。というのは、美的センスから持続可能性の観点で緑を身近に取り入れるというものであり、外に解放する自然というよりも、共存として手の内にある自然を愛するという傾向性からであろう。
イタリアでマリモは「永遠の愛の象徴」と意味し、その存在は平和的で愛情深い。
間違っても本場阿寒湖のアイヌ語で「トラサンペ(海の化け物)」と言われていたなどとは、イタリアではなかなか紹介できない。
◇参考資料:Design & Giardino – ANSA.it
https://www.ansa.it/canale_lifestyle/notizie/design_giardino/2022/11/30/alghe-da-compagnia-e-microcosmi-vegetali-il-giardinaggio-anti-stress_b66fafdd-db78-4f80-acfc-c815060bfbbd.html