成長市場の要素しかない!イタリア政府の助成金がもたらした新たな移動手段と観光スタイル!
欧州議会は、2024年を欧州自転車年(European Year of Cycling in 2024) と制定した。
自転車は万能な移動手段であるという認識のもと、自転車で移動する人々全てに快適なように、2030年までには自転車道路を2倍にするという計画もある。27カ国が加盟する欧州連合。イタリアもその一員である。パンデミックが助長要素となり、イタリアでも自転車所有も高まっている。
そこで注目されているのが、脱炭素とSDGs行動を兼ね添えたサイクルツーリズムだ。
成長市場の要素しかない!イタリアで人気が高まるサイクルツーリズム
著者:イタリアgram fellow 伊田里アネ
公開日:2023年3月7日
- 日本のセブン銀行 マレーシアに海外グループ会社を設立
- コスパ重視の中国で割高な日本料理が人気の理由とは
- ドナルド・トランプ前大統領圧勝!米国大統領選挙|海外の反応
- シンガポールを拠点とするリゾートホテルグループ 日本初進出
イタリアの自転車事情
パンデミック時からイタリアで伸びているのが自転車の販売台数だ。
イタリアの二輪車協会ANCMAのFocus2Rの報告によると、2021年には190万台の自転車が販売され、そのうち電動自転車は29万5,000台であるという。電動自転車の販売台数は内5%の増加であるとされる。そして現在イタリアでは都市部グリーン化に移行させるにあたり、電動アシストの自転車用の新しい充電ポイントを設置する地方自治体も増えてきている。
この成長の背景には、パンデミック時に投資された移動手段への助成金がある。イタリアでは2020年に、大気汚染や二酸化炭素の排出を削減するために、自転車や電動自転車の購入負担を政府で行った。助成内容は、一人一台の制限で、購入額の60%を政府が負担するというものだ。額にしておよそ500ユーロ(約7万円)が負担されることとなった。
(参考資料:https://www.ancma.news/mobilita-urbana-focus2r-due-ruote-sempre-piu-protagoniste/ )
観光大国イタリアだから注目したいサイクルツーリズム
自転車を保有しやすくなった背景と、パンデミックが自転車での行動を加速させたのか、観光都市に限らず、自然環境なども楽しめる場所へ自転車で旅するサイクルツーリズムを楽しむ人が増えている。
イタリアにはサイクルツーリズムを楽しむ人が3,100万人おり、その経済効果だけでも40億ユーロ(約5600億円)あるとされている。
イタリアに限らず、欧州の電車には自転車も一緒に運べる車両がある。
自転車を片手に電車に乗っての旅が、ちょっと意識が高いようでありながら、気軽に行えるのも人気の一因だろう。
サイクルツーリズムの魅力は、自転車に乗って自分の好きなところへ赴きその目的地の自然を楽しむだけでなく、ローカルフードやお土産品、宿泊なども同時に求めることができる。
目的地に彼らが求める非日常があれば、ガソリンの値段を考えず、駐車場にも悩まず、二酸化炭素の排出ゼロの自転車のペダルを漕いで向かうだけである。
サイクルツーリズムを楽しむ人たちのプロフィール
サイクルツーリズムをする人は、ミレニアル世代の41%とX世代(30%)が主軸となっており、年齢層は比較的高めで、7割を男性が占める。Z世代はわずか10%という。
そしてこのちょっと高めの年齢層は、観光宿泊施設業界において非常に人気が高い顧客層である。その理由は、学校を卒業し社会で雇用されている状態で、良好な経済状況にあるということで、ポテンシャルの高い消費者にあたるからだ。
サイクルツーリズムを楽しむイタリア人自転車旅行者の平均消費額は95ユーロ(約13,000円)。一方で、外国人自転車旅行者は215ユーロ(約3万円)も消費するするというので、イタリア人の倍以上の金額を使っている。
一方の宿泊施設において、イタリア人は一泊平均48ユーロ(約6700円)を費やすが、外国人の場合、59ユーロ(約8300円)を費やす。
2024年、欧州自転車年へ向けたイタリアの課題
フランスやオランダなどに比べると、イタリアでの自転車の利便性はまだ少し低い。
イタリアは980億ユーロを自動車環境へ投資しているのに対し、その道路配備も含めた自転車利用環境への投資はたった10億ユーロである。
脱炭素で二酸化炭素を全く排出せず、環境にも優しいとされる自転車ではあるが、イタリア政府は2022年12月年末に、自転車の設備投資への予算をゼロにした。
しかしながら、地続きの欧州内で、イタリアは最高の休暇を楽しめる国としての定評は崩れていない。これからもますます自転車でイタリアに乗り入れてくる人々は増えてくるだろう。
陸続きの外国から自転車でイタリアへの乗り入れが増えれば、必然とその環境整備が必要になってくる。
2023年、自転車への助成金がフリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州のみで再開される。
内容は、自転車は20%の購入補助、電動自転車は30%の購入補助とし、最大300ユーロ(約4万円)が負担されるというものだ。
イタリアはその観光立国のポテンシャルでサイクルツーリズムを楽しめる環境配備を整え、必然的に地方都市のグリーン化も加速していくこととなるだろう。
* 金額のレートは1ユーロ140円で計算。