イタリアの最低賃金は存在しない?年収に大きな格差も
複合的な要因から危惧されるリセッションは避けたいと世界各国で画策されるものの、物価高、リストラ、最低賃金の底上げなど、身の回りの金銭環境の常識が変わろうとしている。
イタリアは2023年はじめに11%以上のインフレ率となり、3月になりエネルギー価格高騰が少し落ちついたが9%まで下がってきた。
これは相当高いインフレ率である。
このような状況下で、イタリアで本当に必要とされる職やその年俸がどのようなものであるかを考察したい。
イタリアで必要とされる職とその年収
著者:イタリアgram fellow 伊田里アネ
公開日:2023年4月10日
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イタリアで最低賃金を保護する法案はない
世界中で賃上げが叫ばれる昨今ではあるが、イタリアの現メローニ政権においては、最低賃金を上げるのではなく、企業への課税処置に注目したいとする。
2022年10月に欧州委員会で採択された、十分な水準の最低賃金に関する指令案が適用されても、イタリアでは法定最低賃金はなく、労使協約において労使交渉による最低賃金協約の適用を受けているため、法律が介入することはない。
イタリア人の平均年収
イタリアの労働市場と賃金を観測するジョブプライシング(JOB PRICING)は、2022年のイタリアの平均年収が29,840ユーロ(約410万円)であると報告した。
2023年も平均年収は高く見積もって3万ユーロ(約420万円)いくかいかないかであろうと計算される。
イタリア20州のうち最も年収率が高いのは、ダントツでミラノがあるロンバルディア州である。続いて北東のトレンティーノ=アルト・アディジェ州フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州、その後にイタリアの首都ローマのあるラツィオ州となる。
やはりローマから以北の北イタリアの方が年収率が高い。
未だ南北格差が激しいイタリアでは、賃金と雇用面において明確に二分化される。
イタリアの職種別に見る増減率
高水準で年収が伸びている職種は、プロフェッショナル要素も加味される医者、プロジェクトマネジャー、エンジニア、コック、そして営業代理職である。
医者については、その年収は116%上昇し月給3400ユーロ(約476,000円)である。
一方で年収が減少している職種は、介護、ベビーシッター、販売員、石工職などである。介護、ベビーシッターの年収が下がっているのはパンデミックの影響であると考えることができる。
介護士はマイナス41%の減少で、月給980ユーロ(約137,000円 )である。
プロフェッショナル要素のある職業は、中途採用ではスキルが重視される。大体5年以上の同種職歴があるのが望ましいとされ、15年以上あれば責務ある役職に就くなどで年収は高くなる。
上記のように職種や年齢層で年収は大きく異なり、格差による振り幅も大きい。
(参考記事: https://www.jobbydoo.it/stipendio)
(参考記事: https://giovani2030.it/iniziativa/dimmi-in-cosa-ti-laurei-ti-diro-quanto-guadagnerai/)
イタリアで実際に求められる職と需要
予測年収から、イタリア人の2023年平均月収は1,550ユーロ(約217,000円)と見積もることができる。プロフェッショナルな専門性のある職種の年収が高く、その一方で労働的にもハードで拘束時間が長い仕事に従事する人の年収は低いとされる。
今現在最も需要が高い職種にトラック運転手、水道職、電気職、パン職人などがあるが、夜間勤務のようなイレギュラーさ、体力的にもきついイメージから避けられがちだ。
これらの職業は薄給だと思っている人がいるかもしれないが、需要が高くプロフェッショナル要素も高いため、月給は2500ユーロ(約35万円)にもなることがある。
トラック運転手は夜間勤務や長時間拘束、休日出勤などの手当が厚いとされ、月給2100ユーロ(約29,4000円)も期待できるが、志願する人は多くない。
日々の暮らしに必要不可欠で実際に需要が高いのに、労働条件や環境から選ばれることがない職業がある。
インフレをきっかけに、様々な職種において労働価値の再評価をする時期に差し掛かっているのではなかろうか。
*当該記事のユーロ計算は2023年3月現在で1ユーロ140円で計算し、繰上げしている。