欧州医学留学の穴場:ラトビア医学部が人気急上昇の理由
グローバル化が進む医療界で、ヨーロッパの若者たちが新たな留学先として注目しているのがラトビアの医学部です。英語で学べる環境、比較的低い学費、そして自国への帰国後のキャリアパスの確立など、多くのメリットを持つラトビアの医学教育。
なぜドイツやスウェーデンなどの学生たちがこの小国で医学を学ぶのか、その理由と魅力に迫ります。国際的な医療人材を目指す方々必見の情報をお届けします。
なぜラトビアへ?多国籍の医学生たち
著者:ラトビアgram fellow さえきあき
公開日:2024年9月2日
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ラトビアの医学部の特徴
ラトビアには複数の大学があるが、その中で医学部を持つものは首都のリガには2校ある。
University of LatviaとRīga Stradiņš University。この2つの大学には医学部が設置されており、講義は全て英語で行われる。学費は日本の私立理系学部と同じくらいの金額で、ラトビア国民であるかEU市民であるか等に関わらず、全員等しく学費の納入を求められる。
ちなみに、医学部に限らずラトビアの大学は学費無料というところはなく、無料となるのは成績上位者のみである。そしてその対象者は成績によって学期ごとにローテーションするため、学費無料を維持するためには気が抜けないのだ。
なぜヨーロッパ中から学生が?
冒頭のなぜドイツやスウェーデン、ノルウェーから人が集まるかという部分に触れる。これらの国はたいていの場合、大学も学費無料でその対象に医学部ももちろん含まれている。その好条件を蹴ってまでラトビアの医学部にいるということはそれなりの理由があるのだ。以下数点にわたって理由を挙げる。
① 国内医学部の熾烈な競争
例としてスウェーデンの医学部入試を見てみる。まず高校の成績が必要で、特定の理系科目において悪い成績がついているとその時点で足切りに合ってしまう。そしてHögskoleprovetと呼ばれる学力テストを受け、その両方の結果から合格判定がなされる。現地語のスウェーデン語が流暢なことはもちろん、英語も高いレベルであることも合格には必須要素となっている。
ドイツでも似たような方法で入試が行われており、高校のいい成績が最低条件で、そのレベルは日本でいうとほぼ全教科5を取るくらいだという。つまり、医師になりたいと決意するのが遅ければ学校の成績を盛り返すことが難しくなり、結果的に国内医学部はあきらめざるを得ない状況になるのだ。
ラトビアの医学部は受験システムが異なる。いくつか書類を提出することに変わりはないが、筆記試験がなく学校の成績が大きなウェイトを占める。英語、生物学または化学、数学、物理学の最終成績が最低70%あると大学の示す要件に合致する。ドイツやスウェーデンでオール5を取る努力をしていた学生にしてみれば、70%は達成できて当然くらいのものだろう。国内の医学部進学が無理だと判断した学生たちにとって、ラトビアの医学部は最後の砦的存在なのだろう。
② 英語のみで卒業可能
ドイツやスウェーデンの医学部は入学要件に流暢な現地語を課すのに対し、ラトビアの医学部はラトビア語を要件に課していない。国内で実習を行うに当たり勉強しないといけない日が来るかもしれないが、それは入学後の話である。英語だけでいい、ということは受験のハードルを格段に下げる。
③ 医師として自国に戻り働くことが可能
医師免許は他国においても同じように機能する。いくつかの手続きは必要であるが、自国に戻って研修を積みそこで医師として働く生徒が多いようだ。筆者のルームメイトのひとりがドイツ人医学生なのだが、次の半年間の実習をドイツに戻って行うことに決めた、と言っていた。やはり小さい国で経済規模も小さいため、卒後そのままラトビアで医師となる人は稀で、みな自国に帰って働けることからラトビアを選んでいるようだった。
これら3つの理由に加え、生活費・学費どちらも高すぎないことで、外国籍の医学生をたくさん呼び込んでいる。
まとめ
ラトビアの医学部はヨーロッパ中の医学生にとって魅力的な選択肢となっている。日本人の海外医学部の出願先として人気なのはハンガリーやチェコなどの東欧諸国であるが、全て英語でプログラムを終えることができ学費もそこまで高くないため、新たな留学先候補として機能するかもしれない。現に、EU内の他国からたくさんの若者が将来のためにラトビアで勉強に励んでいる。国立医学部がどこの国においても学校の勉強だけでは不十分になっている昨今、本質である学校成績に重きを置いて入試を行うラトビアの医学部は、塾に頼らない学習をしてきた優秀な学生を集めることが可能だろう。
◇Riga Stradins University:
https://www.rsu.lv/en/study-here/admissions/general-requirements-studies-english
◇Nordic Labour Journal:
http://www.nordiclabourjournal.org/i-fokus/in-focus-2023/theme-nordic-cooperation-in-a-new-epoch/article.2023-08-14.3029634696