コンテナ船2~3日待ち!シンガポール港の混雑が示す世界経済の現状
世界第2位のコンテナ港であるシンガポール港が、コロナ禍以来最悪の混雑に直面している。船舶ルートの変更や世界的な港湾混雑の影響を受け、通常1日以内の接岸待ち時間が2~3日に延長。この状況が世界の物流にどのような影響を与えるのか。
歴史的にハブ港として発展してきたシンガポール港の現状と課題、そして将来の展望を解説。
遅延に悩まされているシンガポール港
著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon
公開日:2024年 8月30日
船舶ルートの変更
今回のシンガポール港の混雑はコロナ禍の物流の停止とは違い、多くの船舶が紅海を避けるルートである、アフリカ大陸を大きくまわる長距離の航行ルートを選択せざるを得ない状況です。
航行日程に混乱を与え、寄港地が減り、長期化するにしたがって世界の海上輸送が大きく混乱しています。
世界の港湾に大きな影響
世界の港湾の混雑は1年半ぶりに非常に高い水準に達しています。海事データ会社の発表によると、停泊待ちの船舶の実に60%がアジアに位置していてるといいます。
多くの小売業や製造業などの消費者向けの企業は、クリスマスや年末商戦を見据えて在庫を増やそうとしているため、寄港地の確保や運賃の急激な高騰、そしてコロナ禍以来継続しているコンテナ不足と格闘しなければならない状況に陥っています。
シンガポール港に大きな負担が
シンガポール港は世界第2位のコンテナ港で、東西を結ぶ非常に重要なハブ港です。
航行ルートの変更で寄港地の選択が減り、シンガポール港のような積み替えが可能な大きなハブでは、大量の貨物を一度に積み下ろし、最終の寄港地に向けて別の船に貨物を積み替える作業が急激に増え、非常に深刻な状況になっています。
シンガポールの海事港湾局の発表では、5月末時点でコンテナ船が接岸するまでの平均的な待ち時間は、通常は1日程度のところ2~3日かかっており、最長では1週間かかる場合もあるようです。そのため一部の船舶はシンガポールでの接岸を断念し、近隣のマレーシアのジョホールの港などがバックアップに回っているそうです。
歴史的にハブ港のシンガポール
シンガポール港が世界を代表する物流のハブとなった背景には、さまざまな要因があります。
➀ 地理的優位性
シンガポールはマラッカ海峡の入口に位置しており、アジアとヨーロッパ・中東・アフリカを結ぶ主要な海上航路の交差点にあります。船舶の中継地点として理想的な場所となっています。
② イギリスの植民地時代
1819年、イギリスのラッフルズがシンガポールを商業港として設立しました。これによりシンガポールは、イギリスの東アジア貿易の重要な拠点となりました。
急速な経済成長を遂げる
急激な経済発展を遂げたシンガポールは、港湾や空港などのインフラに巨額の投資を先行して行いました。その結果シンガポール港は世界で最も効率的な港となり、その後も自動化ターミナルの導入など最新の技術を積極的に取り入れています。
また、チャンギ国際空港という非常に優れた陸上輸送ネットワークを持ち、世界の主要な貨物ハブのひとつとして機能しています。
このようなインフラの整備がシンガポールの世界の物流ハブとしての地位を支えています。
世界1を目指す
シンガポールはあらゆる分野で目標を常に世界1においています。
シンガポール港の発展における次の重要な計画は、トゥアス地域における巨大港の拡張プロジェクトです。2040年までに完成する予定で、完成すれば世界最大のコンテナターミナルとなる予定です。