幸福の秘密は”日照時間”? |幸福度ランキングの上位はなぜ北欧諸国が多いのか
国連から毎年ランキング形式でレポートされる「国別幸福度ランキング」が今年も発表された。フィンランドは7年連続で1位に輝き、他の北欧諸国も軒並み高順位に落ち着いた。毎年なぜ北欧諸国が上位陣を占めるのか。その理由を日照時間という視点から探っていく。
フィンランド7年連続首位の理由| 国連幸福度調査が見落とした”太陽の光”
著者:エストニアgram fellow さえきあき
公開日:2024年4月20日
- ドナルド・トランプ前大統領圧勝!米国大統領選挙|海外の反応
- 大谷選手の活躍と初のワールドシリーズ制覇!2024ワールドシリーズ|海外の反応
- 早くも衆院解散!石破茂新首相誕生|海外の反応
- 大谷翔平 史上初の50本塁打50盗塁達成!MLB界に衝撃走る|海外の反応
2024年の幸福度ランキングの各国順位
2024年の第1位はフィンランド。これで7年連続の1位となった。2位はデンマーク、3位アイスランド、4位スウェーデンと続く。ちなみに日本は51位である。
前年度までと異なり、今年は30歳以下のみの若い世代と60歳以上のお年寄り世代をわけたランキングも発表された。若い世代のランキングでは1位はリトアニア、2位イスラエル、3位セルビア、と全体ランキングとは少し異なる結果になっている。
Finland 🇫🇮 tops the overall rankings for a seventh successive year but, for the first time, our researchers have also ranked countries by generation.
— World Happiness Report (@HappinessRpt) 2024年3月20日
Lithuania 🇱🇹 is the happiest nation for the under-30s, while Denmark 🇩🇰 tops the table for those over 60.
🧵2/16 | #WHR2024 pic.twitter.com/emmX7N3HG5
幸福度ランキングはどのように作られるのか
World Happiness Reportという組織が毎年行っていて、回答者に自分にとって可能な限り最高の人生を10、最悪の人生を0として数字を挙げてもらい、それに基づいて国としての幸福度を算出する、という調査だ。調査方法からわかる通り、回答者の主観から作られるランキングで、悲観的な人が多ければ数値が小さく、楽観的な人が多ければ上位にランクインしやすくなるという、国民性も十分関係する調査である。
幸福度ランキングは個人の感覚をもとにしたアンケートであるため、絶対的な理由、というものは存在しない。よく北欧諸国が上位にランクインするのは質の高い教育や手厚い社会保障のおかげ、と説明されるがこれは調査が出揃った後に行われた推測の範囲の話だ。しかも、世界から称賛されてきたフィンランドの教育システムは、政府が直接「失敗だった」と近年になって資料を発表したため、社会制度がすべての理由ではなさそうだ。
北欧の日照時間
では、それ以外の理由は何だろうか。北欧とその周辺に住む外国人は口をそろえて「日照時間が幸福度におおいに関係していると思う」と言う。フィンランドとほぼ同じ気候のエストニアに住む筆者もそれを強く感じている。
北欧の冬は寒く、暗くて長い。冬の間、現地人は家からできるだけ出ずに過ごすので寒さに関してのダメージはあまりない。しかし、暗いのはどうすることもできない問題だ。
冬の間は朝起きても暗い、通勤中も暗い、始業時間でも暗い、そしてやっと昼頃に太陽が3時間ほど見える。それを最後にまた暗い一日がはじまる。体感として午前11時から午後3時くらいが日の光を感じる時間帯である。しかし、この時間帯に届く光でさえ厚い雲から差し込むうすぼんやりとしたもので、光が届いているのかいないのかはっきりしない。この状態が11月から年をまたいで翌年2月までは少なくとも続くのだ。
ヘルシンキの月別日の出・日の入り時間を見ると11月の日の出時間が午前8:17、日の入りが午後3:51 だ。12月には午前9:16 、午後3:15 となり日照時間は6時間となる。
そのため、太陽が少し顔を出すだけでもありがたく感じるようになる。冬の鬱々とした時間を知っているからこそ、嬉しい=幸せ、と感じる事柄が日常の些細なところに存在している。だからこそ自己申告制の幸福度調査で高順位になるのではないか、ということだ。
少ない日照時間の弊害
日照時間が短く太陽の光がなかなか得られない冬があることによって、幸せを感じるハードルが低くなっている、と前項で述べた。そして、日が当たらないことから冬の間は健康被害が出る。
人間であれば一時的に気分が落ち込むことはあるが、日照時間が少ない北欧ではそれが多く見られ、重症化すると季節性感情障害と呼ばれる。これまでに北欧住民の約6.5%が季節性感情障害と診断されたことがあると発表された。
重症までいかない、専門家に助けを求めるほどではない軽い症状の人まで含めると、その数ははるかに大きくなると推測される。
季節性感情障害はたいていの場合秋・冬に起こるもので、日照時間が短くなることが脳内の化学変化を引き起こし、うつ病の症状を引き起こすと考えられている。北欧の夏は冬とはうってかわって日が沈まないといえるほど明るいため、その落差で症状が出やすいと考えられる。
まとめ
毎年発表される国別幸福度ランキングの上位に北欧諸国がランクインするのは、社会制度等だけではなく日照時間が関与しているのではないかと考えられる。冬の短い日照時間と鬱々とした天気は住民の心を曇らせるが、その厳しい気候環境が去ったときの感動や嬉しさは人一倍になる。日常の些細なことに幸福を感じることができる環境にいるからこそ、自身で評価する幸福度ランキングというレポートにおいて高順位を北欧諸国がキープできているのではないだろうか。しかし、最初にも述べたように幸福度ランキングはアンケート回答者の主観によるため、国民性の影響もあるだろう。来年度のランキングの行方にも目が離せない。