スペインのサバデル銀行とBBVAが合併へ?

スペイン

スペインのBanco Sabadell(サバデル銀行)が、BBVA (バンコ・ビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア銀行)との合併交渉を始める方向だ。BBVAはサバデルに合併交渉の開始を提案し、株式交換により統合を目指している。もし成立すれば、サバデル株主は統合後企業の16%株を保有し、両行の資産は合わせて1兆ユーロを超え、時価総額は約700億ユーロと、同国の銀行最大手サンタンデール銀行に匹敵することになる。スペインの新たな巨大銀行が誕生する可能性はあるのだろうか?

スペインのサバデル銀行とBBVAが合併へ?

   著者:スペインgramフェロー 北田ミヤ
公開日:2024年7月22日

過去の経緯

2020年11月にも、特にスペイン経済の不確実性や低金利環境に対応するため、合併交渉を行った経緯がある。両銀行の合併によってスペイン国内での地位を強化し、より大規模な国際的な銀行としての競争力を高めることが狙いであったが、同月下旬には交渉が中断された。主な理由は合併比率や経営統合後の戦略に関する意見の相違とされている。

そもそも欧州の銀行業界では敵対的株式公開買い付けは稀であり、最近の例としては、2020年にIntesaがUBI Bancaの買収に成功したことが挙げられる。

BBVAの主張

今回、Banco Sabadellの株主に提示された取引総額は130億ドル以上になる。

しかし、この提案は取締役会によってすぐに拒否された。理事会は「一方的な入札は会社の潜在能力と成長見通しを大幅に過小評価している」とその理由を説明した。

一方、BBVAは提案は約22%のスペインのローン市場シェアを誇る”ヨーロッパで最高の銀行のひとつ”になると主張している。

BBVA会長のカルロス・トーレス・ビラ氏は「我々は、Banco Sabadellの株主に、我々の最も重要な市場の1つで、より大きな規模を持つ銀行を作るという非常に魅力的な提案を提示している」「両社が協力することで、当社が事業を展開する地域により大きなプラスの影響を与え、スペインでは年間50億ユーロの融資能力が増すだろう」と述べた。

写真:BBVA

規制機関や政府の承認次第

提案された取引の行方は、Banco Sabadellの株主の承認と、スペイン市場競争規制当局(CNMC)や英国の健全性規制庁などの規制機関からの承認にかかっている。BBVAは、税引き前で8億5000万ユーロのコスト削減をもたらすと見積もっており、サバデルの株主が新たに合併した金融機関の16%の株式を保有することになると述べている。

しかし、提案された合併はスペイン政府が買収に反対しており、つまずきに直面している可能性もある。現地メディアではスペインの労働大臣であるヨランダ・ディアスが懸念を表明したと報じられている。スペインの経済大臣であるカルロス・クエルポも、インタビューで、提案された協定を「潜在的に損害を与える」と否定的な意見を述べた。

多方面からの規制機関から承認されれば、取引は今後6カ月から8ヶ月で完了する見込みで、BBVAは両社の技術統合には12ヶ月から18ヶ月かかると予想している。

写真:スペイン最大のサンタンデール銀行

まとめ

BBVAは、スペインの銀行の中でサンタンデールに次ぐ1兆ユーロを超える顧客と資産を持つ貸し手の創出を目指している。また、合併後の事業体は、CaixaBank(カイシャバンク)の5,740億ユーロ強に対し、スペイン国内の資産は6,250億ユーロ以上で、スペイン国内最大の貸し手となる。

前述のとおり、2020年、両行は合併交渉を打ち切ったという経緯もあり、今回の合併交渉も現時点では先行き不透明だが、スペイン最大の巨大銀行が生まれることになるのか、今後の動向が注目される。

◇BBVA makes $13bn hostile takeover bid for Banco Sabadell – FinTech Futures: Fintech news:
https://www.fintechfutures.com/2024/05/bbva-makes-13bn-hostile-takeover-bid-for-banco-sabadell/

◇Spain’s BBVA announces $13 billion hostile takeover bid for Sabadell (cnbc.com)
https://www.cnbc.com/2024/05/09/spains-bbva-announces-13-billion-hostile-takeover-bid-for-sabadell.html

北田ミヤ

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スペイン在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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