ヨーロッパを席巻するビンテージブランド Vinokilo

スペイン

古着市場は近年急速に成長しており、持続可能なファッションの一環として世界的に注目されている。VinokiloはEU全域でサステナビリティのセンセーションを巻き起こしたヴィンテージブランドで、ヨーロッパのさまざまな都市でビンテージ衣料品のキロ販売イベントを開催しており、ヴィンテージの生活様式をヨーロッパ中に広めることに成功した。

販売業のみにとどまらず、不要な服を持参することも、新しい服を見つけることもでき、無限の衣類のライフサイクルを通して人々の生涯の衣料品パートナーになることを目指している。

本記事では、人々の古着に対する向き合い方を変えることを使命としてヨーロッパを席巻しているVinokiloについてお伝えする。

ヨーロッパを席巻するビンテージブランド Vinokilo

   著者:スペインgramフェロー 北田ミヤ
公開日:2024年6月24日

Vinokiloとは?

インスタグラムで280Kのフォロワーを誇るVinokiloは、2016年にドイツで始まったビンテージファッションのキロセールイベントを開催するブランドだ。ミッションは、衣服にセカンドライフを与えること。小さなアパートの一室でスタートした小規模なイベントであったが次第にその規模は大きくなり、現在ではヨーロッパ全土で開催されていてヨーロッパのビンテージファッション界を牽引している。

イベントでは高品質のビンテージアイテムが1キロ単位で販売され、服に値札は無く、会場内にあるはかりで服の重さを量り値段を確認する。ポップアップイベントは、古着販売のみならず、美味しい食事やワイン、音楽など洗練された雰囲気で訪れた人々を楽しませる工夫がなされ、講演に参加したり、地元のFood屋台、アートなど、ショッピング体験だけでなく持続可能なファッションとローカルなカルチャーを堪能できる魅力的なイベントとなっている。

VinokiloのマーケティングディレクターであるNefeli Mandilariは、「ファストファッションと服を消費する現在の状態は、文化的態度というよりも生態学的災害です。」

「既存の素材を再利用するというコンセプトほど、人類と地球の両方の観点から、現代的で現代に合致するものはありません。」と話し、衣服の過剰生産と、一歩下がってニーズを再評価する必要性を指摘している。

“Another Man’s trash is another Man’s treasure(別の男のゴミは別の男の宝物)”という信条に従ってヴィンテージファッションをクールに、また親しみやすく楽しいものにし、服に世代を超えてストーリーを語らせたいという。

2022年、Vinokiloは従業員の福利厚生や慈善寄付、サプライチェーンの慣行や投入資材に至るまで、高い社会的および環境的パフォーマンスを実証し、説明責任、透明性を満たしていることを示す「B Corp」の認定を受けた。現在、人々が服を買うことも、自分の服を持参して割引を受けることもできるGive Back Barも立ち上げ、毎週のようにヨーロッパの各地でイベントを開催し精力的に活動している。

※「B Crop」はアメリカのB labが、企業や団体に対して行っている認証制度。 一度認証を受けた後も継続してレポートを提出する必要があるなど、厳しい認定基準を設けている。

(参考元:Creatives unite | Vinokilo: The vintage brand that became a sustainability sensation across EU
https://creativesunite.eu/article/vinokilo-the-vintage-brand-that-became-a-sustainability-sensation-across-eu

(参考元:B Corp Certification demonstrates a company’s entire social and environmental impact. (bcorporation.net)
https://www.bcorporation.net/en-us/certification/

若者の「中古」への意識変化

世界的に古着に対する消費者の意識は近年変化してきている。とりわけ、Z世代にとってアップサイクルされたビンテージファッションは、地球を救うのに役立っていると同時に、他とかぶらない唯一無二のデザインは自己表現のためのものでもある。単なるトレンドではなく彼らのライフスタイルになりつつあるといってもよいのかもしれない。

ミレニアル世代とZ世代の買い物客をターゲットにしたソーシャルアプリであるDepopは、ロンドン発のファッションに特化したC2C型の古着市場を牽引しているフリマアプリだ。Depopユーザーの90%が26歳未満でインスタグラムのフォロワー数は700K、3500万人以上の登録者数を抱えている。310万人のアクティブな買い手、180万人のアクティブな売り手がおり、2022年の収益は8500万ドルだった。

日本国内の調査でもZ世代の約5割以上が購買する際に環境への配慮を意識するとのデータがあるが、これほどまでにVinokiloやDepopなどが世界中の若者に支持されるのは彼らの消費の軸がエコフレンドリーな観点によるものになり、「中古」をポジティブに受け入れる意識変化によるものに他ならないのではないだろうか。若い世代のサーキュラー(循環型)を重視する消費傾向は中古販売と回収システムの発展を後押ししている。

(参考元:Depop Revenue and Usage Statistics (2024) – Business of Apps
https://www.businessofapps.com/data/depop-statistics/

(参考元:Z世代のSDGsと消費に関する意識調査 | 株式会社SHIBUYA109エンタテイメントのプレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000182.000033586.html

世界的にも古着市場は躍進中

古着市場は持続可能性と環境への意識が高まる中で世界的に急成長している。古着のオンラインECサイトを運営する米企業のThredUPによると、古着市場は2021年~2026年の5年間で倍増し、約8兆4550億円(770億ドル)にまで拡大する見込みで、2028年までには古着の世界売上高はファッション市場全体の10%を占め、約54兆円(3500億ドル)に達しCAGR12%で成長すると予測されている。

(参考元:ThredUp: Resale Grew 15x Faster than Retail in 2023 | Sustainable Brands
https://sustainablebrands.com/read/defining-the-next-economy/thredup-resale-15x-retail-2023

まとめ

ヨーロッパは長い歴史を持つ地域であり、ビンテージアイテムはその歴史的な背景や文化的要素を反映している。ビンテージファッションは希少なデザインや素材で、トレンドに縛られない自分だけのユニークなスタイルを見つけることができる。

更にビンテージアイテムを選ぶことは、環境に優しくサステナビリティを意識した選択で、特にミレニアル世代、Z世代の若者たちにとって古着を選択することはニュースタンダードになりつつある。

深刻な気候変動など我々をとりまく現代の環境が、大量消費に何も疑問を抱いていなかった人々の意識に変化をもたらし、Vinokiloのようなビンテージブランドの支持につながっていると考えられる。

北田ミヤ

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スペイン在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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