エストニアの留学生事情

エストニア

ユーロに対する円安傾向は依然続き、日本を出て海外で学びたい人にとっては厳しい状況である。米英の名門大学は目が飛び出るほど高額の授業料と生活費に手が出ないが、英語圏にこだわらず「英語で授業が受けられるコース」を探すと選択肢は広がるものだ。

エストニアもそんな国のひとつ。米英の有名大学には及ばないが、PISAのテストで世界トップレベルの学力をたたき出すエストニアの教育は関心を集めている。あまり知られていない留学地としてのエストニアについて語っていこう。

エストニアの留学生事情

著者:エストニアgram fellow さえきあき
公開日:2024年3月20日

外国人にとってのエストニアの高等教育

エストニアへの留学生のマス層は高等教育段階の大学学部、修士、博士課程に在籍する生徒たちである。欧州に位置することから、多くは交換留学で来た欧州内の生徒たちだ。彼らの多くは欧州委員会から提供される給付型奨学金を使えるので、かなりカジュアルに留学ができる。しかし、主なコースはエストニア語で開講されているため英語で学ぶ留学生は授業の選択肢が少なくなる。

一方で、欧州外(一般にthird country =第3国と呼ばれる)からの留学生もいる。エストニアの高等教育はエストニア人は無料で受けることができるが、外国人は基本的には学費を払う必要がある。しかし、日本の国公立大学と同じかそれより低い程度である。この設定は学部や教育機関によって変化する。

先に基本的には、と書いたのは、博士課程学生はこの規定からはずれるからだ。エストニアで博士課程の学生は国籍に関わらず授業料が無料なのである。学校によっては教授の補助であったり学部生向けの基礎的なクラスを教えたりすることが学位取得の要件になることもあるが、授業料がかからないのは大きなメリットだろう。

エストニアに限らず欧州(英国を除く)は博士課程は学費がかからないことが普通であり、オーストリア、ノルウェーなどは給与も与えられる。ただ、給与が出るような国に応募するには十分な実績と他の応募者に勝る何かを必要とするため、倍率が高い。

留学生の出身国

気になるのは留学生の出身国だろう。果たしてどこからエストニアに来るのか。やはり世界情勢的にウクライナが多いのか。実際のデータをもとに見ていこう。

2022/2023年度のデータによると、交換留学生の数は4873人で彼らの出身国は123か国にわたり、この総数はエストニアの大学生数の11%を占めていた。

国際学位プログラムの学生数

正規留学生は1484人だったが、前年度に比べ15%減少したそうだ。エストニアが小さな国であることを考慮すると交換留学生の数はそれほど多くないが、正規留学生の数は交換留学生の約1/4から1/3を占めている。これは、エストニアの教育を求める人々が相当数いることを示している。

エストニアで学ぶ学位取得を目指す学生のほとんどはフィンランドからの留学生で、全体の17%を占めている。他の上位10カ国は、ウクライナ(11%)、ロシア(9%)、ナイジェリア(6%)、インド(4%)、アゼルバイジャン(4%)、パキスタン、ラトビア、トルコ、アメリカ(いずれも3%)である。

外国人学位取得者数上位15カ国

日本人目線で見て意外なのはナイジェリアではないだろうか。ナイジェリアの人口はいまや2億を超え、成長著しい国のひとつとなっている。経済的にはまだ大国とは言えないが、ナイジェリアの中等教育は英語で行われているので、留学するにはもってこいな状況が揃っているのだ。そのような状況も手伝ってナイジェリアからの留学生が全体の6%を占めている。ナイジェリア人の情が深く優しい性格もあってか、大きなナイジェリアコミュニティがある。日本人の正規留学生もいるが、ランキングに入るほどの数ではない。

反対に留学生の減少傾向を国別に表したところ、減少が多かったTOP3はロシア、ラトビア、アゼルバイジャンと、それぞれ前年度より68%、35%、34%減少した。一方で留学生が増えた国はウクライナとトルコで、特にウクライナからの学生は前年度比222%増加となった。やはり昨今の世界情勢から難民の受け入れをしていたり、学費免除措置をとっていたりと柔軟な対応が増加につながっているのだろう。

まとめ

国全体の学生数の11%を占める国外からの留学生の出身国は、近隣国が多いながらも全123ヶ国と、国の規模を考えると多種多様である。エストニア政府の留学生向けのサイト「study in estonia」では各種教育機関の情報が集約されており、出願もすべてこのwebサイトを通して行えるなど、右も左もわからない外国人に対して優しいUIを提供している。

留学の目的が語学習得ではなく、特定の学びたい分野が決定している場合、金銭面でエストニア留学は非常に有益な選択だ。世界情勢が安定すれば、エストニアも留学生誘致に積極的に取り組むことが期待される。

【参考】
◇study in Estonia Slight downturn in number of international students at Estonian universities in 2022 | Study in Estonia:
https://www.studyinestonia.ee/news/international-students-2022#

◇EESTI.LIFE:
https://eesti.life/news/number-foreign-students-estonian-higher-education-institutions-has-decreased

エストニアの位置関係

さえきあき

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エストニア在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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