イタリアでの寿司ブーム、ヤマエ久野がWARAI SUSHIで成功した秘訣とは?
コープイタリアが運営するスーパーで寿司製造および販売を行っている、現地法人オリジナルジャパン。2018年、食品卸大手のヤマエ久野がイタリアのミラノのスーパーに日本食品売り場を開設した。初めて日本の会社がイタリアのスーパーに進出し、ショーケースに寿司を並べた。以前からイタリアのスーパーに寿司製造・販売コーナーは存在していたが、どれも日本のものではなかった。
ヤマエ久野が設立したオリジナルジャパンが展開しているWARAI SUSHIでは、寿司だけでなく日本の食材や調味料、酒なども直接日本から輸入して販売している。日本食が恋しくなったら、WARAI SUSHIに足を運んでみてはいかがだろうか。今回はコープイタリアで全国展開しているWARAI SUSHIを紹介する。
イタリアスーパーマーケットでSUSHI製造・販売している唯一の日本企業オリジナルジャパン
著者:イタリアgram fellow たなかさき
公開日:2023年3月4日
ヤマエ久野が設立したオリジナルジャパン
2018年2月、ヤマエ久野は現地法人オリジナルジャパンをつくり、ミラノにWARAI SUSHI1号店をオープンさせた。もともと食品の輸出入をしていたが、17年3月期の売上高3795億円のうち海外事業は数億円のみであったため、今後の会社の成長のために海外事業を拡大させることを決めた。自ら売り場の営業もおこなうことで、現地の消費者の需要や傾向をつかむことが狙いだ。
アメリカやアジアではなく、イタリアに進出したのには理由があった。まずアジアなどに比べて日本食品を販売する競合が少ないこと、そしてイタリア人が日本食に興味があること、パスタのゆで加減とそばのコシが似ているといった食の共通点が多いことが決め手になった。
コープイタリアが運営するスーパーに売り場を開設し、今後はイタリアの他のスーパーや欧州内拡大を目指す。現在イタリアでは30店舗以上展開している。
(参照元:日本経済新聞 https://www.a-commerce-inc.com/wp-content/uploads/2019/01/nikkei_OJ_digital.pdf)
イタリア人はSUSHIが大好き
イタリア人に「SUSHIは好きか?」と尋ねるとほとんどの人が「好きだ」と答える。私の知り合いのイタリア人も、よく寿司を食べに日本食レストランに行ったり、スーパーで寿司を購入すると言っていた。
シチリアで生魚を食べる習慣はあるが、筆者が住む北イタリアにはその習慣がない。そのためSUSHIはお年寄りにはあまり好まれないようだ。しかしそんなお年寄りを差し引いても、SUSHIが好きなイタリア人は多い。
一番人気のネタはサーモンアボカドロール
イタリアでいうSUSHIは巻き寿司を指すことが多く、とても人気がある。特に人気のネタはサーモンで、サーモンアボカドロールは定番だ。サーモンはイタリア料理にもよく使われ、馴染みのある魚である。そのため初めてSUSHIを食べる人はサーモンから挑戦するのだ。
サーモンを使った巻き寿司は他にもある。サーモンとアボカド、さらにフィラデルフィアチーズが入ったものである。日本にいた頃は思いもしなかったが、これがなかなか美味しい。アボカドのクリーミーな舌触りにサーモンの甘味とフィラデルフィアチーズの酸味がうまく絡み合って、絶妙でくせになる味なのだ。
イタリアのSUSHIブームは終わらない
76%のイタリア人が寿司は一年中食べたくなる食べ物だと考えている。
(引用:XXISECOLO https://www.21secolo.news/il-sushi-conquista-gli-italiani-il-76-lo-desidera-tutto-lanno/
)
デリバリーサービスDeliverooも寿司の注文が昨年から134%も伸びている、と寿司の人気を裏付けた。
(引用:XXISECOLO https://www.21secolo.news/il-sushi-conquista-gli-italiani-il-76-lo-desidera-tutto-lanno/
)
コロナ禍にデリバリーサービスを利用するイタリア人が急増したが、それに伴って寿司の人気も急増したようだ。
「イタリアにおけるサーモンの購買行動の変化と機会」が発表したデータでは、家庭外消費のポジティブな傾向が示された。特に魚料理の需要が46%、寿司の消費が38%と、日本料理に対するイタリア人の関心が確認された。
(引用:FOODWEB https://www.foodweb.it/2022/06/cresce-il-consumo-del-salmone-in-italia/
)
イタリア人のサーモン消費量は、2011年から2021年の10年間で188%増加している。イタリアにSUSHIブームがやってきて、そのブームは未だ継続しているようだ。
日本に住んでいた時は寿司を作る機会はそうなかった。しかしイタリアに来てから、もう何度寿司を作ったかわからない。イタリア人を家に招くときは寿司、誰かの家に料理を持ち寄って集まる時も寿司、いつでもどこでも寿司を持っていけば何とかなるというほど、寿司を作れば喜ばれる。
日本人による寿司を基本とした日本食を製造・販売しているWARAI SUSHI。食文化にうるさいイタリア人にとって、中国人でもタイ人でもない、日本人が寿司を作っているという事実はとても重要なのである。
まとめ
スーパーでの日本食製造・販売を開始したイタリアで唯一の日本企業オリジナルジャパンは、ヤマエ久野が自ら売り場を運営することで海外のニーズの把握を狙っている。イタリアでのSUSHIブームが続く中、こうした日本企業が今後次々と進出してくるだろう。食にこだわりと誇りを持っているイタリア人に受け入れられるためには、日本独自の繊細さと工夫が必要だ。