ウイスキーはアイルランド語!元々は薬だった
JamsonやTeelingウイスキーで有名なアイルランドのアイリッシュウイスキー。なんとウイスキー自体の発祥はアイルランドといわれている。今回は、日本のウイスキーとの違いや飲み方などの文化について比較しながら紹介していく。
ウイスキーはアイルランド語!元々は薬だった
著者:イギリスgram fellow リリーゆりか
公開日:2024年10月1日
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アイリッシュウイスキーの発祥
アイルランドといえばウイスキー。銘柄でいえば、JamsonやTeeling、ブッシュミルズなどが有名どころだろうか。日本のBarやリカー専門店でも必ず見かける。
ウイスキーの語源はアイルランド語の「uisce beatha(ウシュクベーハー)」という言葉に由来している。12世紀ごろに誕生したヨーロッパ最古の蒸留酒のひとつで、元々は修道士たちにより万能薬として使われていたそう。このウシュクベーハーは生命の水という意味である。ウイスキーは腐らないため、余った穀物の保存としても頻繁に蒸留されており、薬用や消毒、飲んで病気を治したり、娯楽としてのアルコールとしても消費されるようになって現在のウイスキー文化に至る。アイリッシュウイスキーの市場はアメリカが大きく、一時は禁酒法などの影響により蒸溜所が2軒にまで減ったが、現在は約45軒にまで復活し、アイルランド内でも大きな産業である。
(参考:【不屈のアイリッシュウイスキー】その特徴と歴史、おすすめ銘柄 | イエノミスタイル 家飲みを楽しむ人の情報サイト
https://www.ienomistyle.com/sakeguide/20220713-5828)
(参考:Irish Whiskey – The History of Irish Whiskey
https://www.thepotstill.irish/irish-whiskey-the-history-of-irish-whiskey)
(参考:Exploring parallels between the Irish and Japanese Whiskey Industries – Review of Redbreast 12 and Yamazaki 12 – The Water Of Life
Exploring parallels between the Irish and Japanese Whiskey Industries – Review of Redbreast 12 and Yamazaki 12
)
隣国スコットランド発祥のスコッチウイスキーとの違いは?
【1】原料の違い
スコッチウイスキーでは大麦を発芽させた大麦麦芽(モルト)を原料とするのに対して、アイリッシュウイスキーでは、「大麦麦芽」のほかに「未発芽の大麦」も使われている。
【2】蒸溜回数の違い
スコッチウイスキーでは2回蒸溜するのが基本。これに対してアイリッシュウイスキーは、3回蒸溜し、この蒸溜を繰り返すことで、なめらかで雑味の少ないクリアな香りや味わいが生まれる。
【3】乾燥方法の違い
製造の際、原料の大麦麦芽を乾燥させる過程がある。スコッチウイスキーでは、ピート(泥炭)の煙で燻すため独特のスモーキーフレーバーがついてくるが、アイリッシュウイスキーは基本的にピートを使わないため、大麦本来のやさしい香りと華やかな味わいをダイレクトに感じられるのが特徴。
(参考:Exploring parallels between the Irish and Japanese Whiskey Industries – Review of Redbreast 12 and Yamazaki 12 – The Water Of Life
https://thewateroflife.org/2024/05/04/exploring-parallels-between-the-irish-and-japanese-whiskey-industries-review-of-redbreast-12-and-yamazaki-12/)
ジャパニーズウイスキーの発祥
日本のウイスキーもここ数年で人気を増し、今では世界でも有名なウイスキーの地位に上り詰めている。日本へは、鎖国の終わりにペリー率いるアメリカの艦隊が徳川家に献上したことからウイスキーの歴史が始まり、1900年代の日英同盟を機にスコッチウイスキーが大量に輸入されたことから浸透。スコットランドでウイスキー蒸留を学んだ山﨑蒸溜所の創業者が、昔から名水の地であった京都山﨑に現在のサントリーの元である山﨑蒸溜所を作ったのが国内初の蒸溜所である。現在は約90軒の蒸溜所が日本中にある。
ジャパニーズウイスキーの特徴はなんといっても上品な甘さ
ジャパニーズウイスキーを熟成する際、東アジアの代表的な樹種であるミズナラの樽を他国より積極的に使っている。この樽を使うと、ハチミツのような香りが加えられる。甘さの秘密は、アルコールの一種「エタノール」にもあるといわれており、このエタノールが口の粘膜を刺激し、脳がそれを心地よいものとして認識することで「甘い」と感じるといわれ、そこに樽材由来の甘味を連想させる香りが加わることで、甘い「ジャパニーズウイスキー」ができあがるようだ。
他の特徴として、ジャパニーズウイスキーは基本スコッチウイスキーを手本としているが、スコッチウイスキーの特徴であるスモーキーな香りは日本人にあまり受けが良くないため、抑えてあることもひとつの特徴といえる。
(参考:世界に誇るジャパニーズウイスキーの魅力に迫る|たのしいお酒.jp
https://tanoshiiosake.jp/9134)
飲み方が大きく異なるアイリッシュスタイル
日本でウイスキーといえばやはり炭酸で割ったハイボールが主流であろう。
一方、アイルランドではウイスキーは基本、ストレートかロックが主流。
また、アイリッシュコーヒーとして知られる温かいカクテルも寒い冬の時期に好まれる飲み方である。
そして今回筆者が紹介したいのがホットウイスキー。ホットウイスキーは、レモンやハチミツ、シナモンを加えた温かいドリンク。風邪をこじらせた際に現地のアイルランド人に「ホットウイスキーを飲んで治してね」と言われたことがあるが、風邪やインフルエンザの時に代々受け継がれる民間療法(日本でいうお粥みたいなもの?)のようだ。これはウイスキーの発祥を知ると腑に落ちる。
もう一つのウイスキー、アイリッシュクリーム
アイルランドで有名なアイリッシュウイスキーの他に、もうひとつ、外せないのがアイリッシュクリームというリキュール。クリーム風味のウイスキーで、ベイリーズが有名どころで日本のバーでも大概取り扱いがある。
アイリッシュクリームも実は医療用として作られるようになったのが始まりで、14世紀に修道士たちがウイスキーと新鮮な乳製品をブレンドしたのがきっかけ。
信じられないかもしれないが、その主な用途は認知症の治療、記憶力の向上、皮膚の炎症を抑えることだった。現在は主にクリスマスの飲み物として浸透しており、氷を入れたロックで飲むのが主流だ。
(参考:Irish cream liqueurs: a history – Coole Swan
https://cooleswan.com/articles/irish-cream-liqueurs-a-history-of-taste/)
ジャパニーズウイスキーはアイルランドではプレミア価格
アイルランドでもジャパニーズウイスキーは手に入るが、安くても100ユーロを超えるプレミア価格で販売されている。2000年代に入って日本のウイスキーが様々な賞を受賞し、市場価値が高まったとされる。一方、日本ではアイリッシュウイスキーが他のヨーロッパ圏で買うよりもかなり安くで販売されていることに驚く。輸入の際の関税が関係しているとも聞くが、世界のアイリッシュウイスキーは日本の市場にはまだまだ少ない印象を受ける。
(参考:山崎・響・白州が超高額で売れる!異常な高騰をみせるジャパニーズウイスキーの実態 | 大黒屋 買取センター
https://kaitori.e-daikoku.com/liquor/japanesewhisky_interview.html)
まとめ
共に世界5大ウイスキーといわれるアイリッシュウイスキーとジャパニーズウイスキー。12世紀のアイルランドで医療用に使われていたのがウイスキーの始まりであり、現在もウイスキーはアイルランド人にとってとても身近な存在である。一方、ジャパニーズウイスキーはここ数年で人気を博した比較的新しいカテゴリーで、ハイボールを始めとして多くの人に受け入れられている。両者が今後、世界市場でどのような変遷を辿るのか楽しみである。