コロナ後のカナダはどうなっている?
日本では現在もコロナウイルスに対する警戒が続いているようですが、カナダでは2022年の早い時期に「もう終わった過去のできごと」「特別なものでなく、風邪やインフルエンザのような症例の一つとして今後も付き合っていく」という考え方に切り替わりました。
この記事では、コロナ後のカナダの様子を、パンデミック時との比較を交えてお届けします。
(引用元:Statistics Canada – COVID-19 in Canada: A Two-year Update on Social and Economic Impacts
https://www150.statcan.gc.ca/n1/pub/11-631-x/11-631-x2022001-eng.htm)
コロナ後のカナダはどうなっている?
著者:カナダgram fellow Murayama
公開日:2023年9月29日
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パンデミック時は?
カナダでは州ごとに法律や制度が異なるため、この記事で解説しているのは筆者の住むブリティッシュコロンビア(BC)州の様子についてです。
【ごく簡潔なタイムライン】
パンデミックが宣言された2020年3月以降、マスクの着用が義務付けられます。
パーティーやスポーツなど大人数での集まりは禁止。お菓子を配るハロウィンや、卵型チョコレートを探すイースターなどの子ども向けイベントも全て控えることが推奨されました。
バーやナイトクラブは営業停止。その他飲食店は営業時間の短縮、従業員や客同士の十分なソーシャルディスタンスをとったうえで営業。
筆者の働いているスーパーでも、当時は出勤時の体温・体調チェックシートへのサインが義務付けられていました。
ファーストフード店でソーシャルディスタンスを提示している様子。
リモートワークで対応できる仕事、学校の授業は完全リモートです。
規制が設けられてからおよそ2年後の2022年2月、BC州は規制緩和を発表します。バーやナイトクラブの営業が再開し、マスク着用のうえで結婚式やパーティーなどの大人数での集まりも許可されました。
2022年3月、マスク義務化がついに撤廃。この頃を境に、徐々にコロナ前の日常へと戻っていったのを覚えています。
パンデミック時に見られた日本との違い
まず衝撃だったのは、もともとマスク文化がなかったカナダには日本のような使い捨てマスクが出回っておらず、代わりにDIYなどで使うガスマスクをつける人が多数現れたことです。映画のような光景が広がり、日常が一変したことを思い知らされました。
また、ロックダウンやマスク・ワクチン反対派のデモが各地で起こったことも印象的でした。新しい法律が施行されれば素直に従う日本人と、受け入れられないものには「No」とはっきり主張するカナダの住民(移民が多いので「カナダ人」という単語は避けている)との違いが明確に見られました。そういう集まりが感染拡大に繋がることは理解できないのだろうか?とは思いましたが・・・。
「with コロナ」への切り替えも早いものでした。
カナダ政府は、新型コロナウイルスに関わるカナダへの入国制限を2022年10月1日から解除すると発表します。
筆者はその一週間後という奇跡的なタイミングで一時帰国したのですが、日本とカナダそれぞれの航空会社が当時取っていたコロナへの対応は真逆でした。
カナダ国内線の便ではマスクを付けた乗客・乗務員がほぼゼロなのに対し、日本へ向かう(逆も然り)国際線では、乗務員が寝ている乗客を起こしてまでマスクを着用させようとしており、双方のギャップに大きく戸惑いました。
トルドー首相が行った大規模な経済救済対策「Canada Emergency Response Benefit (CERB)」も紹介しておきましょう。
これは、新型コロナウイルスに感染、もしくは隔離や休職を余儀なくされた人などに支払われる給付金で、月2,000ドル(約21万円)が最大4カ月にわたって支給されるというものです。企業への給付金と合わせ、この時投入した予算は合計1,070億ドル。日本円にして約8兆3,500億円もの大規模な救済策が決行されました。
(引用元:Government of Canada – COVID-19 benefits from the CRA Canada Emergency Response Benefit (CERB)
https://www.canada.ca/en/revenue-agency/services/benefits/apply-for-cerb-with-cra.html)
私の夫もコロナに感染したため、夫はもちろん、隔離対象となった私もこの給付金の恩恵を受けています。不安に駆られる日々の中でとられたこの大規模な救済策は、多くの人々に安堵をもたらしたことでしょう。
現在の様子は?
現在のカナダは完全にコロナ前の日常に戻っており、マスクを付けている人、消毒液を持ち歩いている人はまず見かけません。
飲食店は通常営業しており、通勤・通学も元通り行われています。
ハグや握手はもちろん、パーティーで大皿から手づかみで料理を取るのに抵抗を感じている人はもはやいません。
コロナが与えた経済への影響は?
2023年3月9日のカナダ統計局の発表によると、カナダの国内総生産(GDP)成長率は2021年第2四半期以降、他のG7諸国と比較すると増加傾向にあり、2022年12月にはパンデミック前の水準を2.7%上回ったようです。
ただし、パンデミックの発生がカナダ経済にもたらした影響は大きく、インフレ上昇や投入コストの高さなども加わり、2022年の夏以降は廃業数が開業数を上回っています。2022年11月の開店数は過去2年以上で最低水準に落ち込みました。
そんな中でも、失業率が過去最低付近にとどまったため雇用が2023年初頭まで強まったのは、不幸中の幸いと言えるでしょう。2022年9月から2023年1月までで民間部門の従業員数は25万人以上の増加を見せています。2023年1月の総雇用者数は、新型コロナウイルス感染症拡大前の基準値を約80万人上回りました。
(引用元:Statistics Canada – Research to Insights: A look at Canada’s economy and society three years after the start of the COVID-19 pandemic https://www150.statcan.gc.ca/n1/pub/11-631-x/11-631-x2023004-eng.htm)
まとめ
コロナは既に過去のものとして認識されているカナダ。
パンデミック時の人々の対応や、「コロナとの共存」への切り替えの速さなど、日本との衝撃的な違いが日々感じられたことも印象に残っています。
コロナから各国の国民性を読み取ってみるのも面白いかもしれませんね。