個人消費は減少傾向か – アメリカ2023年クリスマス商戦

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アメリカ経済の約70%を占める個人消費。1年で最大の商戦期であるホリデーシーズンを迎えてもインフレや学生ローン支払い再開の影響を受け、消費ムードはやや低調気味です。来年の景気を占う指標でもある年末商戦をとりまく状況について、詳しくみていきましょう。

個人消費は減少傾向か – アメリカ2023年クリスマス商戦

    著者:アメリカgram fellow 末永 恵
公開日:2023年12月13日

1人平均1,652ドルをこのホリデーセールで消費

アメリカにおいて、11~12月のホリデーシーズンは1年で最大のショッピングシーズン。ブラックフライデー、スモールビジネスサタデー、サイバーマンデーと次々にセールが開催され、だいたいクリスマスまで続きます。

今年10月のデロイトの調査によると、このホリデーシーズンのアメリカ人1人当たりの予想消費額は平均1,652ドル(約24万8千円)、これは昨年の1,455ドル(約21万8千円)より多い額です。これだけを聞くと景気の良さそうな話ですが、この調査によると最大のセールであるブラックフライデーで買い物をする人は全体の31%程度、主に所得が高い層に牽引されている形で、全体的なお祭りムードというわけでなないようです。

(画像出典元:Insider Intelligence Trends, Forecasts & Statistics :31% of US internet users will shop this Black Friday
https://www.insiderintelligence.com/content/31-of-us-internet-users-will-shop-this-black-friday

消費を減速させるアメリカ人のお財布事情

WalletHubによる別のアンケート調査によると、出費にやや後ろ向きな消費者の傾向が見て取れます。いくつかポイントを抜粋してみましょう。

・「インフレーションのためプレゼント交換を取りやめる」と3人に1人が回答
・「プレゼントのアイデアを考えるのがもっともストレスフル」と35%が回答
・「今年のサンタさんは去年より景気が良くないだろう」と50%が回答
・「昨年のホリデーショッピングの支払いがまだ残っている」と1/4が回答
・「ホリデーショッピングをするために新しいクレジットカードを作る」と1/5が回答

デロイトの調査と合わせると、消費する人は昨年より多めに消費するが(主に高所得層)、一般的には出費を抑える傾向があるといえるでしょう。インフレによる家計の圧迫、新しいカードを作らなければ買い物ができないなど、手元にお金がない苦しいお財布事情がみられます。

クレジットカードの債務総額が1兆ドルを突破

ニューヨーク連銀によると、2023年第3四半期終了時点で、アメリカ人のクレジットカード負債総額が初めて1兆ドルを越え、1兆300億ドル(約148兆円)に達したと報告されました。

長引くインフレ、金利の上昇、学生ローンの支払い再開など家計を圧迫する要因が重なったことに加え、パンデミックの頃に政府から支給された給付金を使い切り、クレジットカードの支払いに回すお金がなくなっている人が多いといわれています。目先の生活だけでなく、大学教育・住宅購入・老後の生活などに充てる資金もないことを表しており、もっと長期的な視点で問題が出てくることが指摘されています。

学生ローンの支払い再開による影響

特に学生ローンの支払い再開は広範囲にインパクトを与えています。先のニューヨーク連銀のレポートによると、ミレニアル世代、特に30~39歳はクレジットカード支払いの遅延率が高く、高額な学費ローンを抱える層と一致します。

アメリカの大学は授業料が高額なことで有名です。多くの学生は奨学金という名の学費ローンを組んで通いますが、卒業して社会人生活をスタートする段階ですでに借金があるという状況が慢性化し、社会問題となっています。現在アメリカ全体での学生ローン債務は総額1兆7,000億ドル(約254兆円)を超えていて、借り手の約7%が10万ドル以上の負債を背負っているそうです。パンデミック中に救済措置として、およそ3年間の支払いの繰り越しが認められてきましたが、今年の10月から支払い義務が再開となりました。年末商戦直前での学生ローン再開が、消費に大きな影響を与えるのは間違いありません。

2024年は景気後退に突入するのか

アメリカはもとより、まもなく世界的な景気後退に突入するということは、ここ数年ずっと言われ続けており、昨年の同じ時期も2023年はリセッションに入るだろうと予想されていました。今のところ、個人消費・GDP・失業率などをとってみてもアメリカが本格的にリセッションに入る明確な根拠はありません。長く続いていたインフレも落ち着き始めています。

しかし先日、ウォルマートのCFO(最高財務責任者)ジョン・デビッド・レイニーがロイター通信に対し「消費者の動向について、以前よりもう少し注意深く見る必要がある。」と語ったことは、ひとつの不安要素として各ニュースに取り上げられました。アメリカ経済の約70%を占める個人消費。2024年がどうなっていくか、このホリデー商戦の結果がひとつの判断材料となります。

(引用元:INSIDER INTELLIGENCE:31% of US internet users will shop this Black Friday
https://www.insiderintelligence.com/content/31-of-us-internet-users-will-shop-this-black-friday

(引用元:WalletHub:Holiday Shopping Survey
https://wallethub.com/blog/holiday-shopping-survey/53828

(引用元:CNBC:Credit card balances spiked in the third quarter to a $1.08 trillion record. Here’s how we got here
https://www.cnbc.com/2023/11/07/credit-card-balances-jump-to-1point08-trillion-record-how-we-got-here.html

(引用元:CNBC:More student loan borrowers are walking away from their debt in bankruptcy, Biden administration says
https://www.cnbc.com/2023/11/16/more-student-loan-borrowers-walk-away-from-their-debt-in-bankruptcy.html

(引用元:REUTERS:Walmart sounds a note of caution on consumers ahead of holidays, shares fall
https://www.reuters.com/business/retail-consumer/walmart-lifts-targets-shoppers-pick-low-priced-groceries-holiday-2023-11-16/

著者: COOQIE INC.  CEO 末永 恵

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末永 恵

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アメリカ在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。 末永 恵 COOQIE INC. CEO 末永 恵

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