日本人が知らない!大人気動画「Tokyo Bon 2020」から考える外国人向けマーケティングの神髄

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海外市場に進出するには、自社や商品の認知度を上げるマーケティング手段が必要となります。近年、インターネット発展とともに興起したSNSにおいてのマーケティングがどんどん主流となっています。とくに、SNSに動画を投稿することによるプロモーション・宣伝が注目を浴びています。
本記事は、2017年にアジア圏を中心に爆発的に拡散され話題となった音楽映像作品「Tokyo Bon 2020」を分析し、そのバズった理由を探求します。また、この映像作品から見られる、海外マーケティングをする際に必要な思考もまとめ、方向性・方策を提言します。

著者:gram fellow  
公開日:2021年2月4日

日本人が知らない!大人気動画「Tokyo Bon 2020」から考える外国人向けマーケティングの神髄

「Tokyo Bon 2020」とは?基本情報をおさらい

「Tokyo Bon 2020」は日本最大級のインフルエンサーマーケティング企業「Cool Japan TV」(本社 : 東京都渋谷区、代表取締役 : 赤峰俊治)とマレーシアの歌手・インフルエンサーのNameweeと共同にプロデュースした音楽映像作品です。2017年11月19日に本編がYoutubeにて公開され、同年の11月23日にダンスバージョンが公開されました。発表され1週間で合計4000万視聴を突破し、現在Youtubeでは2バージョンを合わせて合計1億300万回以上(本編9296万回、ダンスバージョン1035万回、2021年1月9日調べ)の視聴を記録しています。

本作品は、日本語を話せない観光客役のNameweeに、女子高生役の二宮芽生(女優、歌手)に「Japanglish」(日本式の英語)で観光案内されることがストーリです。映像では、力士、忍者、花魁、セーラー服などといった、海外で認知度の高い日本文化のシンボルが続々と出てきて、アジア各国のインフルエンサーたちが本作品の音楽に合わせて盆踊りをするシーンもあります。日本の伝統文化や外国人観光客の日本に対する印象、及び東京オリンピックに向けて盛り上がりを見せるムードを、「Japanglish」満載の歌詞でユーモラスな形で表現しています。

「Tokyo Bon 2020 」本編▼

「Tokyo Bon 2020 」本編

ダンスバージョン▼


本編は、道を聞く観光客役のNameweeが和服を着た日本人女性の「Japanglish」での案内に戸惑うシーンから始まり、歌詞の中でも「マクドナルド」、「ミルク」、「ビール」などの「Japanglish」が大量に出てきます。Youtubeのコメントを見ると、この動画を見ているのはほとんど外国人で、中毒性のある歌詞とメロディに対して「Japanglishが頭から離れない」「三年経ってもこの曲聞き続けている」などのコメントが溢れています。

また「Tokyo Bon 2020」の中の盆踊りを真似して、世界各国から踊ってみた動画もたくさん投稿されました。ではなぜこの曲が海外で人気を集め、視聴者の頭に残られるのでしょうか?以下に曲作り、歌詞と映像の構成という三つの視点から分析していきます。

曲作り:聞き馴染のある「日本の音」

この曲のタイトルは「Tokyo Bon 2020」であるため、かなり盆踊りの曲に近い音やリズムによって作られています。インフルエンサーたちが踊る際にも盆踊りの掛け声を入れています。さらに全曲にはほぼ同じリズムやメロディーが繰り返されていて、このような曲が比較的に聞きやすく、人の頭に残りやすいと言われています。これが「中毒性」の在り処かもしれません。

また、この曲はおそらくシンセサイザー(電子工学的手法により楽音等を合成する楽器)で作られたが、冒頭や間奏には三味線のような音が入っています。よく聞けば、女子高校生役の二宮芽生の「Japanglish」を教えるシーンには拍子木の音が入っています。盆踊りらしきリズムやメロディー、掛け声に和楽器の音が加わっているからこそ、この作品が外国人が聞いてもすぐ日本の曲だと分かり、日本を連想させる曲になっています。

歌詞:「Japanglish」と「海外で知られている日本語」

言うまでもなく、この曲の歌詞には大量の「Japanglish」が入っています。日本人は英語のつもりで使っているかもしれませんが、外国人から聞けば英語の発音に似ている部分はあるがどうしても妙に違和感があるかと思います。この「似ているような似ていない発音」が歌詞の中毒性の一因になると思います。日本に興味のある外国人や、日本に来たことのある外国人なら、きっとこのような「Japanglish」に聞き覚えがあるでしょう。

それに対して、観光客役のNameweeの英語歌詞にも、「Wakarimashita(わかりました)」、「Konbanwa(こんばんは)」など外国人でも知っている日本語以外、大量の「Ramen」「Tempura」のような、すでに英語の単語として定着している日本語が入っています。

以上のように、この曲は一見してみれば「英語」と「日本式英語」で構成される外国人向けの歌詞になっていますが、実は「英語から来た日本語」と「英語になった日本語」のような、ほぼ日本語の歌詞を日本式のメロディーに乗せているわけです。そのため、全く違和感のない、日本を感じられる曲になっています。

余談ですが、「I don’t speak Japanese but I love Aoisora」という歌詞があります。公式ではどの言語でも「青い空が好き」というふうに翻訳されていますが、ここはおそらくアジア圏で有名な元セクシー女優の蒼井そら氏を暗示していると推察されます。これも「海外で知られている日本語」の一つになり、わかる人が聞くと面白さ増しでしょう。

映像の構成:共感を呼ぶストーリー、日本感満載の映像

曲のプロモーションビデオですが、この映像は道案内のシーンから入ります。英語で道を尋ねたら、よくわからない「Japanglish」で返されたと、このシーンは同じ経験のある外国人に対して強い共感を呼ぶことは間違いありません。
また、このような経験のない外国人でも、「Japanglish」を聞いて案内される人の戸惑いを実感できるのでしょう。このコントは後の歌詞や曲の主旨を提示し、これに惹かれて映像を見続けた人はきっと少なくないでしょう。日本を宣伝するはずの映像が外国人目線から「Japanglish」へのツッコみにあふれて、シニカルな表現が逆に海外の人に興味を持ってもらえました。

歌詞のように、映像の中にも外国人の日本に対するイメージにぴったりのものがたくさん出てきます。花魁、セーラー服、人力車、神社、東京タワーなど、海外で認識度の高い日本を代表するものばかりです。これによって日本に詳しくない外国人でもこの映像を受け入れやすく、理解しやすいと考えられます。

「Tokyo Bon 2020」の人気から何が学べるか?

「Tokyo Bon 2020」は日本の宣伝というより、海外の日本に対するイメージに完全に合わせた、外国人目線からのエンターテインメントコンテンツに近いかもしれません。それにしても、この音楽映像作品のバズりから、海外市場にプロモーションする際のヒントが得られます。
まず海外で認識度のたりない商品を宣伝するには、商品の「日本らしさ」に注目した方がいいかもしれません。この「日本らしさ」とは、いわゆる海外でよく知られている日本の特徴、海外における日本に対するイメージです。

海外は日本のものにもそのようなイメージに合う特徴を求めているという側面もあります。よって親切なデザイン、使いやすさ、和式もしくはアニメ作品関連のデザインなど、商品の「誰が見ても日本のものだとわかる」ような特徴を掴めば、海外における認識度や市場を広げられるかもしれません。

次に、単なる商品紹介よりは、ストーリー交じりのプロモーションの方が効果があるかもしれません。消費者の印象に残る可能性が高いのみならず、感情移入もしてもらえるかもしれません。また、ストーリーは一方的に自社や商品の良さを宣伝するよりは、適度のツッコみや笑いを交えたほうが、消費者に覚えられやすく、興味を持ってもらえるでしょう。

おわりに

以上、「Tokyo Bon 2020」の構成や特徴を分析し、海外マーケティングに活用できるヒントをまとめましたが、いかがでしょうか?
テレビよりSNSが主なプロモーションの戦場となる時代に、海外市場に進出する際に「Tokyo Bon 2020」のような、わかりやすくかつ面白くて、印象に残るコンテンツ構成が一番大事かもしれません。

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