特集:世界では東京五輪についてどのように報道されたのか?(米国・前編)

Tokyo2020

8月8日に閉会を迎えたTOKYO2020は、世界ではどのように報道されていたのだろうか?
日本のオリンピック開催に向けての取り組みや実態、開催について海外メディアはどのような評価をしているのかを開催間際の世界の媒体・ニュース記事をリサーチした。

アメリカ・前編

オリンピックはスポーツを通した人間育成と世界平和を目指すことを掲げ、57年ぶりに東京に戻ってきた。しかし2019年12月に新型コロナウイルスが蔓延、2020年に予定されていた東京五輪は延期となる。世界中が注目するオリンピックがこの異例な事態になってしまい、開催国である日本が対応を余儀なくされた。
日本のオリンピック開催に向けての取り組みや実態に海外メディアではどのような評価をしているのかを紐解くため、本稿では米国のニュース記事を5つ抜粋し、考察した。

  著者:gram フェロー
公開日:2021年8月9日

米国では東京五輪についてどのように報道されているのか?

米国のニュース記事の調査の結果、新型コロナウイルスの新たな感染者数が収まらない状況、そして他国よりも遅れたワクチン接種といった2つの大きな問題がある中、「なぜ日本五輪の開催は実行されたのか」を疑問視または分析する記事と、「IOCのビジネスライクな姿勢が今回の五輪を左右させていた」と主張する記事が多く見られた。日本五輪が開催された理由は開催までに後戻りできないほどの投資が行われてきたこと、そして次期開催国である中国に新型コロナの世界的大流行後初のオリンピック開催国の座を奪われるのを回避したい日本の意地もある、と指摘していた。そしてIOCは収益獲得が主な原動力であるという現実を浮き彫りにした指摘があった他にも、関係者各位の辞任、無観客開催について注目する記事もいくつかあった。
総合的には、一見批判とも見られる内容がありつつも、批判姿勢の記事は少なく、この状況下でオリンピックを開催する日本を応援するようなメッセージ文やまとめ方をする記事がほとんどだ。今回のオリンピックは前例がない状況下で実施したため、比較対象がないという点が報道のされ方に影響を与えているのではないかと考えられる。

なぜ日本はオリンピック開催を貫くのか:Washington Post

Why does Japan insist on holding the Olympics?

感染者数が上昇することが目に見えているのにも関わらず、なぜ東京五輪開催が決まったのか。日本は今後感染者数の上昇傾向が収まる目処は立たないまま、世界中からアスリートを迎え入れることとなった。これには経済政策が大きく関わっている。IOCの利益の9割は放送特許やスポンサーだ。そのため、オリンピックが開催されないと赤字となってしまう。2022年まで延期することも選択肢として挙げられていたが、北京での冬季オリンピックと重なってしまうことを日本は懸念した。さらに、オリンピック開催に向けて膨大な投資を行ってきた総合広告代理店の電通はオリンピック開催を中止、または延期する余地がないということを強く示している。やはり東京オリンピックは開催をする他無い。
Washington Post : https://www.washingtonpost.com/opinions/2020/12/21/why-does-japan-insist-holding-olympics/

東京開催は「安全」が売りのはずだった:CNN

Tokyo was picked as the ‘safe’ choice for the Olympics. Here’s how everything changed
東京は2013年のオリンピック開催決定時、イスタンブールと大差で勝利を勝ち取った。東日本大震災による福島県の放射線について懸念はあったものの、IOCは東京なら「安全」という点で東京2020に意を固めた。しかし、新型コロナウイルスという猛威が世界を襲った今、状況は変わってきている。実はオリンピック開催中にパンデミックが起こったのは初めてではない。さらに医療体制不備や不平等も今回の事態が起きる前から浮上していた問題でもある。つまり新型コロナウイルスは新たな問題をもたらしたのではなく、今まで存在はしていたが、世界中が目をつむっていただけであった問題を浮き彫りにしたと考えた方が正しい。東京のオリンピック開催の、東京にとって、参加する国々にとって、アスリートにとっての良し悪しについては誰もわからない。しかし、実行してみないと何も始まらない。人類の次なる挑戦に立ち向かうしかない。
CNN : https://edition.cnn.com/2021/06/08/opinions/tokyo-olympics-covid-19-sports-bass/index.html

オリンピック関係者の相次ぐ辞任:LA Times

How cursed are the Tokyo Olympics? Opening-ceremony composer steps down over bullying

東京2020開会式の演出を努めていた作曲家小山田圭吾氏が過去のいじめを指摘され、辞任した。 この辞退の報告は新型コロナウイルスをめぐる状況が不透明な中、オリンピック開催を進めた菅内閣が批判に直面しているさなかであなされた。 オリンピック開催に関わる関係者の辞任は今回だけではない。東京大会組織委員会前会長の森喜郎氏は女性差別の発言で辞任、開会式と閉会式に携わっていた佐々木宏氏は、人気コメディアンの渡辺直美氏がこの開会式または閉会式の場で豚の衣装を着るという企画の提案が中傷と捉えられ、辞任した。
LA Times : https://www.latimes.com/entertainment-arts/music/story/2021-07-19/olympics-composer-keigo-oyamada-steps-down-over-past-bullying

オリンピックが日本にもたらすもの:Yahoo

Japan’s Leaders Worry the Olympics Could Hurt Their Global Brand. They’re Wrong.

日本では、思っていたオリンピックとは全く違う状況となってしまっている。2013年に日本でのオリンピック開催が決まった時は、当時の安倍政権はこのオリンピックを日本の経済復興やさらなる世界進出につなげるという計画の一貫としていた。東京2020は3.11なども含めて「復興」オリンピックでもあったのだろう。しかし、誰もが想像していなかった事態となった。新型コロナウイルスの感染者数が抑えきれていない中での開催について批判の声もあった。しかし実際の統計を見ると、日本は他のG7の国々と比べても感染者数や死者数の相対的な数字を抑えられている。さらに、今回日本がオリンピックをキャンセルまたは延期したとすれば新型コロナウイルス後初のオリンピックを中国に委ねることになり、それは譲れなかっただろう。安倍前総理大臣のおかげで日本はより国際的な国となり、貿易、経済、そして環境保護などに関して世界を率いるグローバルリーダーになったことは間違いない。むしろ日本は世界のための重役を担うに適している国であり、オリンピックが仮になかったとしてもそれは変わらない。
Yahoo : https://news.yahoo.com/opinion-japan-leaders-worry-olympics-055016635.html

東京五輪は失敗なるか成功なるか:USA Today

Tokyo Olympics: A success? A failure? And how to judge?

今回のオリンピックは、ただ開催し終えるだけが成功とも言えるくらい複雑なものだ。 今までの常識では東京五輪を評価することはできない。パンデミックが起き、大会が延期され、状況はさほど変わらなかったが、開催を覆さなかったIOCの考えは、やはりオリンピックをエンターテインメントと考え、利益をもたらすことを第一としている。結局IOCは、コロナウイルスなどの話が消し去られるくらい、オリンピックの話題が盛り上がることを願っているのだ。国際オリンピック歴史家協会の会長デイビット・ワレチンスキーは「無事開催されたことで、各国は自分の国のメダルの数でオリンピックの成果を測ると思う」と語った。
USA Today : https://www.usatoday.com/story/sports/olympics/2021/07/26/tokyo-olympics-a-success-a-failure-and-how-to-judge/117666930/

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