バングラデシュで躍進するコスメ業界:魅力的なビジネスチャンスと成長の予測

バングラデシュ

バングラデシュは国民の9割がイスラム教徒の国だ。男性は外で仕事をし、女性は家の中で家事をするという考え方が今も一般的である。しかし、首都のダッカを中心に女性の社会進出が進んできており、働く女性が増加してきている。働く女性の増加に伴い、女性のファッションやコスメに関しても盛り上がりを見せている。今回はバングラデシュのコスメ事情に焦点を当てたい。

女性については現在もサリーやサルワカミューズなどの伝統衣装を着ている人が多いが、ダッカの学生を中心にシャツとパンツのような洋風のスタイルも増えてきている印象だ。メイクははっきりした顔立ちに加え、サリーやサルワカミューズなどの伝統衣装なども派手な色味を好む傾向から、派手で濃い色味を使う人が多い。

バングラデシュで躍進するコスメ業界:魅力的なビジネスチャンスと成長の予測

著者:バングラデシュgram fellow 田中志歩
公開日:2023年7月5日

バングラデシュ化粧品の生産拠点としての注目

国際標準の化粧品およびスキンケア製品は今後バングラデシュで生産され、アジア諸国にも輸出されることが見込まれている。世界的に有名なコスメブランドも、ダッカから海外に輸出される未来も遠くないとされている。

例えば、最近では国際的に有名な会社Remark LLCは、ダッカにアジア地域オフィス開設の準備を始めている。米国のRemarkLLCと提携しているRemarkHBは、ムンシゴンジ県に生産工場と研究機関を設立した。

(出典:Remark HB to receive support from BRICM
https://www.dhakatribune.com/business/2022/11/30/remark-hb-to-receive-support-from-bricm

さらにアメリカの化粧品ブランドNIORも、ダッカに体験型の施設を開設する予定だと報道されている。

(出典:Budget FY24: Cosmetics to become pricier
https://www.dhakatribune.com/bangladesh/2023/06/01/budget-fy24-cosmetics-to-become-pricier

このような動向から、バングラデシュに世界の有名コスメブランドの工場ができ、バングラデシュからコスメが輸出されていき、バングラデシュのコスメ市場にも大きな変化がおこるのではないかと予想されている。

美容品の市場について

次に利用者としての動向を見ていきたい。バングラデシュは、オーガニックスキンケア製品の成長を推進している。バングラデシュのスキンケア製品市場規模は、2019年には1億230万ドル、2027年までに2億120万億ドルに達すると予測されており、2021年から2027年で8.1%CAGR(年平均成長率)が向上するとされている。

(出典:Bangladesh Skin Care Products Market is projected to reach $2.12 billion by 2027, registering a CAGR of 8.1% from 2021 to 2027
https://www.digitaljournal.com/pr/bangladesh-skin-care-products-market-is-projected-to-reach-2-12-billion-by-2027-registering-a-cagr-of-8-1-from-2021-to-2027

美容と健康に関連する懸念の高まりや均一な肌のトーンを維持したいという需要から、消費者は様々なクリームやローションなどのスキンケア製品を使用する傾向がある。 バングラデシュの化粧品業界にも、国際的なブランドが進出しているが、輸入化粧品は需要の金額を上回る金額設定になっている。さらに、バングラデシュ政府は2023年6月に、現在3%の輸入化粧品の輸入関税を、20%に引き上げることを提案している

(出典:Budget FY24: Cosmetics to become pricier
https://www.dhakatribune.com/bangladesh/2023/06/01/budget-fy24-cosmetics-to-become-pricier

そのため、地元のコスメメーカーは、中低価格の市場に焦点を当て、低価格オーガニック製品の販売へも力を入れている。

バングラデシュの現地美容ブランド

美容品市場の過半数が海外ブランドを占めている中、現地ブランドはどのような点を強みに販売しているのか。実際にダッカにあるコスメ店舗を訪問し、店舗調査を行った。国内で幅広く展開している以下2社のブランド情報を表にまとめた。

Ribana
「RiBANA Organic」は、100%オーガニックで手作りのスキンケア製品や天然石鹸やオイルなどのヘアケア製品を取り揃えているバングラデシュのブランド。生産からこだわっており、農家と農村部の女性に利益をもたらすことのできるような運営形態をとっている。

商品価格参考価格
ヤギミルクソープ1,050 BDT1,050円
活性炭石鹸 450 BDT450円
メイク落としソープ 500 BDT500円
オーガニックヒマシ油 550 BDT550円
ココナッツオイル 400 BDT400円
アーモンドオイル 650 BDT650円
Ribanaの価格帯

Tilat Khayer
ダッカのメイクアップアーティストによって作られたブランド。TKメイクアップラインは特にアジアの肌の色に対応している。幅広い色と妥協のない品質基準は、ユーザーの生来の自然の美しさを高めることができると評判である。

商品価格参考価格
リップ1,500 BDT~1,500円~
リップライナー 950 BDT~950円~
ファンデーション 950 BDT~950円~
Tilat Khayerの価格帯

バングラデシュ美容業界の今後の展望

バングラデシュの人口増加と共に、スキンケア市場のターゲットとなる中高所得層の増加も見込まれ、今後スキンケア市場の拡大が見込まれる。バングラデシュ人女性の多くは、普段はナチュラルなメイクを好む傾向にあり、リップにアイラインだけを施すことが多い。

素顔に近いナチュラルさの追求をしてきていることから、日頃使う化粧品市場の拡大は少し時間がかかるだろう。しかし、今後海外の有名化粧品ブランドの工場設立をきっかけに、バングラデシュのコスメ市場に参入する未来が垣間見えるのではないだろうか。

*1 BDT=1円で計算。

関連記事一覧