70%以上がネット投票を利用!IT先進国エストニアの選挙の様子とは

エストニア

エストニアの議会選挙の開票が行われました。この国は世界で最初にインターネット投票を導入したIT先進国であり、今回の選挙でも70%以上がネット投票を利用しました。投票所は11か所に設置され、仮設の投票所もあり、アクセスしやすい場所に配置されました。選挙活動に関しては、看板やバナーが多用され、Youtube広告も使用されました。一般的にエストニア人は他者に干渉しないため、ブースの前で候補者と談笑する光景があったことが、筆者には印象的でした。
選挙活動はどのように行われたのか、選挙活動中のエストニアの街の様子をレポートいたします。

エストニアの選挙の様子

著者:エストニアgram fellow さえきあき
公開日:2023年3月26日

今回の選挙の概要

今回の選挙はエストニアの議会、Riigikogu(リーギコグ)の総選挙である。議会は一院制で選挙の間隔は4年に1度。選挙の投票は直接投票所に行く方法と、エストニアの強みである電子化を活かしたインターネット投票のいずれかを選択できる。

これは3月4日時点での投票率や投票形式を表したものだが、70パーセントほどがネット投票で、残りは投票所で行われたものである。
エストニアはこのインターネット投票を国レベルで行った最初の国であり、その実情等に触れだすと長くなるため、次回紹介しようと思う。

投票所の様子

筆者の住むタルトゥでは市内11か所に投票所が設けられた。ショッピングセンター内や教育機関の中などアクセスしやすい場所に定められている。市内中心部の通りには仮設の投票所が設置され、買い物などのついでに投票できるようになっていた。
工事現場の仮設事務所のようなもので、通りに対して少しオーバーサイズだ。

候補者の選挙活動

エストニアには、うぐいす嬢の乗った選挙カーや駅前で行う公衆演説といった慣習はない。しかしながら、候補者や政党はいくつかの方法を使って選挙活動を行っている。
王道は、看板やバナー。これらがいつも通りかかる場所に急に現れる。そのサイズは日本の選挙ポスターよりも格段大きい。

筆者の住む家の近所に突如現れたバナー。可動式のマジックハンドのような機械を使って期間中のみバナーを設置していた。

シティセンターには簡易的なテントが置かれ、候補者の応援者達がバスケットにチラシやお菓子を入れて配っていた。

ここでもマイクを持って演説をするといったことはない。しかし、通りがかった人たちと選挙活動をしてる人たちが喋っている様子は、いつもの街の雰囲気より明るい。基本的にエストニア人は他者に干渉しないという日本人に似た空気をまとっているため、ブースの前に立ち止まって談笑している様子は少し珍しく感じた。

ネット上の選挙活動

エストニア特有の選挙活動といえば、Youtubeの広告を使った候補者や政党のアピールだろう。開票日の約2週間前から、Youtubeの動画広告に選挙関連のものが多く出てくるようになる。筆者はエストニア語のレベルが初級なので何を言っているのか理解できないが、候補者の写真や政党のロゴが映し出されるため、雰囲気で選挙活動だということはわかる。日本の場合、選挙法の都合でできない取り組みではあるが、インターネット投票を見越して広報活動もオンラインでやるというのは非常に合理的だ。
また、娯楽の筆頭であるYoutubeを利用するのは戦略的であると思う。フリータイムをYoutubeを見て過ごすとき、選挙に関する広告が流れると投票のリマインダー効果も期待できる。

これら全てが政党や選挙に関する広告で、候補者の名前や顔もこの動画広告上で宣伝される。

まとめ

インターネット選挙に即したアピールの仕方がある一方で、直接的なアピールの方法も取るハイブリッドな選挙活動。ネットが普及した時代にあった方法と、従来の方法を継続していく方法を取ることで若者にもお年寄りにも投票しやすい環境を提供している。特にネット広告の効果的な使い方は、このエストニアの事例から学ぶ点があると考えられる。

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