マレーシア、AIの製造ハブへ| NVIDIAとの提携で6,500億円投資計画

マレーシア

マレーシアがAIの世界的な製造ハブとなる可能性が高まっています。世界最大手のNVIDIAがマレーシア企業と提携し、43億ドル(約6,500億円)の巨額投資を計画。半導体産業で培った高い製造技術力と、政府による法整備・支援策が評価され、AIの生産拠点に最適と注目を集めています。1990年代に存在感が薄れたマレーシアですが、今や半導体に続きAI分野でも台頭が期待されます。

そこで今回の記事では、成長しつつ国際的な競争力を高めているマレーシアのAI産業について紹介します。

成長するマレーシアAI産業 ─ 世界企業の生産拠点化が現実味  

   著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2024年5月2日

時価総額で世界6位

「NVIDIA」は半導体の中でも主にGPU(グラフィックスプロセッサユニット)を開発している企業で、2024年2月時点で株価の時価総額は世界6位、あの「フェイスブック」の「meta」を越えている世界的なAI企業です。

人工知能やコンピューターグラフィックスなどの先進的なAI技術、革新性を駆使した画像関連の開発で注目を集めている企業です。

その世界的企業のCEOがマレーシアを訪問し、彼が発したコメントが注目と期待を集めています。

マレーシアのポテンシャルを高く評価

彼がマレーシアを訪問した際に「マレーシアはAIにおいて『製造ハブ』になる可能性が十分にある」と発言しました。

そして、国内の大手コングロマリットと提携し、累計投資額が43億ドル(約6,500億円)に上るプロジェクトを計画中であると報じられ、多くのメディアの注目を集めました。

ジョホール州にデータセンター

プロジェクトでは、提携先の「YTL」がジョホール州に保有している、スーパーコンピューターとクラウドコンピューティングなどのAIインフラが整備されたデータセンターをホストにして、2024年半ばまでには最初のフェーズが完了、オペレーションを開始する予定です。

半導体産業がGDPに大きく寄与

マレーシアのGDPは4,655億ドル(約70.5兆円)で、1人あたりGDPも1万3,000ドル(約197万円)を超え、ASEANの中では、シンガポール、ブルネイに次いで3番目となっています。

半導体産業がマレーシアのGDPに占める割合は実に25%に上ります。半導体のアッセンブリー分野においては世界シェアの13%を占め、半導体輸出では世界第6位です。

半導体産業はマレーシアにとっても非常に重要な産業に成長しており、マレーシアのアンワル首相も今回のNVIDIAとYTLの提携について、自身のXで言及しています。

AI産業が成長した理由

マレーシアのAI産業が成長した理由としては、非常に高い製造技術力があげられます。これは日本の自動車産業がマレーシア企業と提携して技術を教え、マレーシアのメーカーがそれを吸収したからと考えられます。

その優れた技術力が半導体分野にも活かされていて、インテルが1972年にペナン島にアッセンブリーセンターを開設することにつながります。同社は半世紀以上にわたり投資を行い、累計投資額も50億ドル(約7,570億円)に上ります。

マレーシアは半導体市場において、世界的なサプライチェーンの中でも非常に重要な存在となっています。

マレーシアの強み

マレーシアがAI生産の拠点として注目される理由、またその強みは、マレーシア政府が国家デジタル経済戦略である「MyDIGITAL」を通じて、AI産業の発展を促進していることです。政府は法的枠組みの整備も進めており、AIの研究開発や人材育成を支援するために助成金やさまざまなプログラムを実施しています。

また、イノベーションハブや技術パークをクアラルンプールなどに設立しており、多くのAI企業やスタートアップが集積し、人材も育成されています。

マレーシアが再注目

1990年代は韓国や台湾企業の台頭によりマレーシアの存在感は薄れていましたが、世界情勢の変化などもあり、半導体市場におけるマレーシアへの注目度が、今再び高まりを見せています。

Malay Dragon

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マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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