「あずきバー」でムスリム市場に進出!井村屋がマレーシアで現地生産に注力する理由

マレーシア

日本の和菓子メーカー、井村屋がマレーシアで現地生産した「あずきバー」が、地元の「DON DON DONKI」で好調な売り上げを記録している。井村屋は、日本で生産したあずきバーを輸入し、現地の味覚を試し、ハラル認証を取得するなどして、ムスリム市場に販路を拡大している。今後は世界最大のイスラム国家であるインドネシアへの輸出を開始する予定で、ASEANや中東、アフリカへの輸出を目指している。
井村屋はコロナ禍において、先人たちが築いた「特色経営」と「不易流行」という経営哲学を貫き、積極的に姿勢を変えることで、食品業界において成功を収めている。京都の老舗茶舗「福寿園」との提携も、今後の展開に期待が高まる。
そこで今回の記事では、井村屋のマレーシア事業や海外戦略と、「和スイーツ」の可能性についてみていこうと思います。

マレーシア:井村屋現地生産のあずきバーが販売好調   

   著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2023年5月5日

3種類の味を現地生産

現在、あずきバー3種類(小豆味、抹茶味、ミルク味)を現地生産しています。小豆味は、小豆の煮汁を捨てずにアイスに加えることで小豆本来の風味を残し、甘みを抑える製法で製造しており、抹茶味は練乳を抹茶アイスに混ぜることで現地のマレー系や中華系にもなじみがあり、食べやすい味に仕上げています。

2021年9月の「DON DON DONKI」では、25日間であずきバー全3種類で合わせて1万本、昨年7月に行われたクアラルンプールの盆踊り大会では7,000本を売り上げて大人気でした。1本4.5リンギ(約135円)で販売しています。

ハラル認証を取得

井村屋はマレーシアでの現地生産をはじめる前から、日本で生産したあずきバーを輸入して現地の人々の味覚などを細かくチェックし、ハラルへの対応も行ってきました。マレーシアは国民の多くがイスラム教徒のためハラル対応は必須ですが、認証の取得に当たっては提携先のノウハウを活用し、世界でも信頼度が極めて高いマレーシアのハラル認証取得を目指しました。

ムスリム市場に販路拡大

井村屋はマレーシアで生産を行い、マレーシア以外のモスリム市場への販路の拡大を目指しています。

今後は世界最大のイスラム国家であるインドネシアへの輸出を開始する予定で、さらにASEANや中東、アフリカへの輸出を目指しています。

「特色経営」と「不易流行」

井村屋には「特色経営」と「不易流行」という、先人たちが築き培かってきた2つの幹となる経営哲学があったからこそ、誠実で積極的な姿勢を貫くことができ、コロナ禍をチャンスに変えました。コロナ禍で点心・デリカなどの外食産業の売り上げが減少した一方で、「あずきバー」は売上好調で、2021年の売上本数は前期比116%の2億9200万本を記録し、過去最高となっています。

京都の抹茶の老舗「福寿園」と提携

2023年2月、両者は共同で冷凍和菓子「抹茶クリーム大福」と、あずきバーシリーズの宇治金時のリニューアル商品である「あずきバー抹茶」という新商品を開発していることを発表しました。井村屋は抹茶技術に長けている福寿園と協力し、抹茶関連の製品をさらにレベルアップさせて世界に広げていくことを目指しています。

和菓子を世界のスイーツ

井村屋は「和菓子は世界に認められる日本の文化で、小豆もその機能面でも注目されています。特に冷凍和菓子は今後の成長商品と考えている」と語っています。創業100年を超え、多様性を持った企業特性を土壌としている同社は、今後さらに「温故知新」を具現化し、イノベーションを起こし成長を続け、和菓子をもっと世界的に認知度の高いスイーツにしていく構想を示しています。

小豆がレッドビーンという英語ではなく「AZUKI(アズキ)」という日本語読みで浸透するのも間もなくではないでしょうか。

関連記事一覧