好調なマレーシア経済の秘密とは?GDP成長率8.7%の背景を解説
マレーシア経済が2022年に記録した8.7%の成長率は、東南アジア主要国の中でも最高水準です。個人消費の増加や輸出の伸びが主要な要因であり、安定した労働市場や賃金上昇率の上回りも成長を後押ししました。しかし、2023年の成長ペースは落ち着きを見せています。本記事では、マレーシア経済の現状と将来展望について詳しく解説します。
本記事では、マレーシア経済の好調な要因や将来展望について解説します。
マレーシア 2022年のGDP成長率 8.7%
著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2023年6月15日
個人消費がけん引
マレーシアのGDPの6割弱を占める個人消費が前年同期比7.4%増で、労働市場の改善などを背景に今回の経済成長を牽引しています。それに加え政府消費が2.4%増、民間投資が10.3%増、公共投資が6.0%増といずれも前年比を大きく上回っています。
失業率が3%台で安定して推移し、さらに賃金上昇率が物価上昇率を上回っていることが、各種の規制解除によるコロナ禍からの個人消費の回復を助ける形になりました。
また、昨年は電気製品を中心とする輸出が25%伸びており、成長率を押し上げています。最大の輸出先であるシンガポール向けの輸出が34%増、日本向けが30%増、インドネシア向けが43%増となっており、9%増にとどまった中国向けの輸出の伸び悩みを補った形になっています。
好調な景気に陰り
2023年の1-3月期のマレーシア経済は成長率が前年同期比の5.6%増となり、2022年通期の成長率からは減少しています。現在は需要の押し上げ効果が徐々に薄れたため、成長ペースが落ち着いたとみられています。ただ、コロナ禍前の成長率が毎年年平均で5%程度であったことを考えると、2023年の1-3月期も堅調に成長を維持しているとみられています。
先行きを楽観視
マレーシア中央銀行の総裁は、2023年の経済成長見通しについて、世界経済の減速に伴って外需不振が懸念材料ではあるが、底堅い民間消費やコロナ規制の緩和による観光関連などのサービス業を中心とした回復、20カ月連続で増加している雇用者数などが景気を下支えしている。景気は一旦は減速しても景気後退までは至らないと、楽観的な見方を示しています。
マレーシア経済の特徴は?
マレーシア経済は、原油や天然ガス、パーム油やゴム、錫(すず)などの豊かな天然資源を活かし、それにプランテーションを中心とした農業を中心に、独立して以後発展してきました。
1970年代には、政府主導のもと電機・電子産業を中核とした製造業が外国企業の投資で大きく発展し、さらにルックイースト政策で優秀な国内人材が育ち、経済発展を遂げています。
近年GDPに占める工業の割合は低下傾向 にあり、サービス業が55%を占めるまでに進展して主力産業となっており、次いで製造業(23%)、以下、鉱業、農林業、建設業となっています。
地味だが堅実なマレーシア経済
隣国のシンガポールほど先進的ではなく、インドネシアやベトナムに比べると人口の面では敵わず地味なマレーシア経済ですが、企業、特に日本の企業が投資するメリットは数多くあります。
マレーシアはASEAN諸国の中でも最も経済成長が著しい国であり、中間所得層が確実に急増していて、まだまだ市場の拡大が期待できます。
また、日本の発展・成功に学ぶ「ルック・イースト政策」(以前こちらで紹介したのでご参照ください)を進め、経済発展を成功させたこともあり、日本に対するイメージはアジア諸国の中でも極めてよく、数多くの日本企業が早くからマレーシアに進出して両国の関係を更に強化しています。
さらに、国民の6割強がイスラム教徒なので「ハラル認証製品」が普及しており、マレーシアのハラル認証は国際的に最も信頼され、広く認められています。そのため、世界中で約18億人いるイスラム教徒に特化したサービスを市場開拓していくうえで、マレーシアは「ゲートウエイ」として非常に注目されています。
多様性あふれる国
マレーシアには、マレー系、中華系、インド系という主に3つの民族が暮らしています。
マレーシア社会は異なる民族や宗教・文化・慣習の影響を受けていますが、それは単に文化がミックスされているのではなく、異なる文化がお互いを認めあい、多様性を容認してうまく共存しているのです。
分断が進む世界ですが、本来あるべき姿が、ここマレーシアでは見ることができます。