環境問題が国際問題に:マレーシアのヘイズ(煙害)について

マレーシア

日本では例年冬から春にかけて、PM2.5の濃度が上昇し、日常生活や経済活動、健康に影響を及ぼします。
PM2.5は、日本の大気汚染物質の1つであり、気象用語では「煙霧(煙害)」と呼ばれ、英訳すると「Haze(ヘイズ)」です。
マレーシアを含む東南アジアでは、毎年モンスーン(季節風)の時期で、乾季の4月から10月にかけてヘイズが発生し、大きな影響を与えます。
今年はすでにモンスーンの切り替わり時期に入ったのでヘイズの心配はなくなりましたが、今回の記事では「マレーシアのヘイズ」について解説します。

マレーシアのヘイズについて 

   著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon 
公開日:2022年11月10日

なぜマレーシアのヘイズは発生するの

一番の原因となっているのは、インドネシアのスマトラ島やカリマン島、一部マレー半島での焼畑農業(野焼き)や森林火災です。他にも、製紙のための植林用の土地確保、パームヤシの大規模プランテーションのためにジャングルを焼き払うといったことも原因となっており、そこから大量の煙や排気ガスが発生し、モンスーンの風にのって毎年4月から10月ごろにかけてマレー半島に運ばれてきます。

ヘイズが発生するとどうなるの?

窓の外が薄黄色から白っぽく霞んだようになったり、昼間なのに薄暗い感じがしたり、焦げ臭い匂いがしたりします。年によって違いますが、2年前には大気汚染が一時世界最悪レベルになり、目が乾燥したり、のどが痛くなったり、咳き込んだりしていました。コロナ前では珍しくマスクをする人がたくさんいました。皮膚のかゆみ・頭痛・めまい・気管支炎等の深刻な症状も報告されています。

「大気汚染指数」とは?

マレーシア環境局では、各地域における大気汚染指数(API)を5段階に分類し発表しています。また、保健省は、指数が101(不健康)を超える場合には、屋外での活動を見合わせるよう推奨しています。
【API指数】
  50 以下・・・良好(Good):通常の活動が可能
  51-100・・・通常(Moderate):大気汚染に敏感な人は、長時間屋外での活動の
                  減少検討
 101-200・・・不健康(Unhealthy):長時間屋外での活動の減少検討
 201-300・・・非常に不健康(Very Unhealthy):高齢者・妊婦・子供の屋外での
         活動制限
 301 以上・・・危険(Hazardous) 
  (出所: マレーシア環境局/マレーシア日本大使館ホームページ)

2年前には、9月中旬〜下旬にかけヘイズがひどく、API指数が200以上の日が連続で計測され、体調不良の人も相次ぎ、政府の命令でクアラルンプール全ての学校が数日休校になったこともあります。
ヘイズがどのくらいひどいのか、リアルタイムで大気汚染数値が確認できるアプリがあります。代表的なのは『Air Visual』で、私もダウンロードしています。マレーシア人の携帯には必ずといっていいほど入っていて、そこで指数を常にチェックしています。

ヘイズ発生時の対策は? 

では、どのような対策をすればいいのでしょうか?
マレーシア保健省は、以下のような健康への影響軽減予防策を出しています。
 1.運動は呼吸数の増加につながり、ヘイズ被害のリスクを高める可能性がある。
 2.全国ヘイズ・アクションプランの推奨事項に沿って、大気汚染指数(API)の値
   が100を超える場合、屋外での活発な運動は控える。
 3.屋外では、必要に応じてマスクを使用する。
 4.自宅など建物の窓は閉じて、ヘイズの流入を抑制する。
 5.屋内は小まめに清掃し、禁煙とする等、建物内でのヘイズ被害のリスクを抑える
   よう心掛ける。
 6.車両のエアコンを使用する際には、車内空気サイクルモード(内気循環)を選択
   する。
 7.喉が渇いていない場合でも、十分な水分(1日に少なくともグラス8杯)を摂取
   する。
 8.可能であれば、微粒子を濾過する高性能のエアコンや清浄機を活用し、屋外から
   のヘイズ侵入を防ぐ。
 9.幼児や、呼吸器疾患・心臓病を持つ子供の健康には注意する。
10.体調が悪い場合は、直ちに医療機関で診療を受ける。

環境問題が国際問題にも

東南アジアではヘイズの問題は非常に深刻で、国際問題にまで発展しています。
ヘイズは、環境問題を軽視している企業によって引き起こされていると問題視され、マレーシア森林局は定期的なパトロールをして、国会でも、マレーシア企業の東南アジアに公害をもたらすほどの野焼きは取り締まると発表しました。
日本大使館もヘイズ注意喚起のお知らせを出しているので、それらやアプリを参考にして、今後も十分に注意して過ごしたいものです。

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