シンガポール・マレーシア間の鉄道 2026年末までに完成・運行

シンガポール

シンガポールの運輸相は、5月11日、シンガポールとマレーシア(ジョホールバル)とを結ぶ高速輸送システム(RTS)の鉄道建設工事の約5割が完成したと発表しました。

RTSは2026年末までに完成・運行できる見通しで、コロナによる渡航規制が解除されてから再び深刻化している交通渋滞の解消へとつながりそうです。

今回の記事では、シンガポール・マレーシア間の国境の通行方法などについて紹介します。

シンガポール・マレーシア間の鉄道 2026年末までに完成・運行

   著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon 
公開日:2023年 8月18日

一時中断後再開

RTSの工事は、マハティール氏が総選挙後の政権交代で首相に就任した際、財政の緊縮策の一環として両国合意の上で一時中断していましたが、2020年7月に再開しています。

RTSはシンガポール北部にあるMRTのウッドランド・ノース駅と、ジョホール州にあるブキット・チャガール駅との間の約4キロを結びます。

現在、シンガポール側では45パーセント以上、マレーシア側では35パーセントの準備が完了しています。

両国間にRTSが運行する高架橋を建設し、2024年初めには接続する予定となっています。  

越境通勤・通学

輸送や通勤、通学などで2国間の国境を往来する人は、コロナ流行前には1日当たり約30~40万人に上っていました。

国境にはわずか2本の橋しか交通手段がないので、通勤ラッシュの時間(午前7時から10時ころまで)はものすごい混みようで、わずか1~2キロ程度の橋を越えるのに確実に1時間以上かかり、このラッシュの中を通勤や通学をする姿は、本当に気の毒としか言いようがありません。

高速鉄道(HSR)プロジェクト

先日、マレーシアのアンワル首相は、シンガポールとクアラルンプールとを結ぶ高速鉄道プロジェクトの復活には前向きで、民間主導の取り組みを示唆し、あらゆる企業から色々な提案を受け入れる用意があると述べています。

シンガポールとマレーシア両国は、2021年1月、シンガポールとクアラルンプール間の350キロの高速鉄道を建設する推定170億ドルの計画を、マレーシアの財政の緊縮のために中止しており、マレーシアはプロジェクト中止の賠償として、シンガポールに1億280万シンガポールドル(約106億円)を支払っています。

初期プロジェクトの段階では、日本をはじめ中国、韓国、欧州の企業が、鉄道の建設、列車の運営に関心を示しており、マレーシアのコングロマリットである「ベルジャヤグループ(以前この記事で紹介)」も鉄道会社を設立して関心を示していました。

シンガポール・ジョホールバル経済圏

シンガポールとマレーシア、特にジョホールバルエリアは、お互いに補完性が大きな利益をもたらす同一経済圏にあると考えられます。

両エリアを結ぶRTSが完成すれば、ヒト・モノの移動がより簡単になり、活発化するでしょう。それにより、シンガポール・ジョホールバル経済圏はより強力になっていくことは間違いありません。特にマレーシアが促進産業として指定している「教育」や「医療」「物流」「観光」などの9つの分野にとっては最高の推進力になることでしょう。

国家を超えた取り組み

シンガポールとマレーシア(特に南部のジョホールバルエリア)との関係性は、世界中で分断が進む国内や国家間の関係性のあり方を、大きく変えていく可能性を秘めていると感じます。

両国が有している他民族、他宗教、他志向を認める多様性は、人としての在り方を指し示しており、世界にそのすばらしさを高らかに示していくと期待しています。

関連記事一覧