マレーシア、EVバスの“静かな革命”

マレーシアの首都クアラルンプールで、公共交通の新たな変化が動き出しています。
国営交通会社のプラサラナが運営する「Rapid KL」は、2026年までに本格的な電動バス(EVバス)導入を開始すると発表しました。
EV車の比率が他国と比べるとまだまだ低いマレーシアでも確実に変化が訪れています。
本記事で詳しく見ていきましょう。
(引用元:Rapid Bus welcomes final 310 diesel units ahead of EV shift | Malay Mail
https://www.malaymail.com/news/malaysia/2025/07/14/rapid-bus-welcomes-final-310-diesel-units-ahead-of-ev-shift/183881)

マレーシア、EVバスの“静かな革命”
著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2025年12月16日
クアラルンプールから始まる交通再編の第一歩

計画によると、初期段階では15〜20台の電動車両を導入し、順次300台規模まで拡大する見込みです。
この数字は一見小さく見えますが、現行の約1,400台のバスのうち、2割がEV化される計算となります。エネルギー転換の第一歩としては、着実で現実的なスタートでしょう。
政府が描く「グリーントランスポート」構想
この動きの背景には、マレーシア政府の「National Energy Transition Roadmap(NETR)」があります。
2030年までに公共交通の30%を低排出車両にするという目標が掲げられ、EVバスはその象徴的存在とされています。交通分野の排出量は全国の約25%を占めるため、バスの電動化は国家戦略の要でもあるのです。
さらにローク運輸大臣は、「車両調達だけでなく、充電ステーション整備・運転手教育・国内組立を含む一貫した仕組みづくり」を強調しており、単なる輸入ではなく技術移転を伴う産業育成策でもあると述べています。
すでに始まっている“実証の現場”
2024年には、セランゴール州シャーアラムでスカニア社製EVバスの試験運行が行われ、夏にはペナン州の地方ルートでの導入テストが開始されました。
「Rapid KL」は既存のディーゼルバス310台を更新し、2026年から完全EVに切り替える方針を表明しています。一部の充電拠点は、1回の充電で250km以上走行可能な新型車両を想定して設計されていて、クアラルンプールなどの都市部では、CO₂削減だけでなく、排気ガス・騒音の低減という生活面でのメリットも期待されています。
「暮らしとの距離感」
私は15年以上このクアラルンプールで暮らし、バスの“リアルな現場”を日々見ています。
エアコンが効かない車両、時刻表のない運行、満員時の混雑――。
それでも、乗客の多くが笑顔で挨拶を交わす姿には、この国らしい温かさがあります。
そこに「EVバス」という新しい風が吹き込むと、街の空気が少し変わる気がしています。
特に静音性の高い車両が増えると、バス停での会話も自然と聞こえやすくなり、移動の時間が少し心地よくなるのではと期待しています。
技術革新が日常の小さな幸福にどうつながるかも、筆者は楽しみにしています。
変化は“静かに”やってくる
私は日本語も教えているのですが、EVバスは環境技術の話題であると同時に、教育にも活かせるテーマでもあります。
日本語学習者にとって、身近な街の話題を日本語で語ることは大きなモチベーションになります。
シンガポールでBYDの自動運転バスが走り、マレーシアで電動バスが静かに増える――
そんなホットな話題を共有できるのは、教える側としてもワクワクする瞬間なのです。
マレーシアのEVバス計画はまだ始まったばかりですが、街のどこかでエンジン音のない静かな車両が走り出す日、それは暮らしの質が変わる合図にもなるでしょう。
クアラルンプールの喧騒の町を静かに走り抜ける緑の電動バスが、未来の息吹のように感じられる日がもうそこまで来ています。


















